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神様のおねがい  作者: もやしいため
第十一章:人生の迷子

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【幕間:神域】神様の課題3

理熾様が持ち帰ったポルンは異常とも言える成長を遂げていました。

あの場のポルン達はそれぞれが許容出来る瘴気を満遍なく身体に取り込み、不要物を吐き出していたのでしょう。

そうして純化し、更に魔物の肉を、魔力を、瘴気を食べ、純化を繰り返したはずです。

その結果があの膨大な数のポルンの群れ…。


その後理熾様が乱入して行ったのは壮絶な共食い。

瘴気という魔力の塊を食べて純化し、性能の上がったポルン達がです。

共食いによって起きる瘴気はありません。

その場は『ポルンの魔力』しか存在しませんから。

そしてポルン達は同一の魔力を取り込み、成長・純化を繰り返していきました。


その中の一つが大ポルンへと至った最初の核。

周囲のポルンを食らう速度が、自身の消化処理限界を越えた結果。

消化が追いつかず、吸収も止まらず、全てを吸い上げたのがあの大ポルンという訳です。

『あの場面では』という注釈は必要ですけれど。

通常の吸収合体は危機感で身を寄せ合って行いますからね。


そしてもう一つが、理熾様が連れ帰った異常に強くなったポルンです。

消化能力の範囲内で同族を食べ、純化と消化を繰り返した結果がアレです。

その核は周囲のポルンとは比較にならないほど強靭で、処理能力も保有する魔力も高い。

基本スキルは充実しているし、ユニークの【昇華】まで手に入れているのですから。

最早あれはポルンと呼べる種族ではないはずなんですが…まぁ、ポルン以外の呼び名が無いので仕方ありませんが。


そんなポルンを引き連れてあちこちを回れば、次々に雇い主が決まりました。

やはり私の理熾様は信頼性がバツグンですね!

それにしても不在(ガゼル)め…理熾様を脅すなんて何を考えているのでしょうか。

脅しに対する返答が『迷宮の存在示唆』というのですから、理熾様のサービス精神は旺盛すぎます。


ついでに以前討伐したリザードの肉をメインに、人を集めてBBQですか。

普段の理熾様とは思えないくらいの準備の無さは、子供らしくて少し可愛いものですね。

開催当日の朝、アルス領主(ギルバート)に顔を見せに行くあたりは全く子供らしくないですが。

そこへ主様が顔を出しました。


「招待されているのは錚々たる面子だな。

 それと【愚者の塊体】(ダミープロトコル)とはまた変わった装備(?)を手に入れたものだ」

「主様、この中に犯人は居ますか?」


「………まだ分かってなかったのか」

「はい…」


「居るぞ。

 もし分からなければ聞きに来い」


優しさなのか何なのか。

主様はそう言い置いて去っていきました。

目を凝らし、耳を澄ませても分かりません。

むしろそんな話がされる状況ではないので当たり前ではありますが。

あぁ、理熾様が無邪気(?)に肉にぱくついているのは癒されますね。


とりあえず新たに名前の上がった貴族達はボツということで良いのでしょうが…。

むしろ身内ばかりなので理解に苦しみます。

神功(フィリカ)や女将(セリナ)が絡む必要も無いですし…初めて見たサブマスター(スラヴァ・ベリト)の二人かも?

不在辺りなら、スラムのことでアルス領主と『仕事が被る』ので敵対もありえる?

団長(エリル)、副団長(ルルガ)も『犯罪者の減少』で役目が減るから?

逆にスラムで利益を上げていたならこの二人というのも十分にありえます。


ぐるぐると考えをめぐらすも、答えと思えるものには到達しません。

そんな気分で見ている先では理熾様が団長や副団長と話ししていました。


…ん?

あの団長の慌てようは何なんでしょうか…?

まさか犯人は…というか理熾様。

その手に持ってるのは火竜酒と言って、口から火が出るほど強いやつですよ?

