魔の極致2
理知的な目で理熾君はあたしのことを見る。
けれど、あぁ悲しきかな。
単に次に情報を出すのがあたしの番ってだけなんだよね。
こういうときの理熾君は本当に人の心の機微がわからない。
「【魔力操作】は名前そのままで、【魔量苛烈】が魔法の出力が上がるとか能力の増加効果。
【魔術指南】、【戦闘指導】も言うほどじゃないよね。
持ってるからアドバイスはするけど、あんまり人に教えたりはしてないから死にスキルかも?」
「え、どうして?」
「後で説明するけど、単純に『あたしと同じ魔法は使えないから』だよ。
魔力の運用とか使い方とかなら良いんだけど、ユニーク持ちのあたしは普通の魔法士じゃないからさ」
「うーん…そうなんだ?
じゃぁ続きを…」
「ねぇねぇ詩織、それって自慢?」
「うっさい穂波!
ただの事実だよ!」
「こりゃ失礼」
片目を瞑って『てへ☆』と舌を出す穂波。
まったく…さっきあたしは茶々入れなかったんだから黙ってて欲しい。
さて続きはっと…自分のステータスを上から見ていく。
「【効果甚大】は穂波の【効能過大】みたいなものだけど、どっちかというと攻撃的かな」
「攻撃?」
「うん、【効能過大】は内向きで、【効果甚大】は外向きなんだよ」
「えっと…?」
「穂波の説明思い出してよ。
『装備特性や補助効果の引き上げ』だったでしょ?
だから穂波のは『自分に対する効果を引き上げる』で、あたしのは『他者に対する効果を引き上げる』ってわけ。
あたしの補助って穂波を急激に強化するから、穂波が前衛するとホント鉄壁だったんだよね」
「何だその神コンビ…。
二人で軍隊相手にできるんじゃないの…?」
「大氾濫は抑えた覚えがあるね!」
「僕の幼馴染が恐ろしく逞しい件について…」
遠い目をしながらぼやくのを微笑ましく思うけど、理熾君も一パーティで大氾濫を抑えてるんだけど覚えてないのかな?
あ、いつもの過小評価かもしれないね。
ちなみに『掛ける』のに補正が付く【効果甚大】は、自分に掛けても効果はそれなりに上がる。
穂波の【効能過大】と違って自分で効果を選べるから使い勝手は良い方だと思う。
「アクティブとユニークの【神使】は穂波と同じ。
【神術】についてはちょっと面倒な説明になるけど良いよね」
「勿論。知らないと危ないし」
「それじゃ、【人界の君臨者】は穂波の【戦場の絶対者】と効果がほぼ同じ。
【逢魔の顕現者】は儀式系術式みたいに周囲から魔力を調達する。
【魔術回路】が同時に別の魔法を使えて、魔力とかMP回復とか色々と補正されるんだよ」
「うっわぁ…魔法士相手に魔力切れも狙えないとか鉄壁過ぎる…」
何故か絶望してる理熾君。
あれ、もしかしてあたしも『攻略対象』なの?
うわぁ…是非とも違う意味であってほしいなぁ。
「続けるよー?
【魔装転化】は【魔闘技】みたいな感じだけど…魔力が目に見えるくらい凝縮される。
戦線が崩壊しそうになったら【魔装転化】使って前に出ることもあるよ」
「は?
お前魔法士の癖して前衛の真似事やるのか?」
「そうだねぇ、意外とどうにかなるもんだよ」
一緒に戦線に立つ仲間を生きて帰すために前に出るのは普通だよ?
ネーブルだって同じ『指揮官』なんだから、いざとなれば残酷にもなれるだろうけど…実際はそう簡単に割り切れないものでしょ?
穂波に視線を向かわせると、あたしの考えを知ってか知らずかうんうん頷いていた。
「え、じゃぁ詩織って…もしかして武器持つの?」
「武器ってわけじゃないけど【魔装転化】で出てくる槍使うかな」
「いや待て、一言で凝縮ってまとめてるが、まさか『物質化』までするのか?」
「仮にもユニークに入るスキルなんだからそれくらいするよ。
穂波の【覇軍狂歌】よりかなり普通のスキルだと思うけど?」
「えー、私のスキルってそんなに凶悪かなぁ?」
「…大氾濫抑える為にそのスキル使って討伐者の戦力を一ランクくらい上げたでしょ。
一時的だけど、それってつまり戦力が三倍って意味だよ?
