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神様のおねがい  作者: もやしいため
第四章:【緊急依頼】魔物討伐
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【緊急依頼】魔物討伐3

挟撃されて生き残るのは本当に難しい。

周り敵で、下がれない、逃げれないというのは精神的に追い詰められていきます。

そしてまだ戦えるかもしれないけれど、いつまで戦えるかが分からない。

さらにいつまで戦わないといけないかが分からない。

そんな状態は精神をガリガリと削っていくものです。

フィリカが併走しながら告げた言葉に驚く。

というか気が付けばフィリカが併走している事にびっくりである。


 そういえばフィリカさんがついて来てたんだった!


と今更になって思い出す。

確かに「気遣う必要は無い」とは言われていたが、すっかり頭から抜け落ちていた。

理熾が注目を集める意味でも派手に立ち回ってはいたが、フィリカが本当に何処に居たのかわからない。

気配を消すとか、そういうスキルは無かったはずだが使えるのかもしれない。

何だか色々謎だ。


それはともかく。

フィリカの言葉を確かめなければならない。

何処に居たかなんてことはまた今度聞けばいいと切り替える。


「フィリカさん、本隊がどうなってるか分かるの?」

「まぁな。

 あっちにはオークが接近中だ。

 リオ君が引き付けたあいつら(ウッドウルフ)を連れてったら一瞬だろうな」


ウッドウルフに加えてオークまで来ているとは。

やはりこの二つの集団は統率されて動いているらしい。


「うぅぅ…だから斥候出せって言ったのに!」

「残念ながら出した斥候が失敗したらしくてなぁ」


まさかの裏目だった。

とはいえ泣き言を言っても状況は変わらない。

すぐに行動しなければならない。


「フィリカさん、ウッドウルフとオークはどっちの方が厄介かな?」

「…オークだな。

 あいつらは鈍重だがそれ故に攻めると強い。

 被弾してもそのまま突っ込んでくるからな

 殲滅力が高いか、退避しながらの消耗戦をしないとつらい」


要はどちらかがあれば良かった訳だ。

つまり共に出来ない状況になるということ。


「なるほど…。

 きっちり罠を背負った訳だね」

「残念ながらな」


やはり下がれさえすれば問題無かったのだろう。

何だかもう色々ダメだった。

理熾が指摘した事柄が片っ端から実現してるのだ。

本隊はこのままだと壊滅する。

けれど理熾が駆けつけると今度はウッドウルフまでが加勢の形で参戦して壊滅する。

だからといってこの場で殲滅戦を演じてから駆けつけても時間切れ(タイムオーバー)で壊滅する。

すぐさま思いついた案は全て手詰まりだった。


援護まで1km程…。

つまり本隊が遠目にでも見えるまで1kmしか離れていないのだ。

残り1kmを走りきるまでに決断しなければウッドウルフの加勢という形で勝敗が決まる。

負けるのは構わないが、死ぬのはまずい。

理熾にしても、フィリカにしても、他の討伐者にしても。


「…フィリカさん、オークの数って分かるかな?」

「凄いな、この状況下で私に頼らないとは」


「いや、十分頼ってるんだけどね」

「そうか?

