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神様のおねがい  作者: もやしいため
第五章:休息の時間
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アルス訓練場

騎士団の訓練場に見学に向かいます。

訓練場とは本当に訓練のための場なので、訓練兵が大半。

加えて正規兵が仕事が休みの日に暇潰しレベルで来ます。

昼食を終えて領主館を離れ、騎士達の訓練場へと案内された。

当日そのまま連れて行ってくれるのはありがたかった。

わざわざ何度も往復するのも億劫だし、何より馬車での送迎はちょっと精神的にくる。

慣れれば良いのかもしれないが。


ノイズと別れ、訓練場をアイゼンと連れ歩く。

ここから先は理熾が行動パターン収集に勤しむ時間である。

そう、訓練を見たいというのは単純に参考にするではなく、技術を盗む為(・・・・・・)である。

理熾には体術も武神もあるのだから、身体の動かし方を見れば大概吸収できる…はず。


「アイゼンさん、今はどんな人が居るかな?」

「団長が居ますよ。

 せっかくですし挨拶して頂けますか?」


そりゃそうだろう。

長が居るならまずはそこへ挨拶に行くべきである。

お邪魔させてもらっているのだから。


「うん、是非。

 もしかして訓練中?」

「この時間であればそうだと思います」


そういって先導する足に躊躇いは無い。

居るときは必ずそこで訓練をしているのだろうか。

しばらく歩き、止まる。

場所は「中央訓練場」と書かれていた。


「失礼します!

 お客様をお連れしました!!」


そうアイゼンが大声を張って入る、だだっ広い訓練場。

中央と名がついているからなのか、ものすごく広い。

往復するだけで体力を使い切りそうな距離だ。

端までが1~2kmくらいありそうである。


「誰だそいつは」


そう言ってこちらを引き止めたのは大柄の大槌(ハンマー)使い。

訓練場の出入口付近に立っていたらしく、アイゼンの声がモロに耳に突き刺さったらしい。

顔をしかめている。


 確かに大声だったもんね。

 そりゃ頭にもくるよ。

 でもこんなことで怒るとかカルシウム足りないんじゃないかなぁ。


と紹介待ちの理熾は適当に思う。

世の中そんな大声如きで怒っていては身が持たない。

それに「なんかこの人噛ませ犬っぽい」とか酷い事も。


「ギルバート様の命で見学を許可されたリオ様です」

「リオ…?

