エピローグ
書いてみたかったミステリーと名乗るのも烏滸がましいものです。楽しんでくれると幸いです。
目が覚める。
見慣れた天井が写る。
ベットから身を起こし窓を開ける。見慣れた景色にそれなりに澄んだ空気が頬を撫でる。今日が休みであればとても素晴らしい朝であるが、残念ながらこれからとても憂鬱な仕事である。
そんなことを考えながら窓の外を眺める。早朝のためまばらに人が行き交う道。これから店を開けるのであろう、気だるげに動いている40代ほどの女性の姿が見える。今からどこかに向かうのであろう冒険者たちや、今しがた帰ってきたであろう疲れ切ったような冒険者の姿。
これもいつも通りだ、見慣れた景色だ。見慣れたくないが。
次に目覚めるときは、我が故郷、日本にいることを願って今日もまた、ため息をつきながら仕事の準備をする。
私はレナン•ハース。28歳。元日本人。職業は、冒険者ギルドの調査員である。
まず私自身の紹介をしよう。レナン•ハース。28歳。男。元日本人で、いわゆる転生者である。と言っても、よくあるようなオレサイキョーヤッター、とかにはならず、今は、冒険者ギルドの調査員として働いている。
転生した時は自分が最強で、世界を救ったり、ハーレムを築き上げたりしたいと考えていた。しかし、自分にはそんな才能がないことを昔の冒険者時代に思い知らされた。もう命をかけるのは勘弁したいのだ。できる限り安全に、普通の生活を送りたい。転生者であってもそう願うことはおかしくない。結局、転生してうまくいくことなどほとんどないのだ。ただ他の人より少し長く生きているからと言って、戦えるわけではないし、自分の命は惜しいものだ。
そんな軟弱転生者である私が今、住んでいるこの街はシャールメン王国領の三大都市の一つ、都市ベラルである。
なぜ三大都市の一つなのか。それはこの都市には他の都市や街よりも冒険者が多く在留しているからである。この都市には他の街や村、他国からも冒険者が集まる、まさに冒険者の街と言ったところだ。多くの冒険者がいるということは、素材や情報も多く流通し、それらを使って武器や防具、日用品や薬、娯楽品など様々なものがここで作られ売られている。商業の面から見てもとても発展している。それ以外にも様々なお店があり、宿や温泉、賭場、劇場、さらには風俗店などこの街には一通りのものは揃っているため、冒険者ではなくてもこの街に滞在するものは多い。
私はそんな街の冒険者ギルドで調査員として六年ほど働いている。仕事にも慣れ、後輩育成も行なっている頃だ。そんな六年働いている私の仕事は、大体が雑務であるが。
調査員として仕事することはあまりない。しかし、”何か”が起きたとき、私のような調査員に仕事が降ってくる。しかし、何かが起こることはほぼないので、大抵は普通の職員と変わらない。
個人的には雑務のほうが楽なため、そんな面倒な事が起こらないことを願う。あぁ、今日も面倒なことが起こりませんように。多分無駄だが。
「誰に説明してるんだか…」
少し考えすぎた。まぁでも仕方がない。この仕事、とてもじゃないが面倒なのだ。冒険者ギルドの職員は、そこまで良い仕事じゃない。残業は多いし、休日出勤しなければならないことも多い。挙げ句の果てには、他の職員が起こした問題なのに、なぜか受付の職員が謝ったりなど。面倒なお客様の対応もある。その割にはお金はあまりもらえない。私は六年という微妙な念が確か働いていない身ではあるが、これらが嫌で辞めていく人も多く見た。
それでも続ける人は多い。なぜかって?単純な話、安定するからだ。命の危機もないし、余程のミスをしなければクビが飛ぶ心配もない。収入が不安定になることもない。波風立たない生き方を願う人にとっては、夢のような職業である。
しかし、考えすぎた。ご飯を食べる時間もない。とりあえず職場に向かおう。飯は昼に食べればいい。朝を抜いたぐらいでは死ぬことはない。ちょっとお腹が空いている方が頭も回る。
そんなことを考えながら支度する。
なんでもない一日が始まる。雑務をこなし、同僚と昼飯を食べ、定時に帰る(多分)そんないつも通りの1日を送る。
今日はそのつもりだった。ただ何もない平和な日常というものは続かないものである。