 …そうだな、75体と言った所か」


「ッ!」


告げられた数に息を詰まらせる。

そもそもオーク50体でもつらい数なのだから当然だ。

それよりも遥かに多い数をフィリカが確認しているのだから気が気ではない。


「また数をごまかしてたんだね…。

 騎士はダメでも討伐者はどれだけ死んでも良いってことかな」

「ぁーいや、領主本人はそういうタイプじゃない。

 騎士団長とか、事務方が割りと選民意識を持ってるんだよ」


「…それを使ってるのは領主でしょ」

「振り回されているように見えるから何とも言えんなぁ」


どうやら領主や貴族達と知り合いらしい。

確かにこの腕と器量なら色んな意味で知り合う機会は多いだろう。

だがそんな詮索は後だ。

今は背後のウッドウルフ達が理熾の反撃を警戒をしているから攻撃してこない。

どうやら斧の一撃が効いているらしい。

けれどそれもいつまで続くか分からないのだ。


 僕一人じゃオーク70体とか無理…だね。

 ウッドウルフもせめて10体くらいまで減らさないと危ないよねぇ…。

 後40…無理だね。

 最初は勢いでいけたけど、落ち着いて物量で押されたら負ける。

 逃げ撃ちするにもそもそも相手の方が早いから無理だし。


状況は確かに悪い。

だが解決する方法はある。

フィリカにウッドウルフかオークを押し付ければ何とかしてくれるだろう。

少なくとも足止めくらいの手伝いはしてくれる。

だが、それではダメだ。

まだ出来ることがある中で、見学者を巻き込むなんて事はできない。

既に戦況を教えて貰うという形で巻き込んでいるが、これは…まぁ、一応セーフだと理熾は目を瞑る。

何より理熾が一つ目の試練(この程度)で頼っていてはいけないのだ。

今後もフィリカが居てくれるとは限らないのだから。


そう思って更に頭を捻る。

この状況で出来ること、利用できるもの。

この状況で出来ないこと、使えないもの。

そしてようやく答えを出す。


「フィリカさん、教えて欲しいことがあります」


理熾は戦況を変えるべく、新たな一手を放つ。



ジンは焦っていた。

戦況は悪い。

ウッドウルフの大群を斥候が確認したことから始まり、今はオークの大群が押し寄せる。

オーク達はウッドウルフが居たとされる森とは反対側から攻めてきた。

完全に挟撃を目的として行動している。


しかもオーク達はしっかりと役割別に動いている。

剣や斧等の近接武器を持ったオーク達は、後衛の弓兵の援護と共に突撃してくる。

流石に騎兵(乗れる馬が無い)や、魔法士は居ないが物理的に押し込める能力を持っているので楽観できない。


そもそも数で負けている上に、背後は罠。

苦肉の策で罠を反れつつ新人(理熾)が向かった森へと移動しようとするも恐らく阻まれるだろう。

オーク達は完全に統率されている動きをして、この場で封殺するつもりなのだ。


そのことを理解した時に初めて新人(理熾)の言葉を思い出す。

「斥候を遊ばせるな」という言葉の意味を痛いほどに実感する。

そしてそんな言葉を放ち、一人で死地(ウッドウルフ)に向かった事を止めることすら出来なかった自分を悔やむ。

あれほど機転が利くくせにあっさりと行動するのはフィリカに似ている。

しかし行動の理由がまたジンには理解できないのだ。

だが今はその思いも後回しだ。

「俺はこの場を治める義務がある」と思い、その実現に全力を使う。


「前衛、今すぐ前に出ろ!

 一刻も早くオーク共の足を止めろ!

 倒さなくても良いから、多くの敵を抱えてくれ!

 絶対に後ろに回すな!

 後衛が崩れたら俺たちはなぶり殺しだ!!」


指揮官自ら前線に立ち、指示を伝える。

オークが近付く中、こちらも近付くために同じく…いや、相手よりも早く走る。

下がれなくなったら勝ち目は無い。

出来る限り罠から離れて戦線を築くためだ。



「後衛!

 狙えるやつを片っ端から狙い打て!

 出し惜しみはするな!

 負傷させれば動きが鈍って前衛が止めを刺せる!

 とにかく数と密度で押し切れ!!」


魔法士と弓兵にも声を張り上げる。

近付くオークを一刻も早く、一体でも多く怪我させろと叱咤する。

それが出来ればそれだけ生き残れるのだから当然だ。

そうして前衛同士が激突する。

罠から1km程離れた地点だった。


「ここからどれだけゆっくり下がるかで生死を分かつ!

 下がるごとに命が削られると思って死ぬ気で抑えろ!

 俺達全員の命は、前線が800mの後退分しかない事を自覚しろ!」


前線が下がれば後衛も下がる。

後衛が下がれなくなった時が、援護の無くなる時。

そして自分達の終わり時である。

だからこそ、前線を維持しなければならない。


オークはそこらの討伐者より遥かに背が高い。

2m以上あるのだから当然だ。

そんな威圧感の塊をジン一人で5体も抱えながら叫ぶ。

他の討伐者もそれぞれ3体ほどを足止めしている。

十分な働きだ。


「前衛が一人倒れるごとにお前らの命が削られると思え!!」


とさらに後衛に声を掛ける。

最早混戦になっている中、狙え撃てなど無茶な注文だ。

味方に当らなければそれで良いというレベルなのだから。

だがそれでも攻撃の手を緩めるわけには行かない。

前衛が援護も無く何体ものオークをひきつけられるはずが無いのだから。


「斥候!

 お前らは連携を取れ!

 前衛の足りないところを補強しろ!

 戦場での物資のやり取りなんぞ命がけだが決め手が欠けたら全員死ぬぞ!」


既に囲まれているため、斥候の役目は終わっているが、そんなことは言っていられない。

使えるものは全て使わなければならない。

そして全て使っても勝てるとは限らないのだから。


 っく…これじゃぁジリ貧だ。

 オークを1体倒すまでにこっちが一人減る。

 少しでも減れば一気に戦況が負けに傾く!


