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神様のおねがい  作者: もやしいため
第六章:魔石収集
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魔石の在処

いろいろあった訓練ですがとりあえずこれにて終了です。

以降は材料収拾編です、、、多分。


騎士団での鮮烈なデビュー戦を経て一週間が経つ。

その間の理熾の行動パターンはとてもシンプルだった。

あけみやで朝食を取って出発してフィリカの店で庭を借りる。

午前中はそこで見学した武技の投影(トレース)訓練。

それに加えて空間魔法の訓練と、更にフィリカやノルンとの打ち合わせを行う。

その後訓練場へ行き、武技を見学しつつ戦闘訓練である。

終えればあけみやでの夕飯やお風呂を経て、一人反省会の後に就寝。

このルーチンである。


この間、ノルンはいくつかの試作品を作り出したが、全てフィリカのOKが貰えずに理熾に見せるに至らない。

フィリカは理熾との『ぼくのさいきょうぶき』の構想の詰めに余念が無い。

基本的にフィリカは機構の設計さえ出来れば早いみたいで、頭の中で構造をこねくり回しているらしい。

理熾は「材料すら揃えずに大丈夫かな」とも思うが、フィリカのことなので何とかするだろう。


ちなみに先日手に入れたハイオークやアーチャーはガンガン使われているらしい。

毎日のように素材を要求されるのだから間違いない。

理熾はアーチャーの素材で服や靴を作ってもらった。

普段着なのだが、異様に防御力が高い。

そのまま戦場に立っても大丈夫なくらいである。

だがどうしても最初に貰った戦闘衣の能力が良すぎるので結局は『普段着』として使っている。

相変わらずフィリカ印の性能は異常だった。


それとは別に作ってくれた弓は物凄いものが出来てしまった。

フィリカ曰く、ハイオークの威力が出るだそうだ。

どう考えてもただの危険物である。

理由はハイオークの巨体を支える足の筋繊維を1本単位で取り出し、それを防腐やら強化やら色々加工してから糸に紡いだ弦である。

かなり強靭で甲冑込みの人間5人くらいなら平気で持ち上げられるらしい。


また、しなりが必要な弓の本体はハイオークの骨盤を削り出して作ったらしい。

フィリカが「研磨材がすぐにゴミ屑になる」と嘆いていたから間違いない。

それほどの硬度があるくせに、稼動領域が広くて強くしなる。

こちらも散々加工したために無茶な性能に仕上がったらしい。

その辺りを嬉しそうにフィリカが説明してくれた。


「とにかく削り出すのが大変だった。

 糸とかは面倒だったんだが、面倒なだけで作業としては楽だったな。

 まぁ、そんな感じで作った弓だが面白いほど色々出来てな。

 やっぱりあのハイオークは規格外のヤツだったみたいだ」

「おぉ…フィリカさんが言うんだから凄そうだね」


「素材もそうだが金銭や素材の制限が無かったからな。

 糸自体は下手な鋼線より余程強いシロモノだし、弓自体も相当だ。

 近接時にも平気で鈍器の代わりになるし、弦の方で殴れば下手をすれば切り落とすレベルだ」


どうやら知らぬ間に上限が無かったらしい。

確かに制限を掛けた覚えは無いが、まさか上限撤廃という話になっているとは思わなかった。

「一体いくら吹っ掛けられるのだろう」と理熾の頬を冷や汗が伝う。


「あぁ、弓の特性自体はそれほど無い。

 毒、麻痺、その他の状態異常の付与などが通常だが、こいつには無い。

 そもそもの能力値が高すぎるから毒や麻痺などが必要ないというのが正解か。

 これ以上となると…一つ目巨人(サイクロプス)とか、ミノタウルスとかか?

