閑話 続けなければ
防衛軍、特捜隊はかつてない緊張感に包まれていた。
異世界人の潜伏していると見られる隠れ家を見つけたが、
包囲、突入に二の足を踏んでいる。
「今すぐ出た方がいいのに」
オオゾノがそう呟く。
新人の彼女だけじゃない。
一班の皆もそう思っているが。
「三班が出られない。
ディメンション・エックスはあるが、
DX機はどれも出せない」
航空機の発進の許可が下りなかった。
理由は単純に時間が足りなかった。
「ごめんなさい。
警察は急いで用意してくれたんだけど……。
私がもっと早く手配できれば」
ニカイドウはベレー帽を脱いで、皆に謝罪する。
「仕方がありませんよ。
今日突然、匿名のたれ込みがあって、
そこに異世界人がいることが分かったんです。
可能な限り迅速な手配であることは、
我々も理解してます」
ミズノがフォローする。
いつもなら、
一班と二班で大まかに隠れ家の目星を付けて、
その付近について事前に航空機の発信許可をとる。
そして、その地域の警察にも自衛隊にも協力を依頼する。
だが、今回は本当に何も見つからず。
住人からたれ込みで事態が急展開した。
そのため、各所への根回しが足らず、
全員が足踏みをしている。
「これは、我々にも非があるので」
ミズノがうつむき加減でそう付け足した。
「本部は、上層部は何を考えてるんだ?」
シマザキがそう呟く。
今までなら、
こんなセリフは誰の口からも出てこなかった。
そして、暗黙のうちに禁句となっていた一言が、
とうとう彼の口からこぼれた。
「……ヒロセが、いりゃぁな」
その一言は特捜隊に重くのしかかる。
今までどれだけ彼に頼りきっていたか。
そして、そんな彼に防衛軍はどんな仕打ちをしたのか。
もう、戻ってほしいなんて誰も言えない。
言える権利がない。
特に、ミズノとセキグチは。
二人は深くうつむく。




