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神様のおねがい  作者: もやしいため
第十章:アルス領お家騒動
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日用雑貨

挨拶を終えてみるとすることが無い。

他のギルド員や職員はオーガ討伐の緊急依頼で忙しいだろうし、普通の依頼は後回しにされると予想される。

それにガゼルに捕まる可能性を考えるとギルドへは行けない。


そこでギルバートのお願いを聞くという話が進んでいたことをふと思い出す。

バタバタと色々あったがために忘れていたが、『お願い』とはいえ依頼されたのだからやるべきだ。

それに主犯探しは暗礁に乗り上げたといっても過言ではなく、今は待ちの状態。

ならば身体を動かしている方が気分転換になるし、何より人のためになる。

時間は有効活用しなくてはいけない、ということで昼には少し早いが理熾はフィリカの店に行くことにした。


「フィリカさんこんにちは。

 昨日はありがとうございました」

「いらっしゃいリオ君。

 いや、こちらこそそんなに役に立てずにすまんな」


本当にすまなそうに答えるフィリカ。

理熾としては『居てくれた』というだけで十分に安心していた。

理熾が語る理論の筋道はある程度通っているものの、補足や修正は不可欠だ。

フィリカは理熾の話に対して単に相槌を打っているだけではなく、考えを纏める役目を担っている。


気にすべきところ、無視すべきところ。

考えが甘いところ、厳しすぎるところ。

むしろ『全員が理解すべきところ』や、『詳しい説明が必要なところ』の方が分かりやすいかもしれない。

理熾の推論は『妄想』であるが故に穴が多い。

フィリカ以外にまともについてこれる者は無く、そのために理解されない。

であれば作戦行動など成立せず、結果的に一人で動くかぽしゃるのみだ。

それらを『明確化する』のがフィリカの仕事だったと言っても良い。

ネーブルだけでは荷が重いのだ。


「そんなことないですよ。

 凄く助かりました」

「そうか?

 なら良かった」


という風にあっさりと話は終わってしまった。

年や性別は違うが二人はそれぞれを認めている。

だからそれ以上は必要ない。

そして時間がある今、それよりも少しだけ理熾は気になっていたことを聞いてみた。


「そういえばフィリカさん。

 フィリカさんのお店って全部特注品(オーダーメイド)だけなのかな?」

「いや?

 出来合い品も置いてあるが…あぁ、そうか。

 『店に置いて無い』からか」


とフィリカが納得する。

店には広い玄関と何も無い店内、そしてレジのあるカウンターしかない。

商品が置かれていないからこそ、初めて来た時に理熾は店かどうかを迷ったのだから。


「全部中に入れてある。

 昔何かの噂を聞きつけて店に来た馬鹿が居てな。

 弟子(ノルン)の装備を批評したんだ」


と昔話を始めた。

理熾としてもガランとした店内に違和感を感じていたので聞き入る。


「まぁ、売り物として出してあるんだから評価は聞き入れよう。

 弟子の作品とはいえ、私が『出して良い』と言った物だから責任も持とう。

 だがその馬鹿はあろう事か自分の持つ装備と比較して貶したんだ。


 …いや、そこまでは許せる。

 期待して私の店に来たんだし、確かにランクとしては劣る装備を展示してあるんだからな。

 だがそいつの技量はノルンの装備にすら見劣るんだ。

 なのにその時そいつが言ったのは「所詮は噂か。この程度の装備しか無いとはな」だぞ?

