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神様のおねがい  作者: もやしいため
第十二章:未開拓迷宮ラボリ

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変貌の足音

オーガの骨が散らばっていた戦闘後の森の中。

リコに骨の回収をお願いし、戦闘の爪跡が色濃く残る場所から少し外れた場所に理熾はごろりと転がり休憩していた。

背中に感じる背の低い草と土の匂い、木漏れ日に加えて木々を揺らす風が吹き抜ける。

余りにも『自然』という環境の中だが、保養所という意味でなら十分な環境だった。


アシュレイ達との合流までの残り時間は約半分の1時間ほど。

出来ればもう少し『数』を狩っておきたい。

そんな思いと共に身体を起こし、骨の散らばる場所を見てみると…オレガノがつまみ食いしていた。


「オレガノ!?」


驚きの余り思わず出た理熾の声にビクリと蠢動するオレガノ。

ただそんな中でも体液に取り込んでいた骨は刻一刻と縮み、消えていった。

確かにオレガノには(・・)指示を出していないことを思えば食べることもあるかもしれない。

それでもつまみ食いはかなり予想外だったが。


(リコ、回収してって言ったのに!)

(んーすっごいちっさいよー?)


(え?)


オレガノが這う周囲に落ちている骨は、理熾が【愚者の塊体】(ダミープロトコル)で粉砕したもの。

迅速な復帰を果たしたオーガの骨(スケルトンではなかったので)は、実は継ぎ接ぎする時に修復しつつ接着したのだろう。

なので必要の無くなったというか、打ち捨てられた骨の欠片や粉がぽろぽろと落ちていた。

それをリコは一々《亜空間》へと回収せずに放置してたということらしい。

確かに小さくなりすぎた欠片を拾っても(フィリカならなとかしそうだが)使い道はそうそう無い。


(あー…ごめんね。

 うん、食べて良いよ。

 その代わり僕の手の平より大きいのは食べずに拾ってきてね)


オレガノにそう指示するとぷるぷる震え、地面を這って行った。

その速度は今までよりも随分早く感じた。


新たに指示を出し直したリコの回収、オレガノの食事はすぐに終わった。

どちらとも大きさに関わらず回収し、大きければリコへ。

小さければオレガノへと後で分別したからだ。

まぁ、オレガノに関しては小さいものはそのまま消化していたが。


そして次の相手を探すために理熾が立ち上がったちょうどその時、迷宮(ダンジョン)が揺らいだ。

グラグラと横に揺れる地面に足を取られそうになる。

震度で言えば3か4くらいなので理熾は特に慌てない。

海外では分からないが、日本人の理熾からすると『ちょっと驚く程度』でしかない。

それに【体術】のお陰でバランスを崩して倒れるほどでもない。


それでも煩わしい揺れに軽く跳び上がって《障壁》に立って様子見をする。

念のためにハッサクに【連携】を繋ぎ


(そっちは大丈夫?)

(あぁ、主人(マスター)か。

 特に問題は無いぞ。

 たださっきの『くじゃく』には驚いt)


いきなり電話を切られたかのように、念話の途中で不通になってしまった。

よく分からない状況に、すぐに【連携】を繋ぎ直すがハッサクを捉えられない。

すぐにレモンへと対象を切り替えて探すも見付からない。


方法も変更し、【連携】ではなく血魔石(ブラッディコア)を探すも反応が無い。

こうなると理熾の認識外に居るか、血魔石を砕かれたかのどちらか。

同時に二つの連絡手段が断たれることなど今まで無かったが、こうなれば素直に範囲外に出たと考えるべきだろう。


しかし『範囲外に出る』というのはそれはそれで考えられない。

味方で同一階層に居る、という条件を付けるなら、目印を持った者が理熾の感知外から逃れること自体が難しい。

感知を遮断する方法があるかもしれないが、身内の全員が同時にというのは考えられない。


そこまで考え、理熾はスミレの血魔石を起動させる。

少なくとも何かが起こっていることは確かなのだから。

そんな理熾が静かに慌てている間にオレガノは服の中、リコは肩に降り立って待機する。

何が起きてもすぐに動けるように。


目の前に小さな《転移門(のぞき穴)》が開かれ、「どうされました?」とスミレの声が響く。

理熾の返事は【連携】を通じて迅速に。


(問題発生。

 ちょっと皆と連絡が付かなくてね)

(連絡…ですか?)


スミレの戸惑いの思念が届く間に理熾はネーブルの反応を探す。

開かれた門のすぐ近くにいたようなのですぐにそちらにも繋いで話を進める。


(スミレはアシュレイさん、ハッサク、レモンの順に探してみて)

(承知しました)

(何があった?)


スミレは理熾の指示をすぐに実行する。

対するネーブルは事前情報がゼロなので疑問しか出ず、状況説明を求めた。


(他の皆と連絡が付かなくなっちゃった。

 何かありそうだからちょっと注意して欲しい)

(ふむ…そりゃまた厄介だな)


ネーブルはそんな一言で大体の状況を把握したらしい。

少なくとも『何かが起きている』ということだけは。

そこへスミレが(反応がありました)と報告を上げる。

二人が先を促すように待つと、予想外の答えが出てきた。


(ラボリの周辺です)

(?)

