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神様のおねがい  作者: もやしいため
第三章:始まりの街
25/537

運動の後のいっぱい

※閲覧注意です。

食事前に読まないようお勧めいたします。


9/23訂正

森を歩くのは酷く難しかった。

森の奥へ入っている訳でも無いのに、足元が怪しい。

腐葉土なのか、ふわふわと地面がとても柔らかく耕した畑を歩いているように安定が悪い。

それに木の根がそこら辺に這っていて邪魔をし、高さはそこまで無いものの草や苔も生えている。

一歩踏み出す度に、足元の草を引きちぎり、苔を削り、木の根を避け、足元を踏みしめなければならない。

変な位置に足を置くと草の汁や苔のぬめりで足を滑らせて転がる羽目になる。


それだけでも十分悪路だというのに、木々の枝が視界を遮る。

勿論視界を遮るだけではなくて、身体や服が引っ掛かって進行の邪魔をする。

理熾の身長は高くはない…というより低いにも関わらず、枝が身体のあちこちに引っ掛かる。

生い茂る、というのはこういうことを言うのかもしれない。

掻き分けて進む原生林はまさに未踏の地という訳だ。


挙句の果てに周囲を警戒しながら移動しなければならない。

森の端っことはいえ、森には違いなく、何より『森歩きの訓練』で分け入っている。

敵襲が無いとは思っていても、だからといって警戒しない訳にはいかない。

実際に奇襲を受ける可能性もあるのだから。


そんな訳で気が付けば理熾は息を乱し、精神を磨耗させ、服を着ているのに体中擦り傷だらけだ。

たった数時間…街から出てきた門から別の門まで歩いただけなのに、だ。


 これは、きっつい…。

 何とか目標地点に着けたけども…普通に歩く何倍も時間が掛かる。

 何より気力・体力を使いすぎるよまったく…。


足腰にきているのか、膝がガクガクするし、精神を擦り減らしたためか物凄く眠い。

一刻も早く身体を休めたい。

森を抜けてギルドカードを見せて門をくぐり、宿に直行する。

宿屋に着くと日は既に翳っていた。


「リオ君!?

 何処行って来たの!」


第一声がそれ。

受付をしていたセリナが目を丸くして聞いてくる。

それはそうだろう。

昨日渡した服が一日経っただけでそこら辺がほつれているのだ。

襤褸切れとまでは言わないが、延びたり引っ掻いた後があったりする。

しかも足元は膝位まで泥と土と苔で斑点になっている。

理熾が女の子なら襲われた後といわれても納得する格好だ。


「うん、ちょっと訓練と思って出掛けてきました」


苦笑いしながら答える理熾。

当人もまさか散策するだけでこれだけぼろぼろになるとは思っていなかったからだ。

魔物と戦ったわけでもないのだから、難易度なんてたかが知れている。

それでも今の理熾ではこの様なのだ。


「訓練って…一体何してたのよ…」


一体何処で何をしてきたのか。

余りの惨状にセリナは唖然としながら聞いてくる。

この世界はとても身近に『死亡フラグ』が存在する。

外を歩けば事故や暴漢に遭い、怪我をすればそれが元で不自由な身体にもなる。

病気をすれば不治の病だと告知される可能性も高いし、街の外はそもそも『人のルール』が通用しない。

道具にしても安全機能は簡易的に付いているが、基本的に自己責任。

怪我をして改良もするが、『使い方が悪い』ということで訴え出ても大半が却下される。

それが嫌なら使わなければ良いのだ。

気を付けなければならないことなど山ほどあるのだ。


「森の端っこを散歩してきました」

「いや、森とか子供が行って良い場所じゃないのよ?

 討伐をメインとしているギルド員でも命を賭けて入るんだから」


あっさり言い放つ理熾に、慌てて言い募るセリナ。

そんな態度に理熾は逆にびっくりする。

思いの他森での散歩はレベルが高いらしい。

今更ながらに思い知る。


「えぇ…でも、ホント森の端っこですよ?

 5mも街側へ移動すれば野原に戻れるし…」

「うーん…奥に行かなければ確かに大丈夫かもしれないけれど、危険よ

 それに服もそんなにしちゃって…とにかくお風呂に入ってきなさい!」


叱られてしまった。

子供がこんな格好で危険地域を歩いて来たと言えば当然だろう。

討伐者になるつもりではあるというのは知っているだろうが、それとこれとは別である。

そもそも何の装備も…いや、『村人A』の装備で森に入るなどそれこそ狂気の沙汰なのだから。

これでは討伐者見習いなどではなく、単なる自殺志願者だ。


「ぅーすみません。

 ただ必要だと思ったので…次から気をつけます」

「なら、よし!

