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昭和のヒーローは、誰にも知られず引退する  作者: 桃野産毛
序章

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第6話 今起きている異変 ~伍~

 ヒロセは暗闇で目を覚ました。

急いで自分の身体をまさぐる。

発信器のほとんどが外されていた。


「……さすがにココは残ったか」


 ヒロセの奥歯に被せた発信器だけ、残っていた。

ヒロセはほっと胸を撫で下ろす。


「しかし、暗いな。

目がなれない。

本当に暗闇だ」


 自分の手すら見えない程の闇。

だが。


「人の気配は……。

あるな。

おーい!

誰かいるか?」


 声はあまり反響しない。

そこそこの広さがあるようだ。


「……い、いますよ」


 女性の声だ。


「手品だろ?

ココから出してくれ」


 ヒロセは一応、

まだ詳しく知らないフリを続けることにした。


「わ、私も!

手品で。

気付いたら、ここに」

「俺もだ」

「私も」


 どうやらそこらに人がいるようだ。

声は三人。

女性一人、男性二人。

行方不明者の数と一致する。


「真っ暗ですね。

明かりはないんですか?」

「月が出たら見えるよ」

「そうそう。

昼間は暗いんだ」


 男性二人はそう応えた。


「あ、あの。

足かせがありますから、

立ち上がるときは気をつけてください」


 女性の声でそう聞こえた。

ヒロセは手で足首辺りをさする。

右足首に何か付いている。


「立てはしますが、

二歩、三歩歩いたら転けてしまいます」


 足かせに繋がった鎖らしきものを手探りで確認した。

どうやら、床に繋がっている。

簡単には外せそうにない。

 その床から筒のようなものが出ている。


「……なんだこれ?」

「それ、たぶんトイレです。

足枷の先にありますよね。

あまり触ると汚いかもです」


 ヒロセは飛び退くように筒から離れた。


「……後、夜になると、来ます」

「来ますって、

何が来るんですか?」


 ヒロセは女性の声に聞き返した。


「『アイツら』です」


 ヒロセは怪訝な顔で声のした方を見た。

一方。


「まだ見つからないのか?」


 ミズノは焦りを隠せなくなってきた。

ヒロセが消されて、

ピエロたちのあとも追えなかった。

後は、ヒロセの持っている発信器の信号を探すのみ。


「ほとんどの発信器の信号が日本各地にあります。

恐らく、やつらはヒロセさんの発信器を見つけて、

ばらまいたんですよ。

姑息な真似を」


 ハマダは眼鏡を上げながら、

パソコンに向かってなにかを操作し続けている。


「……ほとんどの発信器が見つけられたなら、

ヒロセの身体には発信器がないのか?」

「分かりません。

さすがに、状況までたどれませんから。

 こうなるなら、

身体に埋め込むタイプの発信器も用意するべきだった」


 ミズノとハマダはモニタに写し出された日本地図をにらむ。

その地図上には赤い点が複数あり、

全てヒロセが持っていった発信器の信号だった。


「お二人とも、落ち着いて。

なら、見つかりづらい発信器の信号を探すのです」


 二人の後ろから、

キャップが歩いてきてそう言った。


「見つかりづらい、ですか?」

「えぇ。

発信器が見つかって、奪われた。

なら、奪われる恐れの少ない発信器は、

まだヒロセ君のところにあるかも知れません」


 ミズノは、ハマダと顔を見合わせた。

ハマダはなにかを思い出したように息を飲み、

パソコンの操作をする。

すると、地図上の赤い点の一つが明るく強く光る。


「ここです。

これは、ヒロセさんの奥歯に仕込んだ発信器の信号です」

「そんなものを仕込んだのか?」

「歯に被せるタイプのもので、

パッと見ては分からない代物です。

 ただ、脆いので使い捨てです。

ヒロセさんには、

噛み砕かないよう注意してもらってます」


 日本地図の赤い点がほとんど消えて、

その一つだけになる。

その点は、S県のとなりの県に付いていた。


「急いでここに向かおう。

三班もここに急行してもらって、

二班で細かく捜索だ。

 もう日が暮れてしまう。

急ぐぞ」


 ミズノの指示に頷いたハマダは、

各所にその指示を伝えた。

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