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神様のおねがい  作者: もやしいため
第十五章:魔宮の最奥

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踏み入れた魔境

理熾の問いに即答できる者などいない。

災害指定種にもなると、生態の研究以前に攻略法の模索に目が向く。

結果、術式の火力を上げたり、罠の威力を求めたり、技の改良に励んだり…と、どんな相手へも優秀な対策として、自己研鑽による解決を優先していた。

ここに偶然発覚した弱点などを追加していくのが、この世界での主な対策だった。


「そりゃ霊亀の魔力で…」

「うん、僕もそうだと思ってたんだ」


「なら何が問題なんだ?」

「霊亀が餓死した後でも取り巻きが残ってたんでしょ?

 なら、霊亀を倒すだけじゃ取り巻き(スタンピード)の起点を固定化することにしかならないよね?」


―――ッ!


静かに息を引き込む音がした。

取り巻きは非常に頭の痛い問題だが、やはり主役は霊亀になる。

話題に上がりつつも、誰もが気にしていなかったところなのだろう。


「つまり大氾濫(スタンピード)を起こす取り巻きには、霊亀の生死って関係ないってことだよね?」

「霊亀討伐ばかりに目が向きすぎていたらしいな…」

「盲点と嘆くわけじゃないが、難易度ばかりが上がってるじゃねぇか」


元より頭を悩ませていた共生の魔物は、霊亀討伐において無視できない…いや、殲滅対象へと格上げされた。

ただ、何を言ったところで問題は収束していくのだが。


「ならやっぱりどんな手段を取るにしても最初は取り巻きだね」

「『霊亀災害における全戦力の殲滅』ってどんな規模の討伐依頼だよ…セルジ、値段でも付けてみるか?」

「…………討伐方法まで確立できれば中規模の国が買えそうだ」


「ほうらな! もうやめやめ!

 とりあえず足止めか深部向けて追い返そうぜ!」

「国家予算の討伐依頼って…」

「スフィア(こっち)に一年も居ないくせに理熾君イベント多すぎでしょ…」


口々に感想が吹き上がる。

情報収集はほとんど済んだ。

後はどう判断するかだけ…渦中の理熾は黙りこくったまま思考を巡らせていた。


・

・

・


「なんだ、霊亀討伐に向かうんじゃないのか」


ラボリから魔境までの《転移門》を越え、開口一番で不平を漏らしたのは、いつぞやの緊急依頼(ハイオーク)、そしてリザードの討伐依頼よりも少し重ね着したフィリカだった。

普段の胸元だけを隠したチューブトップにエプロンを掛けただけの鍛冶士ルックに見慣れた理熾からすると、今日は気合入ってるなぁと感心してしまう。


ちなみにそんな恰好で鋳造や鍛造を平気でこなすフィリカのエプロンには、腕を上げるたびにこれでもかと特性を重ね掛けして更新しているらしい。

霊亀討伐の依頼料を楽し気に話していたが、過去に作成した『フィリカのエプロンシリーズ』だけで国家予算並みになるのでは? と密かに理熾は思っていた。

フィリカにとってはただの作業着でも、他人にとってはすべてが貴重な特注装備であり、希少な研究材料でもあるのに、やはり価値観の違いとは恐ろしい。


「昨日『無理だ』って結論出ただろうが。

 何でわざわざ災害指定と事を構えないといけないんだよ」

「リオ君が納得してなさそうだったから、てっきり情報収集に喧嘩売りに行くと思ってたんだが」


「こら、バカなことを言うなよ!

 目的変わったらどうしてくれる?!」

「個人的にはそちらの方が…」


「パーティ的には大損害だ!」

「あっはっは!

 いやいや、やはりたまに前線に出てくるのも楽しいものだな!」


「こんな危険地帯で喜ぶんじゃねぇ!!」


年長者たちが揃いも揃ってやかましかった。

そんな大人達のやり取りの最中、幼馴染三人はというと…。


「ねぇ、震えてるけど大丈夫?」

「だ、だだ、大丈夫なわけがないだろう?!」

「大人なのにだらしないなぁ」

(スミレ、強化して)


―――ズガンッ!!


指示を受けたスミレによって即座に強化される《障壁》を、理熾は割と全力の《振脚》で踏み締める。

空中に浮かぶ力場は、若干たわむように小さく波打ったが、それだけで解けることなくその場に存在した。


「リオ君?!」

「ほら、これだけ蹴っても大丈夫だから!」


「君は馬鹿なのか?!」

「あれ、思ってた反応と違うんだけど…」

「テレビの通信販売じゃないんだから…」

「そうそう、あれは見世物(ショー)だから面白いんであって、実際に崖っぷちのところで危険なことされたらあの反応(ラザフォードさん)が正しいんだからね?」


「そっか、まぁいいや」

「リオ君?!」「「軽っ!?」」


結論から言うと大人も子供も騒がしかった。


この場に居るのは昨日魔境を駆けた理熾と配下五人のラボリ組に幼馴染二人に、フィリカとラザフォードを加えた合計十人だ。

パーティと考えれば十分な人数で、戦力を問えば一流に肩を並べるだろう。

コンパス代わりに連れ込んだラザフォードをどうやって護衛するかがカギだろうか。


「さて、ラザフォードさん。

 迷宮(ダンジョン)がありそうな場所ってわかりますか?」

「この状況で訊くとは相変わらずだねリオ君…」


ラボリで捕獲され、大氾濫(スタンピード)に巻き込まれた時のことでも思い出しているのだろうか。

到着したばかりのラザフォードの顔には、すでに疲労の色が乗り始めていた。


「そのために来てもらいましたからね」

「そうだな…向こう側だろうか。

 何となくそちらに向かわないといけない気がする」

「えらい不確定な感覚だな」


「ぼく自身、<迷宮創造者(ダンジョンメーカー)>のクラスを把握しきれてるわけじゃないんだから仕方ないさ」

「ま、指針がない今までよりかなりマシか」


悪態をついたネーブルだったが、結局肩を竦ませながら締めくくった。

今まであてもなく彷徨っていたことを思えば俄然やる気も上がるだろう。


「そうそう、フィリカさんはどんなことができるんですか?」

「そうだなぁ…相性にもよるがBランクくらいまでならソロで狩れる戦力がある」

「論点が微妙にズレてるぞ」


「ズラしてるんだよ。

 今の質問なら『【精霊魔法】が使える』程度の返答くらいしかできないだろ」

「他にもあるだろ」


「鍛冶もできるな」

「そうじゃなくて…」


「この場ですべてを晒せと?」

「戦力に関してはそうしてもらいたいものだな」


「ただの協力関係に過ぎない私に負担を求め過ぎだろう」

「戦力計算ができないだろうが」


「なら、私は支援に徹するから、まったくあてにするな」

「お前…」

「ちょっと、喧嘩しないで!

 僕はとりあえずフィリカさんの魔法が見れるだけで十分だから!」


戯れるようなフィリカへ向ける、ネーブルの視線に剣呑な色が乗り始めた時、理熾が止めに入った。

パーティは組んだものの、フィリカの参入は前途多難かもしれない。

お読みくださりありがとうございます。


久々になろうの作品を紹介していますので、是非とも覗いてみてください。

本作を好きな方なら気に入るんじゃないかなって思っています(笑

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