 さ、お風呂に入りに行ってね。

 靴とかの泥落とさないと部屋とか汚れちゃうから、むしろ今脱いで!」


すっぱりを言い切り、改めてお風呂を勧められる。

実際汚いのだから異論は無い。

まぁ、理熾的には今すぐ寝たいのだが。


「え、でも着替えとか…」

「私が取ってくるから、良いから入っちゃって。

 今日だけは洗濯も私がしてあげるから、さっさと入ってきなさい」


疲労がMAXの理熾には何とも嬉しく、優しいお言葉だった。

軽く感動する。

このままだと部屋に入った瞬間崩れ落ちるかもしれないと自分で考えていたので、この申し出はありがたかった。


「分かりました、すぐに入ってきます!」


さっさと風呂場に向かう。

服を脱ぎ、言われた場所に服を置く。

時間的には夕飯時。

広い湯船には理熾しか居ない。


お湯で泥だらけの身体を流してお風呂に入る。

今日あったことを思い出す。


 森は危険。いや、まぁ…そりゃそうだよね。

 そこは知ってたけど、セリナさんが取り乱すくらい危険だったんだなぁ…。

 魔物・魔獣の分布図見たけど、結構大丈夫そうだったのになぁ。


暖かいお湯に浸かっている為、思考もほんわかゆるく回る。

最低ランクの魔物・魔獣であれば普通の大人が対処できる程度。

とはいえ。

群れたり、個体差があるためわざわざ戦おうと思う者はまず居ない。

怪我をするリスクを考えると、その労力分を逃走に回した方が遥かに安全だからだ。

それにランクが上がればそれだけ危険度も増す。

相手にもよるが、『討伐者』というのはある意味で『人を辞める』ということを選ぶことになる。

戦力に特化していくという意味でだが。


 にしても、森は大変だなぁ。

 ちょっと歩くだけでこれなんだから…。

 【体術】持ってなかったら途中で倒れてたかもなぁ。


ぼんやり考える。

理熾の能力だけでは、たったアレだけの行程ですら到底踏破できなかったであろう。

【体術】を取って正解だと思う反面、無かった場合を考えると恐怖しかない。


 最後の方は大分意識しなくても歩けたから、次はもっと早く帰ってこれるかなぁ。


セリナには注意されたが、森歩きをやめる気は無かった。

これは理熾にとって今出来る最大限の訓練だからだ。


 まぁ、筋トレやるって手もあるんだけどねぇ…。


そんなことをも思うが、それではダメだと思ってもいる。

思い出すのはツヴァイだ。

やはり『使うための筋肉』と、『付けただけの筋肉』は違うことを認識する。

とはいえ非力な現代っ子の理熾。

筋トレをするだけでも格段に違うはずである。


 あそこまで鍛えなくても良いけど、近付いておかないと…。

 そうなるとどうしても『動くために筋肉をつける』必要が出てくる。

 それが今日の森歩きなんだけどさ。


今の理熾は、戦闘技術が無い。

【体術】も戦闘スキルの一つに違いないが、目的が違うのだから使わない方が良い。

正確には『頼らない』になるだろうが。

もし【体術】を活用するのなら【格闘術】も取るべきだろう。

結局【体術】は補助(ブースト)用であって攻撃用ではないのだから。


 うーん…オーソドックスに剣買うかなぁ?