オーク側に回復手段が無いことだけが救いだった。

斥候の立ち回りは回復と、援護、そして危機制御の3つだ。

まず回復については前衛に持たせた回復薬を斥候が奪って、使う。

手持ちが無くなった前衛分は斥候が持っている回復薬を使う。

斥候が瞬時に危険度の高い前衛に対して、そのように回復しているのだ。

こうする事によって戦闘を中断することなく回復が出来る。


援護は、危険な一撃を見極め、それを横合いから止めに入るのが仕事だ。

ピンポイントリリースというか、瞬間的な盾であり剣である役目を負う。

こうして前衛が見逃す一撃を防ぐのだ。


危機制御は、オークが集中して危険な前衛からオークの注意を集め、攻撃目標を自分に変えさせ引き剥がす

逃げ撃ちしながらオークの注意を引いて、別の前衛にオークの対応を頼むのだ。

攻撃目標として認識されたままでは前衛も引き取れないので、隠密系のスキルを使いながらの移動でオークから離脱する。

こうすることで回復と、危機回避、さらには危険度のコントロールが行える。

斥候職の気配遮断と、危機察知、隠密スキル、更には行動速度を見越しての理熾の案である。

何より斥候職という戦闘時に貢献しづらい(使えない)兵科を利用するという発想。

戦闘中という一番のリスクを、こういった方法で回避するなど前代未聞だ。

手持ちの札を最大限利用することを惜しまない理熾らしい案ではあるのだが。


「罠士は物資の配分を間違えるな!

 お前らが崩れたら何も機能しない!

 頼んだぞ!」


斥候職と後衛の補佐に回る罠士。

彼らの本分は罠の設置、解除等を前提とした道具を使った攻撃力だ。

そもそも彼等の生命線である、罠の数を把握するのは勿論のこと、手持ちの物資の全てが消耗品(武器)である。

当然その消耗品が自身の生命線になるのだから、物資のやりくりは誰よりも上手い。

そして戦況に聡く、だからこそ事前に罠を張れるのだ。


そんな彼らが全力で補佐(サポート)に回るとどうなるか。

過不足無く補給を行う様は火を見るより明らかで、戦況を把握し物資が少なければ追加を、多ければ配分の指示を回す。

しかも斥候と同じく罠士も戦況把握が上手いため、危険感知能力が高い。

後衛に居るので前衛よりも広範囲を監視でき、斥候に対して物資の受け渡しと危険の度合いを伝えて斥候を配置しなおす。

前衛での判断は斥候、後衛からの判断は罠士が担当するという形でお互いを使い合っているのだ。


こういったことは指揮に分類されるので本来は指揮官が行う。

そこに突然配置され戸惑う彼らだったが、この状況では仕方ない。

前衛は多いほど良く、今回の指揮官はたまたま前衛型だった。

こうなれば役割分担的に罠士が起用されるのも頷ける。

そしてその運用は綱渡りながらも完璧に実現し、効果を発揮している。


「あの新人は今や誰よりも死地に居るくせにこの戦場にまで口を出すのか」とオークと切り結びながらジンは思う。

ほんの20分ほど前まで絶望のため瓦解寸前だった戦線をすぐに立て直した運用に舌を巻く。

だが本来は斥候も罠士もこういった運用はされない。

罠士も斥候も準備の兵科であり、戦場では伝令兵が普通である。

この辺りにも理熾の息が掛かっている。

理熾曰く「狭い戦場で伝令兵とか要らない」らしい。

叫べば届く程度の距離でわざわざ人を使って伝える意味は無い。

相手が言葉を解さないオークならなおさらだ。


全く釈然としないが、戦線の建て直しに成功し、今もまだ首が繋がっている。

オークの数が少しずつ減っていることを思えば、押し返せる可能性もある。

この戦力差で押し返すのはありえない話なのだが、それすらも夢想する。


「気を緩めるな!

 もう少し戦況が変わればこちらのものだ!」


ジンの役割は最早味方を鼓舞することに変わっていたのだった。

お読み下さりありがとうございます。

理熾がいきなりジンに口出ししだしますが、発想の大本は漫画、小説、ゲームなどです。

そもそもジンにしても絶望的な状況下だからこそ、理熾の案にすがっているだけです。

でなければ新人の素人の発想なんか絶対に聞き入れません。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ん、りおがジンというか本体に指示する場面がないのですが、後半場面はジンが指示したという事でよろしい?
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