↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
昭和のヒーローは、誰にも知られず引退する  作者: 桃野産毛
終章 愛

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

111/116

第95話 愛別離苦(あいべつりく)

●ゼータ サイド●


 完全勝利だといえる。

過去我々『次元の守護者』が何度も苦汁を辛酸を舐めさせられた、

『ビジョン』が投降した。

リーダー格を捕らえることに成功した。


 犠牲者なく。


「犠牲者、なく……」


 涙が止まらない。

こんなはずじゃなかった。

ヒロセ君はもっと自由で、

もっと幸せになってくれるはずだった。

 司令官殿が、私の肩に手を置く。


「決して、ヒロセ君は犠牲者じゃない。

彼は今も戦い続けてくれている。

我々に、君たちに託して、戦い続けてくれている。

 だから、泣くな。

前を向け、ゼータ君

我々『次元の守護者』も総力を上げて、

ヒロセ君を解放する方法を探す」


 嗚咽すら出ない。

流れた涙が私の身体の綿に染み渡る。


「ヒロセ君は……、お正月に……、

くり……、栗きんとんを……食べるんです!

……食べる……約束を、……約束を……!」


 もう、私には報告をする気力も失くなった。


「お……お婆様……と!

約束を……、約束を……!」


 私はうわごとのように、約束、と繰り返す。

ウチムラさんが、私に近づいて来た。


「ゼータ、落ち着いて。

師匠は生きてる。

まだ生きてるんだ」

「わがっでる!

でも! でも!

私たちと君たちは生きる時間軸が違う!

 君たちの十年は!

私たちにとっては!

まばたきするくらい一瞬なんだよ!

彼を解放するのに、

一体どれだけ時間がかかるか!

 私のせいで!

私のせいで!」


 もう頭が回らない。

私のせいだ。

ヒロセ君がセキグチさんに裏切られ、

防衛軍を追われたのも。

せっかく仲間ができたのに、

結局ヒロセ君を頼らざるおえなかったのも。


 全て私のせいだ。


「……やり直そう」


 ミアさんが、唐突にそう言い出した。


「何言って……」

「今なら行ける!

私の中の力が、可能性を見つけた!

戻れるよ!」

「待った! 待った!

ミア、戻ってもどうやってヒロセさんを助ける?

 このまま戻っても、

同じ方法じゃないと『ビジョン』のリーダーは捕まらない」


 ウチムラさんがそう言って制止した。

ムラマツさんが質問する。


「やり直す?

どう言うことだ?」

「俺とミアは、

異世界の生物に襲われて何万回も『同じ一日』をループしたんです。

それをヒロセさんとゼータに助けてもらって、

仲間になったんです。

 その時に偶然、

ミアにもその生物の能力が使えるようになったんです。

変身してないとダメとか、

発動条件がたくさんあって厳しいみたいですけど」


 そうだ。

やり直しの力。

しかし、

解決方法もなく戻っても同じ結果にしかならない。

その場の全員が頭を抱えて唸る。

 マサヤが提案する。


「リーダーの憑依してる人、

セキグチさんだっけ?

その人からリーダーを引き出してしまえれば解決か?」

「ダメだよ。

それだと他の人に憑依する。

戦艦の大船団も呼ばれるかもしれない」


 ハヤタさんがミアさんに質問する。


「戻るって、どんな感じッスか?」

「意識だけ戻るんだけど、

たぶん私とウチムラしか記憶を引き継げないんだ。

 後、そんなにたくさん戻せない。

せいぜい一時間前とか」

「実働は二人だけ。

約一時間前だったら、

戦艦にヒロセ君とムラマツさん、ハヤタさんが乗り込んだ辺り。

 私もこの記憶は忘れるだろうから、

どうにかミアさんとウチムラさんで対処できるようにしないと」


 私はそう言って唸る。

司令官殿が腕を上げた。


「わかってることを挙げていこう。

 一つ、

憑依は『ビジョン』が相手に触れていないとできない。

二つ、

憑依は憑依している『ビジョン』が解除しないと、

解除できない。

三つ、

憑依された人が死ぬと、

憑依している『ビジョン』も死亡する」


 ウチムラが補足する。


「四つ、

『ビジョン』のリーダーが死ぬと、

戦艦の大船団が攻めてくる。

五つ、

あの歌が効いてる『ビジョン』と効かないのがいる」


 ムラマツさんが付け足す。


「五つ目を訂正するけど、

自由意思はあっても指示があった以前の状態が良かった、

って人たちがいたんだよ。

歌が効いてない訳じゃないみたい」


 ハヤタさんが気付いたことを言う。


「先に他の『ビジョン』の人に憑依されてたら、

後から憑依できないッスか?」

「……捕虜に聞いてみよう」


 司令官殿は、

他の仲間に調書を持ってくるよう指示した。

すぐに届いた調書を見て、

司令官殿はうなずく。


「できないようだ。

憑依は一人に一人だけらしい。

後から憑依しようとした『ビジョン』は、

元いた身体からも弾き出されるそうだ」

「それだ!

先に捕虜になってくれる『ビジョン』の誰かに協力してもらって、

ヒロセ君の中に潜んでおいて」


 私はテンションを上げて言うが、

司令官殿に止められる。


「残念だが、

対象の身体に触れた時点で先に他の『ビジョン』がいるか調べるそうだ」

「付け足すと、

ヒロセさんの身体に入ったら呼吸できないんじゃないの?」


 ウチムラさんの言う通り、

ヒロセ君の身体に他の『ビジョン』の協力者を憑依させても、

ヒロセ君の身体をコントロールできずに終わってしまう。


「憑依してもらいつつ、

意識を共存させられないのか?」


 ジナコさんがそう言った。

司令官殿がまた資料に目を落とす。


「それはできないらしい。

君たちとゼータ君のように波長が合う者同士ならできるらしいが、

今からそれを調べる時間が惜しい。

今も時間を使えば使うほど、

時間が戻るタイミングが変わるぞ?」


 確かに、司令官殿の言う通りだ。

急がなければ、

ヒロセ君の身体を奪われる時点に戻れない。


「あ!

そうだ!

そうッス!」


 ハヤタさんが何かを思い出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。