 Bランク以上の魔物の素材でないと意味が無い」

「それってまだ倒せないよね?」


「Bランク以上は災害指定されるからな。

 ちなみにAやSになると国家レベルの災害認定される。

 まぁ、単独でBランクの魔物はいくら強くても数を集めて袋叩きにするからそれほど脅威ではないがな」


つまり数を集めないと倒せないのがBランク以上らしい。

数が必要ということは犠牲も出るということだ。

やはり災害認定されるレベルというのはなかなかなランクなのだろう。


「でだ、一番の特性は魔力付与による属性付与だ。

 無属性を始め、基本的な四大元素や光・闇とかリオ君の空間魔法なんてのも乗せられる。

 空間魔法は矢に乗せても使い道が良く分からんがな。

 後、無属性…というか、単に魔力を込めた場合は単純に威力が上がる。

 その他は属性矢の変わりだから、属性矢を買う必要が無くコストパフォーマンスがかなり良い。

 属性の扱いさえ出来れば瞬時に切り替えられるのも相当な優位性(アドバンテージ)だろう」


そして「そういうのは得意だろう?」と付け足してくる。

確かに『何でも出来る』をもっとうに、上級器用貧乏を目指している理熾としてはありがたい性能である。

使いこなせるかどうかはともかくとして。


「それと基本仕様(デフォルト)で剛力が付いている。

 弦としなりの強さから、最大威力で引ける者が限られていると思って良い。

 普通の弓と変わらないと思うかもしれないが、厳然として腕力で『弓のランク』が変わる。

 単に放つだけならそれなりに強い弓。

 弓の能力を引き出せるものなら更に強い弓。

 ちゃんと使いこなせるものなら、もっと上という風に力の強さで威力が変わる。

 初心者から玄人まで段階的に扱い続けられるし、逆に手加減もしやすい機構ではある」


つまり車の変速機(ギア)があるということだろう。

1速でいくらエンジンを回しても速度は出ない。

それを任意で変更するのが通常の可変式なのだろう。

だがフィリカが作ったのは力の強弱で勝手に変更してくれる自動式(オートマ)タイプなのだろう。

弓初心者の理熾(誰も信じないが)には大変ありがたい仕様である。


「最後の一つは過速(ダッシュ)という特性だ。

 加速(アクセル)の反対で、初速に補正を掛ける。

 だから適当に射ってもそれなりの速度で飛ぶ。

 距離があれば加速、近距離なら過速という感じで覚えておくといい」


「ま、リオ君にはこの理屈は関係ないけどな」とも付け加える。

という長い説明を終えて渡された弓は理熾には大きい。

1mくらいの弓なのだが、えらくゴテゴテとしている。

全体重を支えるために頑強で、それでいてバランスを取るための柔軟な部位。

それを削り出して作った弓は象牙のような白さで神秘的である。

しかも矢を番える部分に石が入っている。


「この石って何だろう?」

「あぁ、それが魔核というヤツだ。

 ハイオークが持ってたから、その素材と組み合わせている。

 だから特性を引き継いだり矢に属性を乗せたり出来る。

 通常の弓だけであれば先程の特性は全く付かないから、魔核の有用性が分かってもらえると思う。

 …もしかして魔核を別のものに使いたかったとかあるのか?

 一応取り外せるが…そうなると弓側で色々と不具合が出て来るんだが…」


と、確認もせずに使ってしまったことに対する後ろめたさを感じたらしく、フィリカが言いよどむ。

だが聞いてる分には『今更遅いよ』という風に聞こえるから、作ったもの勝ちなのかもしれない。

それに理熾はフィリカを信頼している。

その手腕にも、判断にも。


「あぁ、いや。

 それはいいよ。

 フィリカさんの判断で使ったんなら。

 魔核って珍しいらしいけど、『これじゃない』んでしょ?