 あの緊急依頼でオーク共の半数を一人で倒した討伐者が、これ(・・)か?」


と無礼にも指差す。

確かに子供にしか見えないし、れっきとした子供なので理熾も「またか」程度にしか思わない。

が、今回はかなり問題だ。

何せ『領主の命令』と告げている。

来客に対してそんな無礼は通らないはずだが、この場では…いや、こいつ(ハンマー)は違うらしい。


「そう、『これ』です。

 何か文句あるならギルバートさん通してね」


理熾は自分がないがしろにされてる分には我慢強い方である。

事実なことも多いし、それを否定しても仕方ない。

個人の感想は止められないのだ。

普通は言わないだろうけれど。

が、今回はギルバート(恩人)が軽んじられているのだ。

改めてギルバートの名を出して釘を刺すついでに挑発もしておいた。

馬鹿なら突っかかってくるだろうからそれで見極めるつもりだった。

突っ掛かってくるならそれこそ問題になるだろうし。

が、


「すみません、リオ様」


とアイゼンが先じて謝罪を入れる。

理熾が仕掛けた言葉の罠にはまらない様に。

激昂すればその時点で恐らく処罰対象だろう。


だが助けて貰ったはずのハンマー使いはアイゼンの言葉に鼻を鳴らす。

恐らく「そんなガキにぺこぺこする必要など無い」とかなんとか思ってるはずだ。

それを見て「何処までも馬鹿なんだなぁ」と理熾は感想を持つ。

理熾が住んでいた平和な日本ですら『上に逆らう』というのは難しい。

流石に命の危険は無いが、少なくとも逆らうだけの理由は必要だし、罰も覚悟の上でだ。

理熾で言えば教師に楯突いても何にもならないし、単に心象が悪くなるだけ。

内申点を削られた挙句、親を呼ばれてお説教である。

子供でもこんなこと(・・・・・)くらい知っているというのに、この騎士は可哀想だ。

主に頭が。

討伐カウンターですら絡まれたことが無いので尚更である。


「僕は良いですよ。

 それより団長さんって居ますかね?」


と周囲を見渡しながらアイゼンに聞く。

理熾が顔を知らないので見渡したところで分からないのだが、それでも見渡す。

ハンマー野郎に『眼中にありません』というアピールである。

理熾の挑発もなかなか堂に入ってきた感じがある。

近くにフィリカが居るからかもしれない。


「団長はあちらですね。

 向いましょうか」


そう言ってアイゼンもハンマーを無視することに決めたらしい。

何せ庇っても気付かない。

気付かないから感謝もしない。

ならば関わるだけ損である。

それにこれ以上理熾にちょっかい出されたらアイゼンにも飛び火しかねない。

だが


「ちょっと待てよ。

 俺に挨拶もナシか?」


と全く空気の読めないハンマーが呼び止める。

どう考えても役職者から挨拶するに決まっている。

ここに来る間に会った者達ならともかく。

この場で、しかも少し先に見えている団長より先に挨拶する意味が分からない。

アイゼンにも、理熾にも。

なので二人ともスルーを決め込む。

アイコンタクトすら無しで。


「団長、少しよろしいでしょうか」


とアイゼンは団長を呼び止める。

訓練中の団長もすぐに応じる。

この場では来客の方が立場が上なのだ。


「こちら、ギルバート様の命で見学を許可されたリオ様です」


とハンマーに告げた言葉を違えずアイゼンが団長に紹介する。

すると団長は居住まいを但し、返答してくれる。


「初めまして、リオ様。

 騎士団団長、エリル・フィードです。

 お話しは伺っております。

 オークの討伐で大変な功労を上げたそうですね」

「初めまして団長(エリル)さん。

 討伐者の御巫 理熾(ミカナギ リオ)です。

 オーク討伐は単に僕が攻撃役(オフェンス)だっただけですよ」


と挨拶をして握手を交わす。

何というか、さっきのハンマーは何だったのだというくらいに目の前の団長は騎士らしい(礼儀正しい)

こんな子供な理熾にもきちんと対応している。

フィリカ曰く「騎士団長や事務方は領主(ギルバート)の話を聞かない」と言っていたが、本当だろうか。

見る限りはギルバートに忠誠…少なくとも反抗心があるようには思えない。


「お話にあった通り、しばらく見学させてください」


と理熾は続ける。

ギルバートの命令なのだから余程の事が無い限り断らないし、断れない。

当然快諾してくれた。

エリルは25歳くらいの青年で、背が高くて美形だった。

180cmくらいあるだろうか。

部下の騎士に指示をして訓練をさせている最中だったらしい。

フィリカといい、セリナといい、ジンといい。

ギルバートやガゼルもそうだがスフィアは美形率が高くて本当に驚く。

何を食べればこうなるのだ、と思ってしまう。


 そうか、セリナさんと同じものを食べれば良いんだ!


と閃くが、同じものを食べても残念に育つ未来しか浮かばない。

理熾はその他の特技を身に着けようと心に誓う。


「リオ様、どのような見学がされたいのですか?」

「エリルさん。

 アイゼンさんもそうなんだけど。

 様付け止めて欲しいな…それに敬語も。

 こんな子供に使うの変だよ。

 それに僕もすごく居心地が悪いですし」

「ですがお客様ですからね…」


とはアイゼンの言葉。

理熾に請われたからか、それとも確かに子供相手の口調じゃないと思ったのかは定かでないが、団長のエリルは呼び方と言葉遣いを変える。

しかも理熾好みに。


「ではリオ君というのはどうかな?

 確かギルバート様もそのように呼んでいると聞いたが」

「うん、それで。

 アイゼンさんもお願いします」


そういってさっさと名前の呼び方を統一させる。

様付けに慣れたらそれはそれで付け上がりそうなのだ。

「では」と理熾が前置きを入れて注文をつける。


「基礎訓練は方法が知りたい。

 あ、でも一度は見てみた方がいいかな?

 その辺は見聞きしてから考えよう。


 その他に武技の実演とか見てみたい。

 魔法士がもし居るならそっちも見たいかな。

 解説付きだとなおよし!


 そうそう、戦闘訓練とかってしてるかな?

 実戦組手みたいな感じのヤツ。

 もししてたらそれも是非見たい」


と並べ立てる。

一日で終わる量ではないし、終わらせる気も無い。

ゆっくりと身体に覚えさせていかないといけないのだ。


「…何と言うか。

 リオ君は見学に来たというより『訓練に来た』と言う風に聞こえるな」


とエリルが話す。

まさにその通りなので答えを「どうしようかなぁ」と思っていると、先ほどのハンマーが話に加わってくる。

ここまで来て横で聞いていたのだ。

本当に鬱陶しい限りである。


「団長、だったら戦闘訓練をしようぜ。

 俺が相手してやるよ、『小さな英雄』さん」


と茶化す。

戦闘訓練に参加するなど一言も言っていないのだが、やりあおうという訳だ。

理熾が素直にそんな挑発に乗ることはない。

意味が無いし、勝っても負けても見学に際して傷を残す。

だから本来であればスルーだ。


しかしその言葉はいけない。

ギルバートが理熾を称した、認めて使った言葉(・・・・・・・・)を茶化してはいけない。

ギルバート本人にその気は無くても理熾にはそれだけの重みがあった言葉なのだ。

だから許せない。

こんなに簡単に熱くなるとは自分でも思わなかった。

それでも最低限のルールは守る。


「エリルさん。

 戦闘訓練(ぶっ飛ば)しても良い?」


ハンマー(噛ませ犬)を指差して、聞くのに時間は必要なかった。

お読み下さりありがとうございます。

導火線の長い理熾ですが、スフィアの恩人達に連なる事柄は見落とせません。

特に自分よりも劣っていると思える相手ならなおさらです。

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