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il pazzle  作者: 橘颯
4/5

No.301~No.400

301. 紡ぎ歌解けた


から、から。

風に合わせて、車輪が回る。

しゃら、しゃら。

鈴を付けた糸車が廻る。

昔はこうして、風を績ぎながら歌ったものだ。

店先でコトリさんが回す。

鳥達に風を教える為にな。

からり、しゃら。

今はもう必要無いがね。

お店の鳥さん達は、カゴの中で静かに空を見てる。


302. 小鳥のスウプ


潰した方が良いかね。

コトリの問いに、一つ頷いた。

微かな羽が風に掠われて行く間に、頭を取られ、足を切られ。

そうして出来た『食材』は今、鍋の中。

琥珀色のスウプで煮られている。

机の隅には君に抱かれた、『食材』に似た人形。

硝子玉の目がスウプ皿を見詰めている。


303. 薔薇の下


あの子のベッドが無くなってた。

少し汚れてたからね。

新しいのにしようと思って。

そう言って、パパが小さなクッションをくれる。

キレイなバラが刺繍されてる、まあるいふかふかのクッション。

ソラの為に作ったんだよ、って。

赤い縫い目の間から、白い羽が一本、はみ出てる。


304. 鳴り止まない鐘音


モビィは今日も元気に『ガラクタ』を吐き出してる。

毎日たくさん落ちて来るの。

『落ちて』きたモノは、パパや『工房』のみんなが持って来たりもするけど、その内『ゴミ箱』は一杯になっちゃわないのかしら。

それとも、一杯にならないから、みんな捨ててるのかしら。


305. 本当の嘘


鳥占と言う物は鳥が箱に入った札を抜き、それを問いの答えとするのです。

私達を占ったのは白い鳩でした。

この子の様な。

ジィモさんがソラを撫でる。

大概はこじ付けですがね。

信じれば本当になるんですよ。

そっとモビィを見上げるジィモさん。

何を占ったのかは訊けなかった。


306. 大鋸屑詰めの心臟


縫い包みだから、ソラなのかしらね。

『工房』の隅、白い小鳥と戯れる君を遠目に、リィスが呟く。

知ってるかしら。

あの子の世界では空[ソラ]、って書いてカラ、とも読むらしいわ。

空っぽって意味。

其処まで考えてはいないと思うけれど。

慈母めいた微笑みを浮べて。


307. 忘れじ


此処で新聞を読むのは余程の物好きだ。

『落物』なら未だ読み物として娯しめるから、解らないでも無い。

其れに引き換え、街の新聞は読むだけ無駄。

噂話を聞いた方が早い。

そうユウ自身も云ってた癖に。

習慣だか知らねぇが、善く飽きねぇもんだ。

其れとも。

戻っても良い様にか。


308. アタラクシア


夜半にふと、目を覚ます。

夢に起こされた訳でも無く。

物音がした訳でも無い。

唯、訳も無く意識が覚めた。

淡く暈けた視界に映るのは、穏やかに眠る君の横顔。

まるで微笑んでいるかの様な。

唯、其れだけ。

額を合わせ、再び瞳を閉ざす。

嗚呼、此れをきっと幸福と称ぶのだ。


309. リンガ・リンガ・ローゼス


カレンダーに赤い円。

今日はパパと私が家族になった日。

だから、テーブルにとっておきのクロス。

特別な食器で、ちょっとだけいい食事をするの。

パパのグラスにはワイン。

私もお揃いみたいなクランベリージュースで乾杯。

もう何回目か忘れちゃった記念日に。


310. ナルにピリオド


虚海から打ち揚げられた砂の原。

白い粒子が君の足元でちよと鳴くのを聞き乍ら、朧に思う。

砂粒の様な物だ、出会いとは。

浜辺で偶然隣り合う二粒に似て。

当然の顔をして消費されているが、其の実奇跡とも云える確立の交歓。

そんな果敢ない接触の上を二人で歩んで行く。


311. トゥラメッズィーノ


市場の隅っこ。

黒帽子のおじさんがお仕事中。

前と後ろに広告を下げて、ゆらゆら歩いてる。

あいつは一人じゃないぜ。

そう言ってたのはレッシさん。

私もそう思う。

だって、角を曲がるたびに広告が違うし、あっちこっちに居る。

みんな同じ顔だから、数えられないの。


312. 戸には鍵、唇には嘘


ウソをついてもいいよ、ってパパは言う。

つきたいなら幾らでもつきなさい。

ウソは悪い事じゃないからって。

けれど、他人にはウソだと気付かせてはいけないよ。

ここに鍵を掛けて、ウソを知るのは自分だけ。

出来るかな。

心臓の上を大きな手が押さえた。

痛いくらい。


313. 記号の企み


パズルの箱を抱え、誰かは私語く。

『彼方』の世界は有限。

『此方』は無限。

何故なら、頁の尽きぬ本は無し。

対し、『箱』の中身は永遠と決まっている。

ならば『彼方』と『此方』、何方が幸せか。

