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神様のおねがい  作者: もやしいため
第十二章:未開拓迷宮ラボリ
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平穏の生産者3

修正中のものを上げてしまったようです。

現在は修正していますが、内容は然程違いありません。

ただ説明が増えたことと少し読みやすくはなっているかと思います。

(ライム、枷を)

(おう)


俺の指示で入り口付近、一層と二層で蠢く魔物共を3倍で押し潰す。

効果範囲が広いこと、倍率がそこそこ高いことを含めると【極集中】(コンセントレーション)を強制するような注文だ。

だが、俺としてはそこに遠慮など無い。

(こいつら)は、指揮官(おれ)が使うために居るのだから。


(スミレ、開戦ののろしを上げろ!)

(はいっ!)


俺の合図と共にライムは魔法を解除。

逆にスミレは柵の入口付近を狙って《転移門》を併用した、《結界》を伴う投剣が放たれた。

空中から地面に向けて斜めに撃ち下ろされた破壊の槌は、凄まじい轟音と共に着弾する。

投剣は直径10mの地面を抉り、土砂を上空へと跳ね上げた。

…角度的に潰せたのは15体ほどか?

やはり使うなら水平が一番効率が良いな、という感想が浮かぶ。


(行くぞレモン!)

(待ちくたびれたぜ)


(ハッサク、後は頼んだ)

(おう、必要なら呼んでくれ)


(スミレ、地上に《転移門》を)

(は、はいっ!)


柵の入口付近に開かれた門を抜け、慌てふためく魔物達の背後を取る。

やはり投剣が着弾した辺りは大混乱だな。

未知の…それも高威力の攻撃は、人でなくても恐ろしいものだ。


(レモン以外は森へ降りて待機)

(すぐに移動します!)


(残りの4本は指示通りに…合図を送るから呆けてんなよ?)

(はい!)


そんなスミレの返事を聞き流しながら最後尾へと走り込む。

魔物の背へと到達する直前から俺の【衝撃魔法】を使い、連続で小規模な爆発を起こして視界内を埋め尽くす。

といっても大した威力はないし、目の前に居るヤツラの目晦ましにしかならないがな。


だが、たった一瞬でも意識を逸らせば、爆発力のあるレモンが全てを斬り均す。

その後ろを俺は悠々と追走し、それと同時に編んだ【衝撃魔法】をばら撒く。

たったそれだけで5m程先にまで食い込み、それと同時に急制動を掛けながら足元へとしゃがみこむ。


「二刀特殊武技…《弧月斬》ッ!!」


打ち合わせ通りのタイミングでレモンが手にした刀で半円を描く。

攻撃範囲は前面全ての斬撃を飛ばし、波紋のように広がるこの技は、使い手で随分と威力が全く異なる。

距離が離れるほど威力が下がり、障害物の多さや硬さによっても同じくだ。

それを両手正反対にレモンが両手で振れば、武技の隙間は多少あっても大体7mほどの周囲全てを薙ぎ倒す。


同じような効果の上級武技なら回るように周囲を斬り捨てる|《円環戟》《ハル・トーラス》がある。

あちらは《弧月斬》と比べるとタメとディレイがそれぞれ倍以上の時間が掛かる。

しかも本来の《弧月斬》は『片手剣(刀)の中級武技』という扱いだ。

それをレモンが『同時行使』しているだけなので、技後硬直(ディレイ)は一回分に集約されて格段に短い。

その分身体に掛かる負担は重いが、戦場ではそんなことより復帰時間短縮の方が切実だ。

死地を越えざるをえなかった創意工夫の結晶という訳だな。


(退くぞレモンッ!)

(おう!)


ディレイを抱えるレモンに無音で声を掛けつつ【衝撃魔法】をばら撒く。

レモンが振り切った腕を折りたたむ時間を稼ぐため、そして撤退を綺麗に行うための目晦ましとして。

退き下がる瞬間、俺は【群雄割拠】を自分の踏み切る左足へと集中させ、4m以上を一気に跳ぶ。

そうして空中に居る俺は、ディレイが終わった瞬間に動くレモンが踏み切る前にスキルを乗せ変え、撤退を確かなものにする。


ついさっきレモンが斬り飛ばした魔物は10体を超える。

だがすぐに【衝撃魔法】の土煙を突っ切り周囲から魔物が殺到する。

せっかくこれだけ綺麗に斬り開いたというのに、その空白地を埋めるようにすぐに後ろから死んだ魔物を押しのけ踏み潰しながらだ。


それらが俺達が居た中心でぶつかるように鉢合せし、先程レモンが斬り込んだ時よりも遥かに高い密集地帯を形成する。

困惑する魔物共は、ぎょろりと一様にこちらへと視線を向けた。

一掃された魔物を踏み越えてくるヤツラの目は血走り、俺達しか見えないらしい。

同士討ちでもしてくれれば楽なんだがな。

【衝撃魔法】で一瞬見失ったところで結局はすぐにこちらへ向かってくるだろう。

小爆発を起こし一気に退き下がる最中も指示は怠らない。


(スミレ次だッ!!)

(はいっ!)


そう、まさしく『殺到』だからな?

今まさに斬り開いたスペースの有効活用だ。

次の瞬間、無慈悲な投剣が振り下ろされ、またも轟音が周囲を打ち据える。

耳を傷めないために俺もレモンも打ち合わせ通り何とか塞いでいるが、それでも身体に響く凄まじい音がな。


うーむ…主人(マスター)やスミレが放つ《結界》を伴う投剣の狙撃は一発一発が最早大魔法に近い。

ただ便利だった<空間使い(ディメンショナー)>が、通常の魔法士が出せる殲滅力の倍以上だぞ?