度数で言えば60以上で、まさしく火が点くレベル。

加えて成分が身体を侵すように(・・・・・)強制的に吸収させるんですよ。

まぁ、竜種の血は毒性が強いので作用としては間違っていませんけれどね。

嗅がせて気付け薬にしたり、薬に少し混ぜて吸収を良くしたり、そもそも火竜酒自体にも『能力増加』としての薬効まであります。

そんなものをさっきから平気でかぷかぷ口をつけてますが…人の耐久力では流石に…。


そんなことを思っていると、理熾様の表情が強張りました。

そしてそのまま《転移門》を開いて神功(フィリカ)の店の庭へと団長を引き込んでしまいました。

え、まさか。

え、え、え…?


「…守護天使失格じゃないのか?」


はっとして視線を送ると主様が呆れ顔で私を、そして背後の理熾様達を見ています。

つまり犯人は団長でしたか…頭をめぐらせても結局答えは出ませんでした。

理由や事情はさっぱり分かりませんが、犯人だけはこれではっきりしました。

理熾様の答え合わせを聞いて理解に勤めたいと思います。


「にしても理熾は流石だな。

 いくら当事者で、そのことに頭を酷使していたとしても、隠された犯人を引き当てるなんてな」

「え、えぇ…理熾様ですから」


とは言うものの、私には理由も経緯も分かりません。

そして語られる内容は私も知っているものでしかありません。

ですが、それらは全て聞き流され、見ていても眼中には無かったことばかり。


要約すると本当に簡単な経緯です。

目的は人攫いの現行犯逮捕。

まずは馬鹿子爵(ガウス)に誘いの手紙を問題児の名前で送り反応を見ます。

理熾様との交渉決裂後の当日夜にその馬鹿子爵と団長が密談。

人攫いを使って三日後の襲撃を確約し、リーダーを置いて遠征へと出発。

馬鹿子爵の件は理熾様が全ての策を食い破って反対に条件を突きつけて解決。

現行犯で捕まえる予定だった人攫い達は、団長の思惑とは違った形でしたが全員捕縛されました。


領主の娘(セリナ)はそれとは完全に別件。

元伯爵(マルタ・レスター)の失脚のための策として準備されていました。

こちらは選別済みの人攫いを領主の娘にけしかけ、その真犯人として元伯爵を吊るし上げるという算段。

領主の娘を標的にしたのは一般人では失脚まで追い落とせないから。

後は報告を上げて許可を貰うだけという状況まで作った段階で遠征が入ってしまった。

遠征から戻ってから報告、実行の手筈が、一部の人攫いの勇み足で勝手に実行されたという顛末でした。


それぞれの事件は『アルスの平和』という点で共通で、『人攫い』という同じ手段が用いられました。

しかし目的に至るための理由と標的が違ったために関連性が入り組み、複雑でややこしくなっという訳です。

別々の事件として見れば迷宮入り。

合わせて見れば繋がる線が見え、手繰ったところで絡まっている。

それらの要素を分解(バラ)して整理して並び替え。

そうして浮かび上がった『妄想』は、犯人の何気ない言葉で形を現しました。

理熾様のように手持ちの情報がゼロからの出発では無理です。

予想される『可能性の総当り』によって得られる答えとか…頭を酷使しすぎです。


「にしても凄いな…アルスの準最高戦力相手に秒殺だぞ。

 いくら《亜空間》と《障壁》を併用した型破りの戦闘法とはいえ無茶をするものだ。

 まぁ、初見で対応出来る者は極一握りしか居ないだろうが…。


 あぁそうか…加えて火竜酒を飲んで能力値に補正が付いているからか。

 理熾の場合は元々高いから、外野から補正を掛けたら手が付けられんな」

「あ…そういうことなんですかこれ。

 普段と変わらないものだと思っていました」


「…そうか、そういえばまだ繋ぎ直してなかったのか」


主様、それは無い。

許可が下りるまで理熾様との回線(リンク)を外されている私の身にもなってください。