解りゃしないさ。

がらりと封された箱を振り、誰かは笑う。

此の中身と同様に。


314. 秘めやかな埋葬


ルーカがくれた一粒の種。

何か分からない種。

砂浜に落ちてたんだって。

好きにしろよって言ったから、ソラのお腹に種を詰めた。

どんな花が咲くか知らない。

もしかしたら野菜かも知れないし、大きな木になるのかも知れない、けど。

まだ眠ってて。

分からない方がいいの。


315. スピラ・ミラビリス


黒鋼の鎖が頼りの緩い傾斜。

上りと下り。

『塵芥箱』に穿たれた二筋の通路。

優美に塒を巻く二疋の蛇に似た、二重螺旋の回廊。

生命の基礎も同じ形なのだとジィモが教師の口調で述べる。

生と死も螺旋に例えられます。

此処が生まれ直しの場だからでしょうかね、とも。


316. 欠片合わせ


どうやったら、パパを幸せに出来るのかしら。

シロップたっぷりのパンケーキ。

お日様の匂いがするベッド。

スキップしたくなる楽しい音楽。

私が好きな物。

私が幸せになれる物。

でも、これじゃダメなの。

私の幸せの形は、パパの胸にある穴に合わない。

だからずっと考えてる。


317. 靭やかな錘


重くないのか。

レッシが指差すのは、腹の上で眠る君。

退けてやるぜ。

云いつつ、横合いから伸ばされた腕を、思い切り叩き落した。

お前は娘に触るんじゃない。

例え親切心だとしても、余計な事をするな。

身動ぐ君の髪を撫で、胸裏で呟く。

重石が要るんだ。

普通で在る為には。


318. セイング・グレィス


夕焼けであちこち赤い帰り道。

横道から飛び出して来た『先輩』の口も赤く濡れてる。

道を抜けてく風に混じる、綿みたいな塊。

小さい羽。

分かってる。

生きる事は食べる事。

パパが言ってたもの。

だからよそ見しないで帰る。

夕ご飯のお祈りはいつもより長くするから。


319. 正気の在り様


グロッグ酒のカソナードは決して溶かさない様に。

其れが最も大事だと云い乍ら、グラスを早々に干す様を見る。

其の後、何処か嬉しそうにスプーンを口に運ぶ辺り、酒より泥状と化している砂糖が主らしい。

ユウ、お前な。

アイちゃんの虫歯が如何のと云う前に其れを止めろ。


320. 泡沫に消ゆ


夜毎、右腕に掛かる重みは何時しか当然となり。

ふと思う。

違和感は何時まで保持し得ていたのだろうか、と。

過ぎった思考は、眠りの底で緩やかに融け行き。

されど僅かに抗う意識が一粒の泡となり、昏い水面で弾けて囁く。

嗚呼。

僕はきっと○○してみたかったのだ、ずっと。


321. 目隠し指の隙間


幽霊船が見える方法を教えよう。

指を組んで格子を作ってごらん。

こんな風に。

バヴィさんが目を隠すみたいにするのをマネする。

そうそう。

隙間から覗けば妖精も見えるが、それだけじゃない。

本当に見えるのは真実さね。

……私はパパを見ないようにぎゅっと眼を閉じた。


322. 蝶の夜会


蝶々通りの蝶々ホテル。

泊まる人はあんまり居ない。

お部屋には蝶の標本が飾ってあってとってもステキなのに。

お部屋の名前も蝶の学名なんだって。

夜には蝶の影が窓辺に揺れるの。

きっと標本が動いてるんだって噂。

ねえ、みんな生きてるって本当? マダムは静かに笑ってる。


323. カルナイオ


落丁本は全て『図書館』へ。

昔からと云う規則に従い、本を山と積んだ台車を煉瓦造りの建物へと押して行く。

本は壁面の跳ね上げ戸から落すだけ。

誰も中を見た事が無い。

書架に収められているかどうかも定かでない。

唯、時折微かに話し聲と、人の行き交う気配がするだけだ。


324. 偽りの色


パパの笑顔が好きよ。

そう云って、君は僕に抱き付く。

――笑いとは。

途端、脳裏で谺す『講義』。

笑いとは、一番安易乍ら効果的な仮面だ。

警戒を淡くさせ、距離を縮める。

可能な限り付けて居ろ。

――笑顔とは何時浮べる物だった? 君が好きだと云う仮面の裏で言葉を飲み込む。


325. 零への回帰


今に沈む。

そう云われ乍ら、島は沈まない。

嵐を受けようと痕跡は何時の間にか失せ。

君が背丈と比べた水跡も無い。

街並みは元通り、見慣れた姿に立ち戻っている。

其れこそ、壁の薄汚れた張り紙でさえ寸分違わずに。

前に嵐が来たのは何時だった。

誰も其の問いに答え得ない。


326. 真っ白な愛


とっておきの包装紙で真っ白の箱をキレイに包んで。

お気に入りのリボンを結んだら、とってもステキなプレゼントの出来上がり。

ふんわり軽い贈り物はパパにあげるの。

何も入ってないねって、中を見たパパは言うけど、ちゃんと入ってるのよ。

