↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様のおねがい  作者: もやしいため
第九章:口煩い貴族様

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

190/537

イルマ迷宮4

アクセス数が75万を越えました。

レビューも書いてもらえましたしホクホクです(‘‘


今後ともご拝読よろしくお願いします。

理熾が分かれた地点が見える場所まで戻ると、丁度ルーチェが止めを刺す瞬間だった。

どうやらEランクのパーティでもオーガを倒せるようで何よりである。

そこからはゆっくり歩いて戻ると、ダンが手を挙げて「おぉ、リオ君無事だったか」と声を掛けてきた。

倒したとはいえ激戦だったらしく、マドックが特にぐったりしている。

1体とはいえ、格上の魔物を一人で抱えるのはつらいだろう。

疲労だろうとは思うが、少し心配である。


「えぇ、何とか。

 回復薬は使わないんですか?」

「手持ちの数も心許無いからな。

 休憩で何とかなるならそれに越したことは無い」


と頬を掻きながら説明するダンは、マドックに少し申し訳なさそうに話す。

回復薬も即座に効果が出る訳ではない。

どうしてもタイムラグが発生してしまう。

だからこそ休憩時間に使うべきだし、戦闘を終えた直後なら特にだ。

少なくとも戦場で疲労困憊の状態を放置するなど理熾からすると考えられない。


「なるほど…。

 ならマドックさん、僕の回復薬使ってください」


とマドックに回復薬を差し出す。

防衛力のマドック、殲滅力のルーチェが機能しなくなったらこのパーティは瓦解する。

その他なら別に何とでもなるが、この二人だけは特に元気でなくてはいけない。


「ありがとう、リオ君。

 だが気持ちだけ貰っておくよ」


マドックは荒い息をしながらもそう答える。

子供からの施しは受けないということかもしれないが、そんな程度のことで理熾は意見を曲げない。

戦えないことが悪いのではなく、『戦う準備をしない』ということが悪いのだ。

安全圏ならばともかく、どれだけの危険があるか分からない場所でそんな悠長なことを言ってなどいられない。


「なら手持ちのものを使って下さい。

 貴方が崩れたら誰がパーティを守るんですか?」

「む…しかし…」


「例えば今この場に更にオーガが来たら戦えるんですか?

 襲撃を受けてから回復薬を使って、即座に前衛として立てるなら何も言いません。

 でもそうじゃないなら対策を取るべきです。

 少なくとも道具やお金で命は買えません。

 だったら道具やお金は惜しまずに使って、まず命を守るべきです」

「そうか…そうだな。

 使っておこう。

 忠告感謝するよ」


マドックは理熾の説得に応じた。

しかし他の面子は「あーあ」という感じで見ていた。

いくら回復薬が安くとも、そうそう安価で手に入るものではない。

休憩で何とかなるならそれに越したことは無いのは確かだ。

だから逆に理熾は苛立った。


「ダンさん。

 回復薬は均等割りしてますか?」

「いや、各自で用意しているが…」


「それって一番ダメージを受ける可能性が高いマドックさんが損じゃないですか?」


当然の指摘だろう。

彼らは単に『役割だから』と考えていたとしても、不公平には違いない。

マドックがそんなことを思っていたかは知らないが、余りにも酷いと理熾は思う。


「確かにな。

 だがアイリも魔法薬は自腹だからなぁ…」

「余計に問題ですよ。

 魔法士が魔力を気にして戦うのは当然です。

 けれどお金のためにパーティを危険に晒すのは違います。

 もしかしてレーンさんの矢も自腹ですか?」


「あ、あぁ…そうだが」

「装備はともかくとして消耗品が自腹ってどういうことですか!

 いや、パーティとしての力を上げる装備品も共有の財産じゃないの?!」


理熾の言い分にはパーティ全員が納得できるところはある。

しかし現実は違う。

報酬なんて雀の涙になることも少なくなく、そうなれば共有の財布を持つというのも難しい。

生活費はそれぞれなのだから、手元に残る資金が最初から少ないというのは危険なのだ。


「リオ君は分からないかもしれないが、それは理想論だ。

 残念ながら俺達にはそこまでの余裕は無いからな…」


と返答するダンの言葉に力は無い。

良かれと思ってやっている訳ではなく、仕方なくのようではある。

しかし出費の面で考えるなら本来なら一括で対応した方がいいに決まっている。

各自で買うよりもパーティとして買う方が量が多く、値引きも受けやすい。

共有財産という扱いならば使用の際には『仲間のため』を思い、躊躇いも少ない。


それに全員が持つ道具の量を把握していれば、最終的に消費量まで抑えられる。

全体の消費と出費が減ればその分個人に回せる金額が増える。

装備までを共有財産として考えれば、防御力、攻撃力の増加は消耗品費の減少と収入増加に繋がる。

結局はしっかりと全体管理さえ出来ていればそれが一番安く付くのだ。


それを行わないというのは何かしらの理由があるかもしれない。

マドックの扱いに少し頭にきたものの、理熾も一時的にしか組んでいない身である。

一緒の今はともかく、彼等のこれまでのやり方に口を挟むべきではない。


「いえ、勝手なことを言いました…すみません」


理熾はあっさりと謝る。

が、現状の解決には程遠い。

だから提案する。


「さっき『手持ちが心許ない』って言いましたよね?」

「ん?

