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神様のおねがい  作者: もやしいため
第六章:魔石収集
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職務質問2

尋問二人目突入です。

理熾には現実以上に【神託】という別の情報源があります。

神様の言葉なので一応正しいはずです。

一人目を追い詰めたが、それほど目新しい情報は手に入らなかった。

ただし確認できた情報はいくつかある。

やはり彼らは諜報員(スパイ)と言うよりは工作員なのだろう。

リザードの卵を持ってきたらしいし、何より持ち帰りたがった。

少し気になったのは、この程度の輩が『工作員として成り立つのか?』と言うことだ。

拷問どころか尋問ですらない理熾の問いかけにアレだけ反応するのだから、下っ端な気がする。

逆に「偽情報を持たせてアルスに派遣されたのかもしれない」と理熾は思ったりする。


ともかく。

これらの情報に二人目以降を追い詰める予定なのだが、せっかくなので報酬にあった『国際情報』を展開する。

一体何処までの情報が手に入るかは微妙だったが、リザードの報酬なのだからスパイに関することだろうとあたりをつけて。


---◆---◆---◆---


現在、ガーランドは近隣諸国との国交は円満かつ円滑である。

これは辺境の街であるアルスを含むガーランドの位置関係にある。

アルスより南は未開の地であり、人の生存区域ではない。

未開の地故、地図上には何も記せず、これより先に国があるのか、人が居るのかすら分からない。

ただ分かるのは目の前の森や大地には危険とされる野獣や魔物が多数存在することである。

またそれらの大地に根付く魔力も高いため、獣は魔獣に、魔物はより強い。


過去、ギルバートが赴任するまではアルス以南への派兵が盛んに行われていた。

その時期は前領主が支配領域の拡大を声高らかに謳い、国からの多額の援助を引き出していた頃合である。

結果的に言えばその目論見はご破算。

現在のアルスを見れば分かる通り、領地拡大は出来なかった。

まさに線引きされたかのように、アルス以南は魔境と言えたのだ。


これに懲りたガーランド国は即座に前領主を更迭。

現在の領主ギルバートに事後処理を押し付けた。

周辺国にモロバレだった汚点、『派兵の大失敗』を逆手に取って「強力無比な魔物蔓延る大地への防衛国」として打ち出した。

こうしてガーランドは周辺諸国に対しての盾として存在し、アルスはその最前線として宣伝したのだ。


とはいえ、アルス以南の強力な魔物や魔獣は街を襲うことは滅多に無い。

まず魔物達は生存域の拡大を目論む事もしないからだ。

つまりアルス周辺で発生する魔物・魔獣のみの被害しかない、というわけだ。

それでも発生する被害は、他国よりも遥かに深刻であり、それらの被害を留めているのが騎士団とギルドだ。

街周辺の危険を前もって摘み取っており、それが今の『街が襲われない』に繋がっている。


だが目に見える危険が無ければガーランドの保有する『防衛力』がそのまま戦力であると他国は錯覚してしまう。

しかも派兵時に荒廃した(大きな原因は前領主の散財だが)アルスが、今では収益を上げる領地となっている。

こうなるとガーランドという国と言うよりはアルスという街の勢力が大きくなったと考えられた。


そうした背景により、『強力な魔物を押し返す小国(街)』として逆に目立つこととなった。

その防衛力が、周囲の国へ攻撃力(・・・)として牙を剥かないか、という懸念だ。

ほとんどの周辺国は少しの懸念と共に、そういった戦争へ向ける戦力を割けないという結論に至っていた。

しかし大国として有名な内陸のシミル国は、辺境の国(ガーランド)が持つ戦力を脅威と判断していた。

「もし周辺諸国を併呑して我らと戦えるだけに育ったら…」と。

ガーランドに対抗すべく戦力拡大を進め、そのことがシミル国に隣接する国々の緊張を高めている。


---◆---◆---◆---


 なるほど。

 あの平原ってやっぱり特別なんだなぁ。

 多分転送用の場所だから、安全に作られてる。

 その向こう側が危険なのは、単にこんな場所に街が出来たからって感じかなぁ。

 ともかく。

 んー…感じ的には四人はシミル国かな?