 成長装備を作るには足りない(・・・・)から、ここにはめ込んであるんだよね?」

「あぁ、そうだな。

 せめて竜種くらいの核でないと装備も核も勿体無いからな」


という弓にまつわるやり取りがあった。

ちなみにお値段は緊急依頼前に作ってもらった靴と、今渡された弓。

そして普段着として作ってくれたアーチャー製の服や靴を合わせて、全部で10万カラド。

高いような気もするが、戦闘衣の安さを考えると全然高くない気もする。

これで緊急依頼報酬分の実に三分の二が吹き飛んだ訳だが、全く惜しくないと思うのだから凄い。


そういえば集計された買取額は約7万カラドと高額だった。

素材の数が多すぎて市場価格を押し下げた癖にこの金額である。

やはりオークの肉は良い稼ぎになると改めて実感する。

ウッドウルフも肉は不味いが素材はそれなりらしく、牙・爪・皮・尾などが売れた。

今回の依頼での総収入は15万(討伐報酬)+7万(買取額)+5万×2(報奨金)で32万カラドで、結果を見ると一日の稼ぎではなかった。

流石は緊急依頼である。


また、騎士団での扱いは完全に客分になってしまった。

見学も訓練参加も自由になっており、知らないことを聞いて回る日々である。

最初が最初なのでかなり引き気味だった訓練兵達も理熾に慣れてくれた。

今では仲良く殴り合う仲である。

ちなみに今のところ全戦全勝を飾っている。

実戦経験者と訓練兵との差が歴然と出た訳だが、そもそも理熾の成長が目覚しいのだ。


初戦、2戦目は情報不足を利用して瞬殺したが、次の日は…特に初戦はとても苦戦した。

やはりきっちりと対策されていることに加え、理熾の動きは素人なのでどうしても遅れを取る場面が出てきてしまう。

けれどもそれも戦闘中に投影(トレース)によって矯正していくのだ。

それは自分への動き矯正もそうだが、基本的に相手の動きを理解して予測を立てるのに役立った。

攻撃に対しての受け方を基本として、返し技(カウンター)や連携動作など様々な部分を吸収していく。

当然のことながら見ただけで再現できないのだが、そこは戦闘中。

いくらでも実験の場が存在するため、メキメキ技術が向上していく。

これにより格段に動きがよくなっていく姿を周りから見ていると『まだ上があるのか』という風に受け取られる。

要は『手加減されていた』と勘違いされる訳である。


実戦や訓練によって成長するといっても限度がある。

その上限を大幅にぶっちぎって目に見えて動きが良くなるので誰もがそういう風に勘違いをするのだ。

それは何でも扱えるユニークスキル、武神の恩恵である。

得物による行動の見極めが余りにも役立つ。

理熾自身が扱える武器の動きしか相手はしない。

つまり一目にすれば『動きの質』が分かってしまう。

それに加えて体術が身体の動きを最適化するので投影が成り立つ。

戦えば戦うほど技術も能力も跳ね上がっていくという寸法だ。


加えて空間魔法。

相手の動きを座標認識できるので、モーションキャプチャーのような捉え方が出来る。

このため投影訓練時に役立ち、それを体術でブーストを掛けて武神で完成させている。

センガが推した空間魔法は、思惑とは違って攻撃力は無かったが、余りにも理熾に有利なものだった。

本当に『便利な魔法』である。


という風に苦戦はするものの、すぐに修正・対応していった。

『命のやり取りをしない』という前提があるため、余裕を持てることも理熾の成長に拍車を掛けた。

とはいえ、対応できるのは所詮訓練兵でしかなく、正騎士達には勝てないと理熾は思っていた。

ちなみに初日に「二人で来い」と言ったが、エリルに「流石に2対1で負けたら訓練兵でも心が折れる」と言われてまだ実現していない。

集団戦闘…しかも射程(リーチ)も武器も違うような相手に、武神でどれだけ戦えるかは凄く知りたかったので非常に残念だった。


この日もフィリカの庭先で投影と魔法の訓練をしながら、理熾が「そろそろ訓練所行くのやめよっかなぁ」とか思っていた時。

フィリカが理熾の前に来てこう言った。


「リオ君、魔石を取りに行くぞ」


やはり材料はどうにもならなかったらしい。

お読み下さりありがとうございます。

魔石の収集に向かう予定です。

このため訓練場への見学は控える…というか、多分もう行きません。

何かあればその限りではないんですけどね。

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