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神様のおねがい  作者: もやしいため
第十三章:有名税の取り立て方

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ハンス・ラザフォード

今回は時を半日ほど戻ったネーブルとの事情聴取の場面。

内容は冴えない中年の過去話。

<迷宮創造者(ダンジョンメーカー)>であるラザフォード視点でお送りします。

お察しの通り、タイトルはラザフォードの名前になっております。

ぼくはネーブルと共に宛がわれた部屋に入った。

そこで問われたのはぼくの経歴と目的。

要は『ぼくはなにか』をだ。


だからぼくが君達と会うまでの話をしよう。

事細かに伝えるには39年もの期間は長すぎるので色々と割愛させてもらうけれどね。

それともこちらに訪れてからの16年でも良いかもしれないかな?


意味が分からない…か、だろうね。

ならまずは生い立ちとこちらへ来た経緯くらいは語った方が分かり易いだろうか。

大して深くも無い、残念なぼくの人生を順を追って説明しよう。


ぼくの生まれはグラディアという土地だ。

このスフィアとは違って魔法は無かった分、物理法則への理解が進んでいた。

ふむ…この『スフィア』という言葉だけで、あっさりとぼくが『迷い人』だと断定する辺り、君は理解が早いなネーブル。

そういえば『異世界(スフィア)』を知ると、自分が生まれた世界を神様が何て呼んでいたのか気になるところだ。

ぼく達が知っている名前はどれも単なる地名であって、『別世界』と区別した名前を持っていたわけではないからね。


おっと、話が逸れてしまったな。

そんな物理法則を味方につけていた世界で過ごした部分は割愛しよう。

恐らく今聞きたい情報ではないだろうからね。

ただ、一応常識的な範囲での説明はしておこう。

グラディアでの成人は18歳で、迷い込む直前の23歳だったぼくの職業は運輸関係のマネージャー…つまり経営者だった訳だ。

まぁ、五人ほどでやるような小さな商売だったがね。


このスフィアへと来るキッカケはそんな大それたものじゃない。

気が付けば遠近感の狂うような真っ白な場所に放り込まれ、神と名乗るおっさんに死んだことを告げられていた。

状況も分からず、呆然としながら徒労感に暮れた。

その理由というのも、たた『仕事量に潰されただけ』という、驚くほどどうでも良い死に方だった。


何かを後悔する間や自覚も無く死んだはずなのに、白い空間での『延長戦』のせいで未練が溢れた。

やり残したことが多すぎる短い人生を思って不満を抱き、ままならなかった周囲へ悪感情で満たされた。

言い訳かもしれないが…そこを突かれた。

いや、どちらかと言えば『魔が差した』と表現するのが一番正しいかもしれないね。


そして『人を減らすことで救える世界がある』という馬鹿げた話に乗ってしまった。

あぁ、そうだ。

ぼくをこの世界へと送りつけた神は『増えすぎた人族を間引け』と命令した。

今思い返しても本当に馬鹿な話だ。

八つ当たりをしたことで少しくらい気分が晴れても、それは異世界(スフィア)での出来事。

ぼくのグラディアでの過去が救われることなど未来永劫あるはずもないのにな。


とはいえ、そんな荒んだ心を抱えてスフィア(ここ)へと送られた。

余りにも綺麗な透き通る青い光に包まれた転送の光景は今も覚えている。

ま、前の世界での『ぼくの生』は終わっていて戻れないらしいから、二度と見れることは無いだろうがね。


そして地面に降り立って最初に感じたのは、今までとは全く違う『力強さ』だった。

ぼくの身体は見ての通り肉が…脂肪も筋肉も付きにくいらしくてね。

一時期頑張ったこともあるが、努力に見合う身体にはならなかった。

見た目の話でも、結果の話でもだ。

運輸関係の仕事を始めたのもそれが理由だよ。

おい、泣けてくるから笑うなよ。


まぁ、そんな非力なぼくなのに、今までは絶対に出来なかった動きが出来る。

その場を飛び跳ねるだけにしても、ただ地面を蹴るだけで優に50cmは浮かぶ。

長時間歩いても疲れず、走れば驚くほど早く、息切れもしにくかった。


虚弱ではないものの、体力に恵まれなかったぼくにとって、この変化は劇的だった。

23歳のいい大人が、けたけた笑いながら街道を走り回ってたのはとえらく恥ずかしい思い出だな。

いや、だから笑うなと言ってるだろう?


