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神様のおねがい  作者: もやしいため
第九章:口煩い貴族様

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請求金額

かなり危険な戦闘訓練から3日が経った。

アレだけ大騒ぎしたというのに、レモンは翌日にはあっさりと起き上がって動いていた。

理熾の感覚からすると大型トラックに轢かれて瀕死だった奴が、翌日には刀を振っていたのだから驚く。

ライムの腕にも、レモンの回復力にもだ。


回復薬は結局50本消費した。

足りて良かったのだが、買いすぎた感がある。

しかし理熾もスミレも相当な容量を持てるようになっている。

理熾とスミレが100本ずつ、残りは四人で割って持ってもらった。


魔法薬も同じくかなり残った。

そもそもライムは魔力が高いので回復量も多いためだ。

数本で足りたので、理熾とスミレで20ずつ、残りをライムに渡した。

「後は自力で調達してね」ということで消耗品の支給を終えた。


この3日間でいくつか進んだことがある。

まず一つがリザードの解体作業の終了だ。

全て終えたので改めて理熾はフィリカにテントを所望したが、実は現状でも問題は無い。

《転移門》が実用化されてしまったので、何処まで行っても日帰りできるからだ。


しかし他のパーティと一緒になることがあれば、そうとも限らない。

足並みを揃えないといけないだろうし、何より『見張り』という仕事の場合は帰れない。

それに理熾は自分の手札を隠していたい側だし、《亜空間》程度ならともかく《転移門》まで扱えるとなると希少性が高すぎる。

単なるスカウトなら断れば良いが最悪攫われかねない。


とはいえ理熾は当然のことながら、あの戦闘訓練を経てスミレも対応力は上がっている。

そう簡単にやり込められることは無いだろうが、それでも用心は必要との判断だ。

既に何度も使用しているのだが。


そして何より、全員の装備が揃った。

理熾が願い出た小型投剣はやはり矢の速度よりも速く重く貫通力が高い。

しかし小さいせいで安定的に飛ぶことが難しく、狙い撃てる距離は100mほどだった。

ちなみに100m程なら速度も威力も申し分ない。

口径も小さい為、銃器のような感覚で扱える。

お手軽というのも間違っているかもしれないが、威嚇と共に敵を壁などに縫い付けるのに役立ちそうだ。


特別製の矢はリザードの骨から削り出した。

強靭で柔軟性があり、そのくせ軽い。

鏃は紅蓮鉄鋼を施しており、短距離は弓の特性の【過速】(ダッシュ)、遠距離は矢の特性の【加速】(アクセル)という悪質な物に仕上がった。

鏃部分は小さいのでそれ程特性の恩恵が受けられないのは残念ではあるものの、強度を考えると十二分な品物だ。

理熾はそれを500本を受け取り、理熾とスミレは各自50本ずつ発射待機状態で《亜空間》に保管中である。

ちなみに矢は回収できるかが分からないので、使い捨てを覚悟しなくてはならない。

そう簡単に材料が手に入るかが分からないので、その辺は気をつけろとフィリカに言われている。


ライムのメイスはお馴染み、跳飛石(ちょうひせき)、荷重硝(かじゅうしょう)を施した金属の塊。

芯にコボルトキングの骨を使っていて、パッシブの【堅牢】とアクティブの【凶刃】が扱える。

その骨にはビッチリと魔術回路を刻んであるらしい。

杖の代わりに服に銀鎖糸(ぎんさし)を施したのに、しっかりと発動媒体としても機能するようになっている。

流石に変換効率とか増幅率は本家の杖には及ばないらしいが。


ハッサクの暗器はかなり複雑だった。

短剣を初めとする、小型の武器と投擲武器が渡されただけだった。

ハッサクとしては十分だったが、どうすればいいのか迷っているとフィリカがささっと服に仕込み始める。

訳も分からずに首を傾げているとようやく説明された。


そもそも服には、《亜空間》の亜種である《拡張空間》が施されているらしい。

《拡張空間》は《亜空間》の劣化魔法であり、それ程大きな容量を持たないが特性としては珍しくは無い。

特性付きの荷物袋にはまず確実についているような魔法なのだ。


その《拡張空間》と服のポケットをリンクさせていったのだ。

後は暗器として必要な物を《拡張空間》に放り込めば良いとのこと。

任意のポケットから、《拡張空間》にアクセスし、暗器を取り出せるという訳だ。

まさかハッサクも『暗器』が服の機能(・・・・)だとは思わずに驚いた。

そりゃ後回しにされるはずである。


スミレの盾も凄い。

血魔石(ブラッディコア)を盾の中心に置いて黒鎖鋼を心材に、紅蓮鉄鋼を施すという理熾の斧と同じ作り。

紅蓮鉄鋼には魔術回路が刻まれており、発動媒体として機能する上に防御用の術式も刻まれてある。

その表面にリザードの皮と鱗を張ってあり、小さな牙を立たせて作ってある。

近接戦闘をするわけではないが、盾で相手を押すだけで十分な負傷を与えられるようにしてあるのだ。

こっそり特性で【竜鱗】が発動できるようにしてあるらしいので、ほとんどの攻撃は無効化できるだろう。