 あぁ…そう言ったが…」


「それはお金が?

 それとも道具が?」

「とりあえず道具だな。

 ここじゃ金は役立たずだからな」


その返答に理熾は安堵する。

そして表情を緩めて


「なら僕が売りましょう」

『は?』


パーティ全員がぽかんとした顔で理熾を見る。

譲ろうとしたらさっきマドックに断れた。

であれば、買わせれば良いのだ。


「値段は相場通りで十分です」

「いや…それはありがたいが…。

 というかここで相場通り(・・・・)?

 この場に持ち込むだけでも相当な苦労なのにか?」


「えぇ、金額は相場通りで。

 防げる危険は出来る限り防ぐべきです。

 道具程度で回避できるなら、ばんばん避けましょう」


「…そんなに手持ちがあるのか?」

「大丈夫だと思いますが、皆さん何をいくつ必要ですか?」


一人ずつ聞いていく。

ダンは回復薬5つと剣を拭う布と水。

マドックは回復薬10。

ルーチェは回復薬3、剣を拭う布と水に研磨用の布。

レーンは回復薬2つ、矢を100本。

アイリは回復薬1つ、魔法薬1つである。


理熾からすると微々たる量であるため、即座に提供する。

値段は適当に付けた。

少なくともギルドで買うよりも安いはずである。


「…何処にこれほどの量を?」

「服に《空間拡張》の機能を持たせます。

 他にも色々仕込んでいますしね。

 それよりちゃんと道具は使ってください」


理熾は重ねて言う。

所詮道具は道具なのだ。

使ってこそ意味があり、抱えているだけでは荷物でしか無いのだ。

消耗品ならば余計に使った方が身軽にもなるのだから、さっさと使うべきだ。


「あぁ、ありがたく使わせてもらうよ」


ダンが代表して答える。

どうせ補充するのだから、何処で補充したところで同じだ。

それに迷宮内で道具が尽きるというのは本当に危ないから助かる。

荷物はその分増えるものの、その程度の不利益で危機が免れるなら安いものである。


「では気を取り直していくか」


ダンが先頭に立ち、歩を進める。

しかしふと理熾は地図を取り出して「そっちじゃなくてこっちですよ」と方向修正する。

彼らは現在地をマッピングもしているはずなのだが、何故か見当違いの方向へと進もうとしている。

確か今は奥へ向かうはずなのだが。


「あ…リオ君は地図を持っているのか?」

「……むしろ持ってないことに驚きです…」


間違った方角へ向かえばそれだけ探索時間が延び、危険度が増す。

今まではたまたま正解の方角へと歩いていたため気付かなかったが、地図が無いのは致命的だ。

理熾にとってのイルマ迷宮の5層はお遊びで、散歩がてらに歩ける難易度だ。

真面目な話、地図が無くとも丸一日走り回れば攻略できるだろう。

最悪全ての階層を探索して歩いても1週間程度で最下層に到達できる。

地図があれば実質3時間程度で何とかなるだろう。


そんな迷宮なのだが、それでも(・・・・)地図は買っている。

ガゼルも言っていたが、『どうせ探索するのだから』と地図を買わない者も居るということなのだろう。

理熾としては『たった500カラドで安全が買えるのに…』としか思えない話だ。

そんなこともダンが率いるこのパーティのちぐはぐさ加減が良く分からない一つの要因だ。

オーガ1体を疲労はするものの、負傷せずに倒せる実力なのに端々が甘い。

地図に関しても、道具の扱いやお金の管理についても理熾にはさっぱり理解できない。


先程ダンは金に関して「リオ君は分からないかもしれないが」と言った。

しかし理熾は特に金に困った経験があり『金の価値を知っている』からこそ、色々と使い道を考える。

『生きるのに必要な使い方』ではなく、『目の前の数日が良ければそれで良い』という刹那主義。

しかしその為に数日以降を犠牲にしていることに気付いていない。


「いやぁリオ君は何でも持っているな」


と笑うダンに、『こんなにも命を軽々しく使うのか』と理熾は全く笑えない。

石橋を叩いて渡るように頭をフル活用している理熾とは考え方の出発点が違うのだろう。

だから理熾は色々と諦めることにした。


「方角はずーっとあっち側です。

 森とかを突っ切りますが、一直線に進めます」


このパーティで危険回避など不可能だ。

幸いにも崖や山、沼や川などの通行困難地域は存在しない。