だが、それでも仕方ないと断言出来るだけの開放感があった。

肉体的には当然だが、過労死するほど業務に縛られていたことを思えば、肩の荷が降りたどころの話ではないしな。


しかし暫く経つと浮かれていたぼくも落ち着きを取り戻してくる。

まず拙いと思ったのが衣食住。

この世界に基盤なんてものは無いし、身形は身に付けていた服だけで小額の金すら持っていない。

換金しようにも物も、相手も、場所も無いという、まさしくゼロからの出発だ。


様々なシガラミから解放され、身軽になったと思えば心は軽かったが、特に飲食が直近の問題だ。

それに元の世界とは違って『剣と魔法の世界』と聞いていたから、不安で仕方なかったのを覚えているよ。

そう、前の世界(グラディア)でも戦争などはあったが、ぼくが居た地域は比較的平和でね。

危険な動物も居るには居たが、それぞれ対策が取れるものばかり。

しかもスフィアのように魔物という絶対的な暴力を振りかざす『敵』は居なかったんだ。


とはいえ。

魔物の脅威が無くとも、このままでは数日と経たずぼくはまたも死を迎えてしまう。

何処かへ向かわねばならないが、何処へ行けば良いかも分からない。

いきなり放り出された異世界で、ノーヒントでってのは流石に酷いものだろう?