 ノルンや他の客の前で言って良い言葉ではないし、私は『私が認めた者』にしか装備を売らない。

 どんな噂を聞きつけたのか分からんが、その程度の者に売る装備は無いからな」


その時の事を思い出したのか、握り締める拳に力が入っている。

フィリカの価値観では装備はただの道具で、だからこそ使う者の技量が求められる。

『使いこなす』という最低条件すら満たさずに『この程度』という言葉を吐いたのだ。

それはフィリカが激怒するに値することだろう。


「以来私は装備を置かない。

 まず相手を確認して『売るかどうか』を先に判断する。

 礼儀を問うつもりは無いが驕る者に売る物など無いからな。


 基準は技量が低いならノルンの作品。

 ノルンが相手を気に入れば特注品。

 高いのならば私の既製品、気に入れば特注品という訳だ」

「ぇー…僕最初からフィリカさんの特注品だね?」


「それはもう。

 丹精込めて作ってるとも」

「おぉ…認められてる!」


「知らなかったのか。

 それはそれで私としては驚きだが…」

「そっか。

 だから色々と作ってくれるんだね」


と今更ながらに理熾は喜ぶ。

たまたまハイオークを倒せたが、そこに至るまでに相当のLvUPをしていた。

逆を返せば初めてこの場に来た理熾は特に強くは無かった。

いや、むしろ弱かったと言うべきだろう。

だというのに気に入られたのだから喜ぶしかない。

そしてそんな弱小の理熾に戦闘服と様々な武器を与えたフィリカに感謝しかない。


「あ、また何か頼みたいんだけどさ」

「おぉ、それは楽しみだ」


「うん。

 けど…他に武器が思い浮かばなくてさ。

 フィリカさんが作った武器見せて欲しいかなと」

「なるほど。

 武器の形や機能を見ての特注品か。

 あぁ、だからさっきの質問だったんだな」


「うん。

 でも、僕に合えば出来合い品でもいいんだよ?」

「違いない」


とフィリカは笑い、理熾を奥に招き入れる。

フィリカの後ろに付いて行くとそこは倉庫。

内部を《拡張空間》で広げてあるようで、色々な試作品や装備が所狭しと置かれていた。


「凄い…」

「ま、リオ君の《亜空間》には劣るがな。

 《拡張空間》は時間の流れは止まらないし、体積に制限が掛かる。

 多重掛けも出来るがコストが掛かるから広さもそう簡単には広がらない」


説明するフィリカではあるが、装備の数は相当だ。

目の前の剣だけで20本はあるし、斧、槍、棍、短剣、鞭、弓など雑多にある。

珍しいので言えば鉤爪付きの鎖や、フレイルのような連接棍や戦槌、大鎌なんてものもある。

そんな中、立てかけられていた一つに理熾の目が留まった。


「スコップ…?」


何処からどう見ても日本で言うところのスコップだった。

ただ片手で使うような物ではなく、1.2m程の長さで地面に突き立てる際に足で蹴り刺すでかい方だ。

武器や防具が立ち並ぶ中で土木作業用の工具(?)は異彩を放つとしか言いようが無く、理熾としても思わず固まってしまった次第である。


「あぁ、それな。

 そんなところにあるが武器と言う訳じゃない。

 ギルバートからの依頼で作ったスコップだ。

 土を掘り返す道具で「とにかく軽くて頑丈で安いものを大量に頼む」と言われてな」

「ちなみに素材は?」


「リオ君の剣と同じ紅蓮鉄鋼の心材に黒鎖鋼。

 柄は木材だが…精霊樹を使っている。

 土属性と相性が良いから、掘るのに良いんだよ」

「…これ、武器に使えたりしないかな?」


土を掘り返す道具と説明したはずなのにいきなりそんな変なことを言う。

今に始まったことではないので気にはせず、むしろ楽しげにフィリカは問う。


「ほぅ…どうやって使う気だ?」

「振り回せば斧とか鈍器だし、突けば槍として使えそう?」


「確かに出来なくは無い。

 射程は長くないが、その用途なら十分使えるだろうな」

「だよね?

 不意打ち用に一つ買おうかなぁ」


「だったら少し加工するか。

 このままじゃどうしても武器にはならないからな」

「あんまり武器らしくしちゃうと意味無いんだけど…?」


「その辺はこちらで何とかしよう」


とフィリカは気軽に請負う。

それに理熾は「じゃぁこういう風にもしてくれるかな?」とお願いを追加する。

形状に関しても少しだけ口出しすると、相変わらずフィリカは楽しそうに目を細める。

更に


「他に欲しいものはあるか?」

「鉤爪の付いた鎖とか、口が閉じるようになってる捕縛用のモノ。

 一応武器だから攻撃力があったほうが…いや、別に無くても良いか。

 あ、別に鎖じゃなくても良いよ。

 お任せで。

 そうだ、コボルトキングがあったからアレで作ってくれると嬉しいかな」


「なるほど、そちらも手配しておこう」


とあっさり請負う。

相変わらず物作りが楽しくて仕方ないらしい。

「他には?」と問い掛けるフィリカに苦笑しつつ、理熾は注文を重ねていく。


「何でも良い?」

「私が作れるモノならな」


「うん、超重い頑丈な板」

「サイズは?」


「大きくて重いほど良いかな。

 どうせなら熱の通りが良いヤツで凄く頑丈なの」

「何に使うんだそんなもの」


「とりあえずリザード肉でバーベキューは確実に。

 あ、だとするとそっちは網の方が良いのかな…?

 別に良いか。

 んー後は地面に突き立てて盾とか」

「日用品を武器に使ったり、武器を調理器具として使ったり。

 何と言うかリオ君は本当に道具を変な使い方するから面白いな」


と褒めているのかどうなのか微妙な言葉を投げかける。

だがフィリカからすると大絶賛だったりする。

こうして店の倉庫を見て、理熾の装備の種類が増えることが確定した。

しかしそのラインナップにスコップと板が入っている辺りが理熾らしかった。

お読み下さりありがとうございます。

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