まったく、世の中馬鹿らしくなる。


とはいえそんな強力無比な投剣(切札)だが、何事にも向き不向きはある。

利点は《亜空間》を開くだけという馬鹿げた初動。

投剣の速度に加え、正確に攻撃範囲を選べ、絶大な威力と言ったところか。


弱点ならば高威力過ぎなこと。

相手の防御力に依存するため射程が信用出来ず、奥を気にして水平に撃ち難い。

また、《結界》を展開する場合は処理を圧迫して同時発射と連射が効かない。

まぁ、いくら類似の《障壁》を使えるからと言っても、あの強度と展開速度を強いられる時点で無茶な話だ。

むしろそんなものをバカスカ撃てたら前衛とかいらんけどな。


だからその弱点を消すために俺達が居る。

同時に放てないから単発で。

連続で使えないから時間を稼ぐ。

今みたいに『効果的に』という言葉を付けるために俺達は無茶を実行する。

そう、予定通りの戦果に頬が緩む思いだが、実は着々と疲労を積み上げる俺達には全く猶予が無いのだ。


そんな投剣が巻き上げ、降り注ぐ血塗れの土砂は、スミレの《障壁》が屋根となって俺達には届かない。

足場までは手が回らないのは仕方ない…が、何だこのありえないほど沈む地面は。

血みどろなだけでなく、耕された畑のように足が沈み込む。

いや、もっと…下手すると排水溝(ドブ)の底に足突っ込んでるような…?

こっちは十分疲労困憊だっての…無駄に体力を使わせんなよ。


そんな嘆息を挟んだ先で視界が晴れる。

これで合計60~70くらいか、と見渡した結果をざっとした数字で把握する。


(全体の1/4は削れたはずだ)


言ってて思うが…奇襲を掛けたとはいえ、たかだか数分でこの殲滅力は異常だな。

怯えの見える魔物達を思えば少しだけ可哀想にもなる。

まぁ、お互いがお互いの天敵だから仕方ないけどな。


(ライムはそっちの護衛に切り替え。

 護衛中のハッサクの指示で対応してくれ)

(あぁ…)


ライムのぐったりとした思念が届く。

【極集中】はたとえ一瞬でもかなりの負担を強いる。

むしろ処理能力を引き上げるから、その『一瞬』を長く感じるしな。

必要だからやらせたが出来ればもっと余裕を持った対応をしたいものだな。

俺は(すまんな、無茶させた)と労いの言葉掛け、新たな指示を出す。


(スミレ、投剣に怯えた今の内だ。

 まずは右側の固まってるところに直径5mで撃ち込m)


言い終わる前に放たれた投剣は同じく轟音と共に土砂と魔物を吹き飛ばした。

っは、手際が良くて助かる。


(準備が出来たなら左側に同じくだ。

 奥には主人が居るから撃ち込みすぎるなよ?)

(はい!)


思考(こえ)と共に放たれた投剣は左辺を吹き飛ばす。

たったこの2発で40ほどが消し飛んだ訳だが…魔物共、まだ頭は茹だったままか?

負けなどありえず、ただの力押しで勝敗が決まるような大群と言って差し支えないほどの集団。

それがこれほどあっさりと瓦解する瞬間はいつ見ても楽しいものだ。


思わず笑みが浮かぶのは仕方ないよな?


(レモン、準備しろ。

 向こうさんが慌ててる内に右から攻める)

(人使いが荒いぞ?)


(笑いながら何言ってやがる)

(ははっ!

 この状況じゃ昂ぶって仕方ないからな!)


そう嘯き、レモンは【狂戦士】(ベルセルク)を稼動させた。

ミチミチと筋肉が引き絞られて膨張し、身体は薄い黒みを、眼は暗い赤に染まりだす。

そして『ざわり』と雰囲気が変わり、レモンを中心とした空気も引き摺られて重みを持つ。


この圧迫感はいつ見ても慣れない。

一般人がオーガを見た時のように、絶望的な能力差を肌が感じ取って『絶対に勝てない』と強制的に認識させられる。

まぁ、狂化中(この状態)のレモンに突っ込む馬鹿なら死んだ方が良いけどな。


枷から解き放たれた獣のように突っ込むレモン。

しかしその野性味とは反対に、人の技術を繊細かつ力強く使いこなす。

右端から順番に撫でるように刀を振るだけで肉が分割される光景を見て内心(うーむ…)と唸る。

やはり雑魚相手だと圧倒的だな。


一応【衝撃魔法】で目晦ましをしながら追走するが…要るのか俺?

まぁ、短期決戦型もしくは瞬間火力が必要な場合に使用するスキルだからこれくらいの効果は必要ではある。

このスキルの難点は使用時間に制限があるのと、一気に気力・体力を消耗し尽くすから使った後は休憩必須というところだ。

それに思考を保てはするものの、どうしても好戦的になるんだよな。


聞くところによると本日二度目らしく、こちらもなかなかの無茶をしているはずだ。

だが、この戦闘で時間を掛ける気など全く無い。

そうだな…残り10分で掃討、後は事後処理ってところかね。

すぐにでも終わらせ、その後はあけみやで酒盛りの予定(まだ門が開くか微妙だが)だからな。

俺はそう予定を立てて改めて気を引き締め、レモンに置いていかれないように歩を進めた。

お読みくださりありがとうございます。


以前書いた短編の『片翼の竜』を修正し、連載を始めてみました。

下記アドレスを差し替えていますので、気が向いたら一読してみてください。


※片翼の竜の更新はまちまちなので、期待しないでください(。。;

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