余りにあんまりな現状に、初日から心を閉ざしかけたところを人に拾われた。


相手は馬車を利用する商人だ。

最初に立っていた場所が街道だったので、最初から商人に拾われることを見込んでいたのかもしれないが、それならそうと言っておいて欲しかった。

だが、話を聞くとその街道は人通りがそれほど多くないらしくてね。

魔物もそれなりに出るということで、あれはもう運が良かったとしか良いようが無い。

よくぞ拾ってくれたものだと感謝してもし足りなかったよ。

神に対しては恨み言しか出なかったけれどね。


その商人は、何も持たないぼくの状況に不信感を募らせてはいたものの「身包みを剥がされた」と嘘を吐くと、むしろ親身になってくれた。

まぁ、前の世界では命を亡くし、物の持ち込みが許されなかったこと思えば、神様という『追剥に遭った』と告げることに嘘は無いだろう。

ありがたいことに、慌てるぼくの様子が『まさに被害者そのもの』に見えたらしくすぐに信じてもらえた。

けれど『強盗』が日常的に居ると考えると、なかなかの治安の悪さだと感じたのも覚えている。

そして何処も人手不足ではあるらしく、手伝いという労働を対価に、あっさりと馬車に乗せてもらえることになってホッとした。


それに運送業をしていたこともあり興味が湧いたので本当にありがたい出会いだったな。

しかしこの世界にも『牽引車』があるとは思わなかったがね。

ん? あぁ、ぼくの世界では牽くものによって名前が違ったんでね。

馬車もそうだが、犬車とか、蟲車とかが一般的で、複雑な場所だと人車なんてのも使われてたな。

あと、最大規模のものになると海の水鯨車(アクアライン)というものが…っと、すまない話が逸れてしまったな。


さて、それからは生活基盤の無いぼくは、その商人を手伝いつつ情報集めと【神託】のクリアが日常になった。

あぁ…【神託】というのは『神からの依頼』と言い換えられるか。

一方的に送りつけられるから、出来なければそれで良いものだが、その依頼を解決するとギルドと同じように報酬が手に入った。

日常的に発生する依頼と同じで、達成すると金銭や道具・装備に加え、能力値や経験値、機会やスキルなんてのも存在した。


…確かに。

ステータスに関わるものはスフィア人…ネーブル達の事だ。

そう、そのスフィア人より外部から供給する方法があるため、随分と優遇されていると考えられるな。

ま、君達に頼めない類の依頼だから、異世界からぼく達のような者が連れて来られるのだろう。

ついでに達成し易いように補強するために。

まぁ、相応の難易度設定がされているから、希少価値が高いステータス関連は難しくてなかなか手に入らないがね。


話を元に戻そう。

先ほどの商人の手伝いといっても、数字を扱えて文字も書けるぼくは随分と重宝された。

ぼく達の世界は魔法という『幅』が無い分、学ぶことは数字や論理に偏るからな。

正式に店舗を持たないかと打診を受ける程度には信用もされていた。

思えばこの頃が一番充実していたかもしれないな。


そういえばスフィアに来た時点で既にEランクの討伐者よりも能力的には強かったらしい。

だから最初から魔物の心配はなかったみたい。

流石に道具も無く放り出されて魔物に負けましたじゃ話にならないからだろうね。

といっても、周りと比べることがなかったから、その事実に気付いたのは暫く経ってからだったな。

最初から教えてくれてれば良かったものを…今言っても意味の無いことだけれどね。


けれどそれらを知ってからも、ぼくは面と向かった戦闘は出来るだけ避けた。

元々運動が苦手なぼくでは『討伐者』となるには色々と足りないところが多かったからだ。


おい、『分かる』とか言うな。

さっきから間に茶々を入れるんじゃない。

…まったく。


ただそんな中でも【迷宮創造】(ラビリンス)の力は破格だった。

ただ迷宮が無ければどうにも出来なかったので誰にも知らせず、ゆっくり育てた。

まぁ、目的を思えば誰かに話せるような内容でもなかったからね。

あんなことが起こるまでは。



――ぼくが居た町が、魔物の群れに襲われたんだ。



この世界では珍しくも無い…今も何処かで起きてるだろう日常だ。

その土地の領主も十分に戦力を抱えていて、町の防衛は周囲の集落に比べて遥かに強固だった。

しかし、それでも魔物の勢いを止めきれず、防壁は崩され、火が燃え広がり、人々は逃げ惑った。

ぼくも不慣れな武器を手に、魔物と戦ったことを覚えている。


少しずつ何とか押し返し、魔物の逃げ去った後。

ほっという安心感と共に見渡した町の景色は、ぼくを絶望させるのに十分なものだった。


均されていた地面や道は、デコボコで瓦礫や肉片がそこかしこに転がっていた。

地面や壁が『何か』の血肉で赤黒く、薄く錆びのニオイが鼻を掠める。

触れば崩れる黒く炭化した壁や柱の焦げるニオイに混じって肉の焼ける良い香り(・・・・)が漂うそんな地獄。


認識してはいけなかった。

いや、目が、耳が、鼻が、肌が…舌でさえも。

残酷な現実に過敏になった知覚は、強制的に周囲に漂う知りたくもない情報を拾い、嫌というほど理解し尽くした。


それらを理解させられた(・・・・・)次の瞬間、ぼくは口を押さえることも出来ずに吐いた。

内臓が絞られるような不快感は止まらない。

間断なく魔物に襲われ、休憩も食事も取れず、胃の中は空っぽだったはずなのに。

びちゃびちゃと胃液だけを吐き続けた。


周囲はそんなぼくを哀れむような目で見ていた。

日常的では無いものの、魔物の被害というのは『こういうものだ』と彼等は認識をし(あきらめ)ていた。

絆が深く、温かいようでいて、日常を送るために必要な冷酷さを持つ彼等と、ぼくは根本的に違うのだと理解した。

だが、それでも今回の被害は甚大で、最終的に人口の三割が死傷していたらしい。

それは数字上の話だったが、目に見えて『得意先』が無くなっていたし、世話になった商人の家族も一人亡したと泣いていた。


そうだな…君の言う通りだ。

そんなもの、世界の何処かで起きている出来事に過ぎない。