と理熾は勝手に解釈する。

今のところ必要なのは、ガーランドにちょっかい出してきそうな国名さえ分かればいいのだ。

その他は雑学程度にしかならない。

ちなみに一人目はフィリカの横でおねむである。

まさかフィリカの《強制睡眠(スリープ)》が壁越しでも10mの効果があるとは思わなかった。

理熾がお手上げになって「次の人にしようか」と言った瞬間に目の前の男がいきなりゴトリと突っ伏した。

毒物でも仕込んでいたのかとその瞬間はかなり焦ったが、フィリカの仕業だったらしい。

抵抗されないように「壁越しに一撃で落とした」とのこと。


寝こけた相手を洞窟から引きずり出しながら次の人を連れ込む。

ちなみに順番待ちしていた彼らの目の前を引きずって連れ出したからか、全員「ビク!」と反応していたりした。

別に危害を加えていないのでフィリカも理熾も平気な顔していたが、尋問を受ける側はたまったものではないだろう。

そもそも子供(理熾)が大人を軽々引きずる姿が異様だったのは言うまでもない。


「さて、それではお伺いします」


こうして二人目とのお話が始まる。

理熾は一人目と変わらずにこやかである。

推理モノが好きな訳ではないが、あからさまな謎があり、目の前にヒントがあるのだから燃えないはずがない。

何より先程の戦闘からそれほど時間も経っていない。

頭を冷やすにはまだまだ時間が掛かるのだ。


「一人目の方は色々喋ってくれました。

 大変興味深いですね。

 あぁ、あの方は単に寝ているだけですので心配しなくて大丈夫ですよ?」

「……話すはずがないだろう」


「ということはやましいことは認めるんですね?」

「ッ!!」


「分かりやすくて助かります」


と笑顔で対応する。

彼らがどんな言葉を使ったところで、現在は実効性がない。

例え「殺すぞ」という脅しが出ても単に「どうやって?」という疑問しか浮かばないのだ。


「あぁ、でも話してくれたのは確かですよ。

 だからリザードの卵を持ってきたことも知ってます。

 まさか魔物…しかも竜種を養殖をするなんてことを考えるなんてね?」

「馬鹿なッ…」


『竜種の養殖』に関してはブラフである。

全くそんな話は出なかったし、一人目も反応が無かった。

けれどそれが一番確率が高そうだったのだ。

自然発生するリザード。

そんな魔物が産む卵だからこそ、希少価値が高いのだ。

そんなものをそう簡単に手に入れられるかといわれれば微妙だ。


「うん、僕も同じ意見だよ。

 ほぼ同じタイミングで孵る卵を持ってる時点でこの発想に行き着く。

 リザード程度なら多分土地と監視さえあれば何とかなるんじゃないかな。

 そもそもリザード自体が強いから餌さえあれば死なないだろうし、勝手に増える。

 バジリスクへの進化にさえ気をつければ良いとか言ってたし、その通りなんだろうね」

「…まさかあいつが話すとは思わなかったが、俺は話さんぞ。

 尋問でも拷問でも何でもしやがれ」


その気合はいいが、意味がない。

そもそも尋問も拷問も理熾はするつもりがない。

単なる質問、返答だけで答えを見つけるつもりだからだ。

それに『一人目が話した』と言った時点でリザードの養殖は確定だ。

一人ずつ質問するのはかなり効率の良い情報収集だなぁと理熾は感心する。


「ところで貴方はいくつなのかな?」

「は?」


「いやぁ…ほら。

 見た目で年齢って余り分からないでしょ?」

「……27だ」


「ふむ…それは本当のことらしいね?」

「ッ!

 診断持ちか!?」


「いや、使ってないけど。

 なるほど、27歳なのは本当なんだね。

 なら僕よりも倍くらい人生の先輩なんだね」

「………」


二人目は唖然とする。

このたった十数秒の会話だけで『年齢が本当だ』という事実を確認された。

しかも【診断】等のスキルすら使わずに。

目の前に笑顔で座る見た目通りらしい幼い子供が、とても恐ろしい。


「さて、先輩。

 もう少し突っ込んだ話をしましょうか。

 アルスって、僻地らしいんだよ。

 ここまで来る事自体がとても難しい。

 どれだけ隠密行動していても、転移が無ければまず足跡が残る」


と理熾はそらんじる。

転移の件は単に自分が使えるからそう思うのだ。

アレは出発と到着の場所さえ確保していればどうにでもなる。


「そして転移を使えるような高位の術者はそれほど居ない。

 そもそも空間魔法自体が希少種だからね。

 そういう希少価値の高い術者を囲えるのはやっぱり国なんだと思うんだよ。

 しかも竜種を養殖できる土地や餌、監視者に討伐者まで揃えるなんてことが出来るところ」


理熾は独り言のように推測を話す。

そっぽを向いている男は背中に伝う冷や汗が止まらない。

表情に出ていないか気が気ではない。

が、それらの努力は全くの無駄だった。

理熾の【直感】が男の緊張をダイレクトに読み解いていた。


「ずばりシミル国だね。

 広い国土、潤沢な資金、加えて人材も揃えられる下地がある。

 特に今はガーランド国に対してよくない感情を持ってるらしいしね?」

「ふん、話にならんな。

 俺たちは盗賊で、そんな国の事情なんぞ知らん」


「え、『何も話さない』って盗賊って立場の話なの?

 せめて自分の中での整合性くらいは保とうよ。

 あ、もしかして引き渡されたら捕虜としてじゃなくてただの罪人として処分されたい?」

「………」


理熾にこの世界の捕虜や罪人の取り扱いなど分からない。

だからこその質問なのだが、それによってもたらされた男の緊張はかつてないものだった。

それを感じ取って話を変える。

別に目の前の男の処遇などどうでも良いのだから。


「あ、それはともかくとしてさ。

 リザードに突撃して行った人。

 あの人って何しに行ったの?」

「気が動転していたんじゃないか」


「確かにねぇ…。

 竜種(リザード)より怖いお姉さんが来たらそうなるよね」


そういって笑う理熾の耳元に「リオ君?」と冷たい声が聞こえる。

「超怖い!」と密かにガクブルしながら話を進める。

表情を変えないことに必死になりながら。


「そこで僕は思ったんだよ。

 竜種の養殖に成功している、という事実がある。

 じゃぁ次はどうするかな?