であれば最短距離で突っ切るのが一番リスクが少ないと考え、全ての危機を踏み越えることを理熾は選んだ。


「森か…アイリ、体力は大丈夫か?」

「うん、今のところは。

 もしかすると途中で背負ってって言うかもしれないけど」

「その時は俺が背負ってやるよ」

「ぇー…わたしもわたしもー」


ダン、アイリ、マドック、レーンの順番だ。

そんな状況をルーチェは呆れ顔で眺めている。

これが馴れ合いなら良いのだが、本当にマドックが背負い始めたら止めるしかない。

何度も言うようだがこの面子でマドックが動けなくなったら本気でヤバイのだ。

だというのに誰もがその自覚が無い。

マドックに守られていることが当たり前だということかもしれない。


ともかく、一番足の遅い魔法士のアイリに合わせて歩き進む。

残りの距離は3kmちょっと。

何事も無ければ2時間程度。


ところで。

理熾は行軍中に話すというのは馬鹿(危険)だと思っている。

緊張感を解すには良いかもしれないが、隠密性に欠けるし、何より体力を消耗する。

黙れとは言わないまでも、口数が多過ぎるというのはどうなんだろうと理熾は感じていた。

魔物が跋扈する場所で「私はここです!!」と触れ回っているのと同じなのだから。

と理熾が悶々と考える程度にはこのパーティは饒舌だった。


その後やはりというべきか、2度ほど交戦した。

オーガなどの危険種ではなく、単なるはぐれのウッドウルフとフォレストイーグル3体ほどだった。

特にフォレストイーグルは飛行タイプなのでどう戦うのか気になったのだが面白かった。

盾職のマドックが後衛に付き、前衛二人は牽制に徹する。

本命はレーンの弓だが当たらなくても良い。

レーンが狙われたところをマドックがハエ叩きの如く、盾で撃ち落したのだ。


後は前衛二人が叩き付けられたフォレストイーグルに止めを刺すという形。

相手に逃げられれば追わず…というか、追えないため放置する。

結果2体を倒して1体を逃がした形で戦闘は終わったが、こっそりリコが《亜空間》からの矢で仕留めたりしていた。

しかも当然のように《亜空間》に取り込んでおり、相変わらず賢い子である。


こうしてようやく最奥の少し手前まで到達した。

時刻は夕方6時くらい。

理熾だけの4層までと、パーティに参加した5層の攻略時間が同じくらい掛かっている。

そのことを思うとやはりこのパーティの速度に合わせるのは相当遅いのだろう。

いや、単独行動している異常に理熾が早すぎるだけだ。

徒歩で悪路を歩くのだから、速度としてはこのくらいが妥当だろう。


「ここが最奥か。

 後はボスが居るだけだな」


そこで理熾は「ボスが居るの?」と首を傾げた。

迷宮には確かにそういうものはお約束だろう。

だからといってそういうことが…


「何だリオ君は知らなかったのか?

 ボスは迷宮ランクの1つ上の魔物が現れるのは有名なんだが」

「そうなんですか…。

 ならDランクの魔物ですね。

 数とかも決まっているんですか?」


「いや、その時々にはなるな。

 強力なのを1体とか、逆に迷宮と同じランクを50体だとか。

 傾向的に1つ上のランクの魔物が守護する、ってだけだから」


となるとオーガクラスが出てくるはずである。

逆に考えるとこのパーティはこれまでボスクラスの敵(オーガ)を下していることになる。

ならば攻略したも同然かもしれない。

相手が一体ならば、という注釈は付くが。


「どっちが嫌ですか?」

「……どっちも嫌だな…。

 少し様子見てから帰るか決めるか」


「ですねー」


ここに来て『様子見』というのをようやくすることが出来た。

もう少し考えても良さそうなものだが…これまでの戦闘全て武器を持って待ち構えるだけである。

だから少しだけ理熾はほっとした。


 とりあえず身の丈に合う相手だと良いんだけどなぁ。

 でもここから引き返すとなると………うわぁ…超大変…。


とこれまでの行程を考えるとげんなりする。

ともかく。

この先を見てからでなければ話にならないのは確かだ。

ダンを先頭に理熾が殿を務め、ゆっくりと奥へと向かう。

少し先に開けた場所が見える。

そこが恐らく最後の戦いの場なのだろう。

理熾は気を引き締めて歩を進めた。

お読み下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。