単に確率的に低いと言うだけで、いつ発生するかも分からない、そんな日常だ。


だから端的に言えば『舐めていた』という言葉が相応しいんだろうな。

ぼくは『人の営み』というものを余りにも軽く見すぎていた。

どれだけ安全で囲ったところで簡単に人は死に、積み上げた安心はあっさりと瓦解する。


それでも時間は…日常は待ってくれない。

置いていかれれば二度と追いつけない。

すぐにでも立ち上がらなければ、最低限の日常すらも送れなくなる。

この世界はとても過酷なものだ。


そして神はぼくに『これ(・・)をやれ』と、<迷宮創造者(ダンジョンメーカー)>のクラスを与えたのだと思い出した。

そのことに気付いた時、ぼくは身体から力が抜けたよ。

今思えば少々安っぽいものだが、絶望ってのは些細なキッカケで顔を見せるものだと知った時でもあったな。

だから全身全霊を使って、この馬鹿げた被害を止めてやろうと秘かに決意した。


けれどぼくの力は大氾濫(スタンピード)を含め、『無差別に攻撃すること』に特化しすぎていた。

そう、迷宮を拠点に魔物を育て、迷宮を広げ、魔物を吐き出し、周辺を根絶やしにする。

被害を抑えるために来た討伐者や探索者は、育てた迷宮の力で迎撃する。

それこそ現状に合わせて(リアルタイム)で構造を組み替えられるぼくに死角など無い。

討伐を目論み、挑んで来た強者を糧に、さらに迷宮は強固に肥大化する。


ぼくの力は適切に運営すれば余りにも効率良く敵を圧し潰す。

国ですらも大氾濫で傾く以上、たった一人でも国家を相手に出来てしまうくらいに。

そんな、驚くほど『魔王向きの力』を自覚した時は暗く笑うしかなかった。


そして【迷宮創造】を使わないぼくの戦力は、強者の中では下位にも及ばないことも理解していた。

つまり、このスキルを使わずに魔物の脅威を無くすことはかなり難しいことを意味する。

使ったところで周囲に被害を及ぼすが。

なんとも考えられたクラスとスキルだ、と呆れてしまったよ。

ぼくに依頼した神は、実は悪魔なんじゃないかと疑うほどにね。


それからは試行錯誤の連続だ。

スキル・クラスの利用法はすぐに思い付いたが、実現するだけの力は無かった。

迷宮を単独で探せるだけの能力や、迷宮の力を引き出すスキルが足りなかった。


決意を新たにしてからも【神託】を消化しつつLvを上げ、決定的な虐殺(スローター)系のものは放置した。

罰則は無いと聞いていたので、そこに躊躇いは無かったが、見られている可能性も考えて『出来ない理由』をでっち上げていた。

ものの2~3ヶ月ほどで粗方の簡単な【神託】は終わっていたが、結局人を害するタイプのものは置きっ放し。

新たに発生する【神託】も無かったことから、恐らくは溜まっているモノが消化されてからなんだろうと予測した。


そのまま半年ほど経つと未消化の【神託】は全て消えてしまった。

一向に動かないぼくは神に見放されたようだと思ったのは、それから更に一年が経過してからだ。


その確信を得てからは、一気に出来ていなかったことへと手を伸ばした。

どうやらぼくは<迷宮創造者>という特殊なクラスを持っているがために『新たな通常クラスを手に出来ない』らしい。

ユニーククラスとでも呼べば良いのだろうか。

何にせよ、これは秘匿クラスではあるらしく、他人からは読み取れないがために『カルマ持ち』と判断された。


あぁ、そうそう。

先にステータスを開示した方が良いだろうね。


---+---+---+---+---+---

名前:ハンス・ラザフォード

年齢:39

種族:人族

職業:迷宮創造者(ダンジョンメーカー)

Lv :68


スキル

パッシブ

遁走Lv7

自然調整(アジャスト)Lv9

消費削減(コストダウン)Lv10


アクティブ

防衛戦技Lv3

部位強化Lv3


ユニーク

神使(しんし)Lv5

迷宮創造(ラビリンス)Lv7

 ・徴収権(コレクション)

 ・変更権(チェンジ)

 ・付与権(グレード)


---+---+---+---+---+---


この中で目を引く【神使】は、『神の使い』として優遇される加護のようなもの。

一般の目に触れるとまずそうなステータスの閲覧を妨害し、ある程度の能力の底上げやスキルを強化する。

だからネーブルが『見えない』と言ったのはこのせいだ。


【自然調整】は適応能力を高めるスキルだ。

今のぼくは火山の高温や、深海の水圧に晒されてもそこそこ生きられる。

流石に溶岩に浸かったり、エラ呼吸を取得するのは無理だから即死しない程度だけれどね。


【消費削減】は自分の生存能力に由来するスキルになる。

迷宮にも効果が反映されるんだけど、名前の通りの効果になる。

大氾濫が起こしやすいように、必要となる魔力を減らすスキルと言えるかもしれないな。


【遁走】と【防衛戦技】は迷宮を発見するために身に付けた『逃げ延びるためのスキル』だ。

ぼくには倒す力は無いから、人よりも高い能力を逃げることに割り振るために手に入れた。

そして意外と使えるのが【防衛戦技】で、攻撃相手が強いほどに効果を上げる。

簡単に説明すれば『こちらが劣っている能力に、敵のステータスに対するスキル割合分上乗せする』というものだ。

ま、それでも負けてる以上有利にはならないから、結局逃げるための能力ではあるんだがね。


後は迷宮関連だ。

【徴収権】は迷宮が手に入れた魔力(エネルギー)を経験値として一部手に入れられる。

そうそう、最初の頃は管理迷宮を一時的に掌握してLvを上げたりもしていたよ。

流石に枯らすとまずいから程々にしていたけれどね。

ぼくのLvがそれなりに高いのは、高出力の迷宮の魔力を横取りしているからなのさ。


残りの【変更権】は主に迷宮内部を操作するスキルで、【付与権】は迷宮内部に何らかの効果を与えられる。

使用例として、【変更権】は罠の設置、【付与権】は時間経過での罠の復元、と考えれば理解し易いかもしれないな。

ふふ…ラボリ(この)迷宮を突破するのに手間取ったそうじゃないか…え、まだ中に居る者も居るって?