(どういう意味だ?)


(迷宮では無く、地上に居ます。

 それもそれぞれ違う場所に…)


直行で迷宮を出る術など普通は無い。

整備されている迷宮であれば転送用の魔方陣をわざわざ配置し、維持・管理しているが自然に発生することはない。

特に未開拓迷宮であるラボリとなれば、手が入っていない以上あるはずがない。

スミレに限らず理熾とネーブルも戸惑いを隠せないが、目の前で起きている以上、何かしら方法があるのだろうと変に納得もする。

そしてそんな状況に合わせて動くしかないのはいつものことだ。


そこへドンドンと扉を強打する音が響き、それとほぼ同時に開かれた。

まさしく急ぎの連絡なのだろうが、余りにもおざなりなノックにネーブルは内心「おいおい」と醒めた視線を送る。

ついでに理熾との報告が会話でなくて良かった、という風に。


「緊急報告ですネーブルさん!

 ここが魔物に囲まれています!!」


門を通して切羽詰った声が響き渡る。

どうやら地上でも問題が発生したらしい。

泣きっ面に蜂というか、傷口に塩を塗るというか。

嫌な知らせは重なるものなのだろうか。

理熾達はそれぞれ肩を落として疲れた態度を取ってしまう。


「…分かった。

 まずはもう少し詳細情報を頼む。

 どの方角から、どれくらいの数が来るのか。

 それと今すぐ動ける手持ちの戦力の情報を纏めておいてくれ」

「はい!」


ネーブルの指示にすぐに出て行く報告者の気配。

ただ『情報を聞く権利がある』というだけで、ここの責任者ではないネーブルは余り口出しは出来ない。

提供される情報の質に文句を言えて、お声が掛かれば提案するという立場だ。


(こっちもバタつきだしたな。

 主人も一度こっちに戻ってくるか?)

(うん…けど何か来た。

 先にそっちで招集掛けて対応しておいて。

 終わったらまた知らせるからよろしく)


(おう、気を付けてな)

(ご武運を)


その思念を最後に門が閉じ、【連携】の繋がりも無くなる。


周囲を気にする必要が完全に無くなり、急に身軽になった理熾。

思う存分単独行動が許され、少し高揚する。

いや…そんな場合でないことは十分承知している。

取り急ぎ、目の前に居る良く分からない魔物の殲滅をしなくてはならない。


こねくり回して原型を崩し、煮詰めたかのようなどろりとした見た目。

ゾンビウルフのように中途半端に崩れているとか腐っているとかそんなレベルではない。

骨のようなものが見え隠れしているものの、その骨の位置が『そこにあるのはおかしい』としか思えない、そんな不定形。

ある意味ポルンの親戚筋なのかもしれないが、腐敗しているようにしか見えぬそれは、ただの汚物の塊に感じて同列には扱いたくない。


地を這うそれは、低いがために風を遮らず、踏みしめる足が無いために消音に優れ、腐敗に見えても臭いはしない。

隠密性に優れたそれらの気配は随分と小さい。

いくら意識を【連携】に向けていたとはいえ、僅か10mにまで近接を許したのはそういった特徴のためだった。


数は恐らく3体…そんな相手に理熾は即座に【解析】を使う。

一刻を争う以上、手は抜けない。


---+---+---+---+---+---

種族:ギーグ

Lv :27


スキル

パッシブ

不定形Lv5

統合Lv2


アクティブ

形質変化Lv5

狂化Lv2


---+---+---+---+---+---


ステータスを見て思ったのは『狂ったやつばっかだ』ということだ。

見た目からすると不死者(アンデッド)っぽいのだが、スキルからはどういう魔物か想像も付かない。

なのでとりあえず《亜空間》から【魔女の一撃】(スコップ)を取り出し、地面に突き立てた。


先手必勝。

ギーグが何かしでかす前に、何処かへ移動する前に《障壁》で囲い込む。

魔力圏を侵害しないように大き目に設定して密閉化。

更に《障壁》の中に火属性中級魔法の《炎陣(ムスペル)》を発動させ焼却処分。

《炎陣》の火力に《障壁》が軋むが、むしろ《障壁》の範囲狭めて圧縮し、威力を上げた。


生者・不死者にかかわらず、火というのは最大の脅威だ。

特に『殺し尽くす場合』においては継続ダメージという意味で不死者にも通用する優秀な属性だ。

それを強さがLv以外一切分からなかったので強めに掛けたのだが…。


「やりすぎた…灰すら残ってない…」


思わず呟く。

迅速に処理したいという思いからの攻撃だったが、結局敵がどんな魔物で何をするかも分からなかった。

発生していたであろう魔晶石まで当然のように焼失したらしく、まさしく理熾の言通り。

ともかく、周囲に魔物の気配が失せたことを確認し、安全圏である上空へと移動して血魔石の合図を送る。


しかし普段ならすぐに開かれる門が開かれない。

疑問に思いつつ暫く待つが、そんなことよりも目の前で起きている光景の方が理熾にとっては重要になってしまった。

何せ世界がひっくり返った(・・・・・・・)のだから。

お読みくださりありがとうございます。

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