 というより、まずは【体術】用に手袋とか手甲とか買った方が良いかなぁ。


装備に悩むのは手持ちが少ないからだ。

浮いては消える考えを、心のメモにしまいこむ。

いつか日の目を見ることはきっとある。

だからこそ、今の理熾が居るのだから。


そんなことを思いながら、身体をほぐしていく。

結構な時間を風呂に浸かっていたようで、他の客が入ってきた。

恐らく食事を取った後なのだろう。

一緒になるのも何となく嫌だった理熾は入れ替わりで出る。

「今なら食堂が開いてるんじゃないか」と期待して。


「って…そんなはず無いよね…」


夕食時というのはまさに『酒盛りの時間』なのだ。

なのに『ご飯だけ食べて終わり』というのは明日が早いとか、仕事があるとか、そういうことだろう。

この世界の住人の多くは酒好きなのだから。


食堂の端っこでいつも通りご飯を食べる。

本日の夕食は、かなり動いたので肉メインにしてみた。

日本で言うところのハンバーグ。

理熾の大好きなメニューの一つである。


大き目の皿の手前半分にメインとなる焼いただけのハンバーグが鎮座する。

どう考えても特盛りサイズに見えるのだが、これが普通らしい。

アルスの人たちはかなり肉食なのだろう。


そして皿の奥半分には、タレが3種類存在する。

それぞれ左から白、黒、赤でとろみがあるように見える。

理熾の常識では『赤は辛い』なのだが、スフィアではどうかは分からない。


メインの皿の他にも、朝食でお馴染みの具沢山スープ。

ついでにサラダと、フランスパンを輪切りにしたようなものがある。

どれをどう見ても美味しそうだ。


 いや、そもそも外れた事が無いんだから気にする必要も無いッ!

 いざ実食!


空腹スパイスが効いていたのは言うまでも無いのだが、それはそれ。

衝撃到来である。


 うっわぁ…なにこれ。

 このハンバーグ…肉質が良すぎる。

 歯応えのある(・・・・・・)ハンバーグってはじめてだよ!

 これにソース掛けるの勿体ないんだけど!!


ステーキ並みの歯応えなのに、噛み切ってしまえばトロッと解けていく。

「まずはノーマルで」とか思っていたのだが、肉自体がそもそも美味しい。

肉の味がしっかりしてるし、何より旨みというのか、甘いくらいに感じる。


次に白いソースを少し掛けてみる。

常識が無い理熾は、味が分からないので一度に掛けられないのだ。


 おぉぅ…これは!

 白いくせに辛い!!

 辛いのって赤か黒かだと思ってたのに盲点だった!


肉本来の甘みがあるため、辛過ぎず、ビリッと引き締まる感じだ。


次の黒いソースを掛けてみる。

これは酸っぱかった。

お酢のような感じなのだが、何故だか癖になる。

和食を思い出させる優しい味だ。


 あぁ…和食食べたいなぁ…ご飯とか。

 セリナさんに聞いてみたら出してくれるかな?


受けた衝撃が別方向へ意識を飛ばす。

今は目の前の食事が大事なのに。


最後の赤いソースを掛けてみた。

何故だか味がしない…いや、少し肉の旨みが際立った。


 何だろう…?

 オリーブオイルみたいなものかな?

 これ自体にそんなに味は無いけど引き立てる、的な?


とか考えるも、他の2種類とは断然微妙だった。

「何でこれを横に添えるんだろう…?」とか考えていると、セリナが理熾を見て一言。


「リオ君、赤いのって他のソースと混ぜて使うんだよ?

 多分壁に掛かってるメニュー表の横に書いてたと思うんだけど…」


と壁を指差す。

「ね?」と言って颯爽と給仕に戻っていった。

受付のセリナが手伝っているので、今日は何だかいつもより忙しいみたいだ。


セリナに教えて貰った通りに食べてみる。

白+赤、黒+赤をそれぞれ試したが、これはこれで美味すぎた。

最初に素焼き(プレーン)、その後に1種類ずつを経験しておいて良かったと思うくらいだ。


 最初から2種類合わせて食べてたら、味の差がきっと分からないよ!

 何これ超美味しい!!


赤いソースはやはり『引き立てるソース』だったらしい。

ソースが3種類に分かれているのは、店側の厚意のようだ。


 これは…自分の好きな味で食べられる!!

 自分の舌に合う組み合わせを考えられるという画期的な方法!!


ということだ。

決してソースの味の調整が面倒だというわけではない。

器が多ければそれだけ洗物も増えるのだから。


 もしかして…3つ混ぜるともっと?


辛味()酸味()旨味()の3種類を混ぜてみた。

結果は語るまでも無かった。

比率は3:1:1が理熾の好みだったとだけ語るに留めよう。


巨大だと思っていたハンバーグと、サラダ、スープ、パンは気が付けば無かった。

普段なら絶対に食べられない量だったのだが、あっさりと終わりが来てしまった。

もっと味わうべきだと後悔するほどに美味かった。


 この味を知らずにお酒を飲むなんて…大人は馬鹿だ…。


そんなことを心に思いながら、食堂を後にする。

余りの衝撃に時間の感覚が飛んでいたのだが、食事の時間は30分くらいだった。


「ごちそうさま。

 本当に美味しかったです」


そうセリナに伝えて幸せな顔をして部屋に戻る。

部屋では改めて自分のことについて考える時間となる。

ハンバーグ食べたいなぁと思いながら書きました。

理熾のような食生活にあこがれます。

お読み下さりありがとうございました。

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