守護天使失格というか、ある意味降格処分中なんですけど。

そんな私の思いなど気にも留めずに観戦を続ける主様。


「しかも転がした上に【魔女の一撃】(スコップ)で土属性魔法使って器用に埋めてるしな。

 せっかく意識を即座に回復させていたのに、これでは『長時間寝かされてた』と勘違いするだろ」

「掘り返す道具(スコップ)で土属性ですからね…。

 高速戦闘からの違和感が凄まじいですが『物理的に埋めた』って勘違いしますよね」


主様の感想に同意しますが、私の心の内はそれどころではありません。

これほどまでに情報の取捨選択が下手くそなのかと、凹んでいる最中なのです。

もう少し私に優しい言葉を…。


「…いや待て、何でスコップが杖の役割を果たしてるんだ?」

「そういえば神功が天然古亀(アレムタートル)の核とか甲羅の粉末を嬉々として使って付与してたような…?」


「なるほど。

 『相克する魔法で相殺する』ということは、『どの属性魔法も使える』ということか。

 理熾の空間や重力、時間などの特殊魔法には対抗出来なくとも、自然属性であれば相殺する訳だからな。

 にしても複数属性を扱い、しかも練度によって引き出せる魔法が変わる【基本属性】とはな。

 なかなか無茶な特性を付与したものだ…そのせいか【結界】くらいしか入って無いみたいだぞ?」


主様は理熾様の持つスコップのステータスを覗き見ながらそんな感想を述べていきます。

確かにあの神功以外が作り、理熾様以外が持てば役立たずかもしれませんけどね。

あの装備はある意味で専用ですからね…。


「いえ、その辺はわざとみたいです。

 『汎用性』に重きを置いているのは理熾様にとっていつもの事ですから」

「元々属性魔法を持っていないからな。

 理熾からすれば『手札が増えた』と喜ぶ要素にしかならんだろ。

 そもそも杖(と呼んで良いかは微妙だが)を持っていなかったんだからな」


そんな考察を繰り広げていると



ドゴン!!



と身体の奥に響く重い音。

それは理熾様が地面を殴りつけたもの。

めり込む拳をゆっくりと上げながら告げた言葉を聞いて感じました。

理熾様は、日本とは違って『大人に期待している』という風に。


「さて、クーリア。

 団長が完全に復調したら理熾と繋ぎ直して構わんぞ」

「えっ!?」


「あからさまに嬉しそうだなお前」

「それはもう!

 ですが何故?

 いえ、今更ダメだと言っても繋ぎますけどね?!」


「相変わらずだな…まぁいい。

 懸念が晴れたからだよ。

 怒りで団長を殺すかとも思ったが、理熾は耐えた。

 であれば感情値が振り切れることも無いだろうし、ある程度制御も上手くなったはずだ」


えぇ、そうですとも!

理熾様は一分一秒過ぎるごとに成長していますからね!

頭の中でわーいわーいと浮かれてしまいます。

あぁ、ようやくですよ。

全く…手が出せないというのは本当に歯痒いものです。

早く顕現する隙を見付けなければ…。


「クーリア、今は顕現予定は無いから大人しくしていろ」

「…はい」


くぅ…逐一頭の中を見られているのでしょうか。

いえ、流石にそこまで暇ではありませんよね。

私が心の中で馬鹿にしたところできっと届くはずがありません。

だって『そこまで(・・・・)暇なはずがありません』からね!

そんなことを考えているとゴンと殴られました。


「遊んでないで仕事しろ」

「…はい」


どうやら調子に乗りすぎたようです。

結局心を読んでいたのかは闇のまま。

主様は別の用事で去っていきました。

いえ、私にとっては読まれても読まれてなくてもどちらでも構いませんよ?

どうせ被創造物ですし、やましいことなど何もありませんからね!

お読みくださりありがとうございます。

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