ローブについては、ライムに施したような銀鎖糸を施したものだ。

華美ではないものの恐ろしく豪華で、とても戦闘用とは思えない仕上がりだ。

防御術式に加えて増幅・変換・収斂の効率が飛躍的に上がるように作られている。


最後にノルンが作成した試作品。

大きさは小型投剣(5cm)よりも少し大きい7cm。

十分実用できる大きさなのだが、残念ながら備蓄の交換比率が悪い。

大体3割くらいになってしまうので、要研究といったところか。

ちなみに備蓄用の器として1つは血魔石で、5つほど蓄魔石を用意してもらった。

理熾の依頼通り、蓄魔石は安いので助かること請け合いだ。


ちなみに普通に蓄魔石に魔力を込めるのは割と簡単。

血魔石にも言えることなのだが、取り出すことも取り出した状態で使用することも出来る。

簡単とは言わないまでも、技術的には可能なのだ。

しかし蓄魔石に込められた魔力を、所有者に返すというのが物凄く難しい。

発電機から、電池へ入れることは出来ても、電池から発電機に電力を回すと言うの無理だ。

意味合い的には多分違うのだが、理熾はそういう風に受け取っている。


理熾が受け取った時、ノルンが告げた「これで頭痛の種が無くなる…」という一言が理熾には印象的だ。

残念ながら今後は交換比率などで頭を痛めてもらう予定である。

量産するなら最低でも今の倍の比率でなければ困る。

そうじゃなかったら単にストックしている方が効率的なのだから。


その時に理熾が「そういえば直接魔石に出来ないのかな?」と質問した。

魔石精製のプロセスは至ってシンプルだ。

魔力を極限まで凝縮し、結晶化させたものが魔石である。

つまりその凝縮・結晶化さえ効率的に行えればいくらでも量産できるということだ。

しかしそう簡単にはいかず、結晶化させる労力に見合うだけの魔力が調達できないのだ。

例えば1万の魔力で1の魔石を作っても意味が無いという訳だ。


一応フィリカも面白そうな題材なので考えてみるらしいが、交換比率はそう簡単には改善されないとのこと。

でなければもっと前に何とかなっている。

とりあえず装備が揃ったのを機に、改めて支払いの話を持ち出した。

手持ちは色々使って現在40万カラドしかない。

確か数日前は50万カラド以上持っていたのだが仕方ない。

多くの物を作ってもらった為、一括で払えるかどうかが怪しく実は背中を冷や汗が伝っていた。


「支払い?

 あぁ、リオ君の分だけで大丈夫だぞ。

 ただまぁ、それでも10万カラドなんだがな」

「え?」


何でそういう話になったのか理熾にはさっぱり分からない。

とりあえず即金で10万カラドを支払いながら理由を聞くと


「ちょっと前に盗賊団(ネーブル達)の報酬の話をしただろう?」

「うん、二ヶ月の宿泊と10万カラドだっけ?」


「その通りだ。

 そしてその時の契約書がここにある」

「え゛!?

 わざわざそこまで!?」


差し出された2枚の契約書を見る。

書かれてある内容は大変シンプルだった。

共に『リオが持つ奴隷に対し、衣食住の提供を二か月分行う』ということが明記されている。

1枚目がスミレ以外で、2枚目がスミレを対象とした契約だ。

ちなみに10万カラドに関しては内密な話なので書面には入れなかったようだ。

しかし


「…ねぇ、これってヤバくない?」

「おぉ、リオ君は一発で見抜いたか」


「そりゃ今まさにこの話してるんだからさ…。

 この衣食住の『衣』って、多分『装備含む』って意味だよね?

 『身に着けるもの』って読めば何を作ったところでギルバートさん持ちじゃない?」

「正解。

 流石にこのことを知ってたらリオ君も依頼しなかっただろう?

 というか依頼しても頑として支払っただろうな。

 だが今回に関しては既に作っているし、契約もこの通りだ。

 リオ君が思う必要不可欠な分だけの請求しか無いはずだ。

 今後の支払いはリオ君が持つとしても、この『初期投資分』くらいはギルバートに払わせてやれ」


とさっさとまとめてしまう。

ちなみに金額は50万カラドを請求しようと考えているフィリカ。

当然理熾には金額は伏せるつもりだ。


内訳は

ネーブル:服1万、剣2万の3万

ハッサク:服1万、暗器3万の4万

ライム:服1万、メイス1万、銀鎖糸刺繍3万の5万

レモン:服1万、刀2本20万の21万

スミレ:服10万、盾3万、ローブ3万、血魔石投剣1万、小型投剣0.25万の17.25万


と、これらを計算すると50.25万になるがその辺はおまけである。

こうして見るとレモンとスミレがいかに群を抜いているかが分かる。

それぞれは満足しているので特に不満は無いだろうが。


理熾は「うわぁ…」と崩れ落ちる。

調子に乗ってまたも人に迷惑を掛けている感が否めない。

が、もう手遅れだ。

後はギルバートが負担無く支払えるように切に願うのみである。

お読み下さりありがとうございました。

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