さ・ん・ば・い。
味方全体全能力強化って、数を揃えるとホント異常な性能になるよね…」
呆れてしまうのは、あたしたちの戦力が始めて公式に認められた『凪の戦端』と呼ばれるあの大氾濫での出来事。
数で劣る討伐者を奮い立たせたのは、穂波が持つたった一つのユニークスキル【覇軍狂歌】。
崩れた戦線を立て直す為に打った起死回生の一手は、一拍の間を置いて上がったあの鬨の声をあたしは忘れられない。
疲弊していたはずの人や、死の一歩手前の重傷者ですら、引き上げられた能力であっさり立ち上がって戦線に加わるあの恐怖といったら…うん、アレは無い。
ちなみに長時間の【覇軍狂歌】は、術者である穂波以外の利用者の寿命を容赦なく削るので注意が必要。
用法・容量を守って正しくお使いくださいって感じかな。
「え、うーん…そうだねぇ。
でも武装部隊に『新人研修』とか無くってさ。
いきなり魔境防衛に放り込まれるからわりと使うんだよねぇ」
「いや………聞く限りヤバイやつだから今度から手加減してやれよ…?」
「大丈夫だって。
死なせない為に使ってるだけだしね!」
「それは全く大丈夫じゃないやつだわ…」
疲れたように穂波に呟くネーブルを見て、何となく理熾君もこんな感じで迷惑掛けてるんだろうなぁと思う。
穂波って変なノリだけ理熾君に似てるんだよね。
「で、最後に【色彩魔法】だね。
前提なんだけど、あたしって基本属性は何でも使えるんだよ」
「すごい便利だね」
「そうなんだけど、これで終わったら珍しいけどユニークにしては微妙なわけで。
このスキルの良いところは『持ってる属性を混ぜ合わせられる』ことと『効果を引き上げられる』ってところなの。
たとえば《土流壁》と《火焔壁》を組み合わせて、燃える土壁とかも作れるよ」
『凪の戦端』の防衛戦で構築した魔法を思い出して説明する。
土属性は重いから魔力使うけど防護壁に結構使えたなぁ…燃えてるから簡単には取り付けないからね。
「魔法名は?」
「んー適当かな。
どうせ独自術式だし、名付けも即興で無詠唱なのも多いよ」
「なんて羨ましい…。
魔法目当てで来た僕は魔力ゼロからスタートだというのに!」
「特殊三属性持ちの理熾君には言われたくないかなー」
からかうように返すと、理熾君はぽてっと机に頬を付けてふてくされる。
なんだろう、すごく可愛い。
十三歳かぁ…あたしも周りにこんな風に思われてた時期があったのかな?
「加護はどんなのだ?」
ほのぼのしていたあたしに声を掛けたのはネーブル。
険しい顔なのはあたし達の戦力が過剰すぎるからかもね。
異質な『迷い人』って使い勝手が悪いって思われてるし、理熾君以外は暫く警戒しないといけないかな?
「【神術の福音】だね。
穂波と似たような効果だけど、一番は異常回復かな」
「異常回復?」
「魔法士だからか、魔力の回復速度が人の三倍くらい。
そのせいか自然治癒とかも高くて、やったことないけどほっといても腕くらいなら再生するかも」
「死なないのかお前…」
「いやー、さすがに即死は無理だと思うよ?
ちょっとした怪我くらいなら無視して動けるくらいかなぁ。
でもそれって穂波も同じようなものだから、あんまり誇れないけど」
長々とご清聴ありがとうございました。
内心そんなことを思いつつ、ようやく自分のことを話し終えた。
経歴?
ふふ…それはおいおいってことで。
「迷い人は揃って化物かよ…」
「その言い方は酷い」
「断固、抗議する!」
「ホント、二人ともすごいよね」
「いや、『迷い人』って言っただろ主人…」
「もしかして僕も入ってる感じ?」
とぼける理熾君に溜息を重ねるネーブル。
セリナさんはにこにこしてるし、ホント仲の良い領地だね。
「それだけ強いなら僕たちは補助に回って二人に任せようよー。
一緒に前線に立ってもきっと邪魔になるだけだって、ねーねー」
急に面倒になったのか、理熾君はそんな酷い話をし始めた。
まったく…あたしたちの幼馴染は困ったもんだ。
すぐに楽しようとするんだから。
そんな理熾君だから、あたしたちはいつも引き入れるんだよ?
異世界のスフィアで、五年ぶりの『いつもの日常』を過ごす。
ふふっ、これから楽しくなりそうだね!
お読みくださりありがとうございます。
詩織より穂波の説明の方が主体となってしまいましたが、今回は二人のスキルの総括って感じですね。
次から神様回を考えています…話が進まず済みません(。。;