それはまた…君達だけじゃなかったんだなぁ…放置で良いってネーブルもかなりシビアだなぁ。

まぁ、救出に行ける技量があっても今からじゃ先に倒れてしまうし賢明だ。

ぼくが向かえば別だが…この場合は自己責任というものだろうからね。


さて、話を戻そう。

スキルの取得速度は他人と変わらないが、クラス依存のスキルはすぐに上がった。

ただ武器を持つのは苦手だったので、何とか手に入れた【部位強化】は、実は【魔闘技】を目指した名残だ。

修練するにしても、間違った方法を取るとこんなことになるらしい。

いやはや、若気の至りってやつだな。


そうしてぼくは、このラボリに至るまで迷宮を潰して歩いている。

最初に世話になった商人とはまだ交流は続いているが、随分と僻地まで来てしまってね。

そうそう、実は最初からガーランドを目指していたんだよ。

ガーランドを越えた先にある迷宮を育てて『魔物に対する魔王』になれば被害が随分と減ると思ってね。


おいおい、根掘り葉掘り聞いておいて、今更「何でそんな重要なことを簡単に話す」ってのは反則だろう?

信じてもらうしか無いんだが…ある意味で『君達と出会えたのは運命かもしれない』と思っている。

ぼくが『完全に手も足も出ない相手』なんてのは本当に早々いない。

あぁ、ついでに『迷宮を使ってすら』という言葉も付けておこうか。


このラボリはね、5層しかなくて若い迷宮になる。

出力も大きくないし、本来の魔物の強さも大したことは無い。

そのせいで少し無理をして枯らしてしまうかもしれないくらい酷使した迷宮だ。


けれど、ぼくにとっては『完成されたもの』でもあるんだよ。

それをあんな子供が最下層でぼくを見付け、目の前で『強さ』を証明し、最悪の失敗を犯しかけたぼくの尻拭いまでしてもらった。

だからぼくは君達に負けを認めてるんだよ。

弱点(はら)を見せ、証明するための情報を吐き出し、降伏して命乞い…はしてないか。


何にしても。

ぼくは誰かに、自分からぼくの全てを話す気なんか無かった。

信じてもらえるとも思わなかったし、証明してしまえば…。

そう、恐らく君の予想通りの結末を辿るだろう。

ぼくの意思など関係なく一生迷宮に縛りつけられて生きるか、知られた時に殺される。


…だが君達はぼくが話したいと思わせ、そしてこれだけ荒唐無稽な話を信じてさえくれる。

そのせいか今は随分と心が晴れやかだ。

情報を引き出されたことに嫌悪感どころか、感謝すら覚えているよ?


…うん?

ぼくの力を使いたいだって?

あぁ、構わないさ。

ぼくは『誰か』が平和に暮らせさえすれば、誰に使われていようともね?


「それにネーブル。

 君達ならぼくを上手に(・・・)使ってくれるだろう?」

「一人よりは案が出るだろうさ。

 でもま、うちのご主人様次第だがな」


「リオ君か」

「その通り。

 だが最初から俺がお前を引き入れる話をするつもりは無い。

 状況の言い聞かせはするが、提案と決断は主人(マスター)だ」


「なんとも手厳しいことだ」


こうして神を裏切り、人に付いたぼくの過去語りは終わると同時に彼等に協力を申し出た。

きっとぼく以上に神に一矢報いてくれるだろうからね。


「ははっ。

 ラザフォード、お前はやっぱり人を舐めすぎだ。

 あの子供が理由も無く<迷宮創造者(ダンジョンメーカー)>を遊ばせるわけ無いだろ?」


とネーブルが最後に笑った理由を翌日知ることになる。

やはり人は侮れないと思い直す程度には。

お読みくださりありがとうございます。


文字数が普段の倍くらいあります。

やはり世界観の違う人物を突っ込むとこういうことになりますよね…。

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