 僕なら『最強竜の育成』を考える。

 スキルにしても、能力にしても。

 だから、あのリザードは『亜種』だったんじゃないかな?

 ねぇ、おじさん。

 あのリザードには、何が混ざってる(・・・・・・・)のかな?」


理熾の言葉は完全に『ゲームの話』である。

そう簡単に生物の交配など出来ない。

科学技術が進んでいないこの世界ならなおさらだ。

けれども魔法という別の技術がある。

なら日本と同じような考え方をする人も居るんじゃないか、という訳だ。


そもそもリザードを大量に生産するだけでは余り意味が無い。

他国に放り込んで破壊活動だけさせるならともかく、必要な資源まで壊されてはたまらないはずだ。

となると言う事を聞かせるなどの処置が必要になってくる。

それに知恵が無ければ今回のようにあっさりと討伐される可能性もある。

だから強化と首輪は絶対に必要なのだ。


「……答えれば、何がある?」


閉ざされていた口から、言葉が漏れる。

彼等の状況は悪い。

捕まった時点で『居なかったこと』にされる可能性が高いのだ。

彼等が持つ情報は、それだけの価値がある。

そしてそれだけの価値がある情報を『今』どうやって使うかは、彼等自身だ。


「少なくとも領主とツテがあるから、口添えくらいは出来るよ。

 あとは個人で頑張ってもらうしかないなぁ」

「分かる範囲で答えよう。

 あのリザードは、リザード同士を食い合わせた(・・・・・・)ものの卵だ」


だからああもあっさりと死んだ同属を食いだしたのだろう。

それまで仲良く連れ添ってたのは単に他に餌があるからというわけだろうか。

「にしては片割れは呆気なかったな?」フィリカがそう耳元で茶々を入れる。

確かにその通りだ。

だがその辺は何となく分かる。


「なるほどね。

 蠱毒って考え方だね…。

 でも同一種だからかな…多分血が濃すぎるんだろうね」

「血?」


「あれ?

 家族で結婚しちゃいけないってルールは無い?」

「…普通はしないな」


「身内で子供が出来ると血が濃くなりすぎて子供が出来ないんだってさ。

 出来たとしても身体が弱かったり、未熟児で生まれたり色々問題を持つことが多いそうです」


実際にそういう人達に会ったことは無い。

特別な意味は無かったが、何故だろうという好奇心から調べた事があったのだ。

親族でも従兄弟程度に離れていれば結婚できるとか、ルールがあったはずだと思い出す。


「リザードって単一だからもしかすると優劣がはっきり出るのかもね?

 まぁ、元々強い種族だから普通は気にならないし、成体になるまでに死んじゃうんじゃないかな」

「何故そんなことを知っている?」


「ふふふ…それは秘密です。

 そうだ、貴方達はシミル国の工作員って事でいいかな?」

「そうだ。

 交渉などは恐らく受け付けられない」


「だよねぇ。

 そんなこと受けちゃったら『貴方達が持つ情報に価値がある』って言うようなもんだし」

「…見た目通りの年だよな?」


「そうだよ。

 まだまだ子供真っ盛りの13歳です。

 何だか皆そういうことを言うんだよねぇ…失礼な話です」


どう考えても13歳でこの聡明さは無いと男は思う。

精霊の囁き(ウィスパード)》で音声を共有しているフィリカも同じ意見である。

お互いの利益を手に入れるための交渉事などはまだ難しいとフィリカは思う。

アレはお互いが受け入れられる妥協点を探り合うものだからだ。

理熾は相手の利益までも見透かすくせに、自分の利益には一切の妥協をしない。

それだけならいいのだが、最初から真っ正直にその条件を叩きつける。

そして「これ以外認めない」と突きつけ、ダメならその場でご破算である。

理熾がしているのは交渉でもなんでもなく、単にお願い(・・・)なのだ。

だから相手が出来ないと言えば引き下がるし、お願いを聞いてくれるなら出来る限りの手札を切る。

損益の境界線を見極めるバランス感覚は素晴らしいが、最初から全ての手札を晒す辺りに未熟さが残るのだ。


しかしその他の分野では他の追随を許さない。

発想には毎度驚かされるし、それを実行するだけの理論と実力を備えている。

また、今回のように一方的に情報を引き出すことには長けている。

色々と小細工が出来るから、器用な子だと回りに認識されがちだが、良くも悪くも実は猪突猛進なのだ。


「ともかく。

 その他にも色々教えてくれるんですよね?」

「あぁ、俺が知る限りは」


「だったらまずリーダーを教えてくれますか?」


こうして改めて理熾の質問が開始された。

お読み下さりありがとうございます。

会話が入ると一気に文字数が増えますね。

かなり言葉を選んでることを思うとやっぱり会話には無駄な要素が多く含まれているということですかね?

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