だって心は見えないモノでしょ。


327. ロリ・ポリ


右、左、右、左。

規則正しく揺れる頭。

次第に振りは大きくなり、今にもスツールから滑り落ちそうな程。

そんな君を軽く押さえて、膝に抱き上げた。

其れでも尚、人形めいた動きは止まない。

此れは土産に包んでくれ。

今の君と同じ名前の食べ掛けプディングをロラに押遣った。


328. 決定的欠落


けぶる様な陽光に眩い金糸の髪。

凪いだ海の其れに似て輝く青の双眸。

外見だけなら王子様だ。

其処は未だ同意出来る範疇だが。

しかし。

『中身がな』異口同音、溢れた言葉。

事の発端である君すら頷いた。

宝の持ち腐れを体現する男は、滑らかになった顎を哀しげに撫でている。


329. アリスの道筋


『回収』の間、『塵芥箱』の底を見回す。

捜すは、密やかに『巣箱』と名付けていた其れ。

最早、ガラクタに埋もれて何処に在ったか判らない。

其の事に、ふと安堵の吐息を漏らした自分を影で哂う。

あの小部屋が無くなったからと云って、君が手元から失せぬ保障は無いのだ。


330. 舌上の狂気


御伽噺に童謡。

君の好む物。

其れ等は現実の角を丸く削ぎ、砂糖やショコラやらで包んで口当たりを良くした物に他ならない。

疫病も。

時の狂気も。

全て糖衣の内側。

君は未だ芯に宿る真実の苦さに気付かない。

何時か噛み砕いた時に吐き出すだろうか。

僕は其の日を密かに待つ。


331. 林檎に目隠し


一を聞いて十を識るのでは足りない。

叱責の後、撓う鞭。

幻聴と幻痛。

僕は其れ等を意識の外へと退け、真逆を君に解く。

全てを知る必要は無い。

十を聞き、個々を吟味した上で一を会得すれば良い。

君は其れで良いんだよ。

だからもうお休み。

紅い本を閉じ、君を抱き締める。


332. 泥み雨


今日もお空は泣き顔。

パパを置いてきぼりにして三軒お隣に行く。

扉をノック。

出て来たノイさんに、お願い一つ。

ノイさんは仕方無いなって少し笑って、お願いを聞いてくれた。

家に戻ってもパパはまだベッドの中。

雨の音が聞こえないように耳を塞いであげる。

早く止めばいいね。


333. 楽園のずっと下


耳に水が入っちゃったみたい。

ごろごろ中で動いてて気持ち悪い。

そしたら、地面に耳を付けて寝ろよってルーカが教えてくれた。

ぴったりお日様を吸ったレンガに耳を付けたら、ぬるい水が零れて染み込んでく。

地面の下では心臟の音がする。

まるで島が生きてるみたいに。


334. 未だ忘れない


大丈夫かな。

朦朧と君は言葉を綴る。

ちゃんとご飯を食べて、寝てるかな。

海を映す双眸は虚ろ。

焦点を此方に結ぶ事無く、見得ぬ者を見ている。

笑って、くれてるかな。

僕に気付かない儘、訥々と流れる聲。

其の行き先は朧で、しかし明白だ。

忘れてしまえ。

呪詛は届かない。


335. 三文役者


生まれた場所の違いと云えば其れ迄。

だが、他の『落下者』よりも丁寧に包み隠された芯。

ノイさんが冗談めかして曰く、天性の役者は日常の全てを演じる、らしい。

確かにユウは腕の上げ下げにすら意識が行き届いている様に見える。

が。

俺に言わせればあれは只の気障だ。

絶対。


336. 都合の良い他人


夜が一等深い頃。

可愛い寝息を立てている君を残して、家を出る。

行き先はバル、では無く、橋下。

呼び出した相手は何も語らず、僕の胸に縋る。

今迄と同じ様に。

違うのは、口付けより先に進まない事。

好きと嘯く聲が無い事。

対価を求めず、早く帰らねばと考えている事。


337. 貴方の為の


日が落ちたら新しい靴を履いてはいけないよ。

バヴィさんが、ふっふと笑う。

脱げなくなって、足をちょん切らないといけなくなるかも知れないからねって。

私は急いでぴかぴかの靴をベッドの下に押し込む。

だって、そんなの困るわ。

パパを支えてあげられなくなっちゃうもの。


338. 福音と呪怨


娘で良かったな。

君の後姿を見乍らレッシが云う。

叔父と姪だったら少し気不味いだろ。

他人、なんだしさ。

成程、そう云う考えもあるか。

今更乍らに気付いた。

何より、親子なら結婚出来ないだろ。

なら俺にチャンスがある。

満面の笑みで言い切った変態を、渾身の力で殴った。


339. 冗句の心裏


レッシの奴は遂に『社長』から怒られたらしい。

当然だ。

本気で無いにしろ、些か執拗い。

指摘すると、蒼い瞳が此方を振り仰いだ。

だってよ、ガス。

無精髭を撫で、淡く笑みを刷く。

ユウの奴がちゃんと親の顔になるんだぜ。

面白がってるのかと問えば首を振った。

羨ましいと。


340. 水に溶ける前に


今日の暑さは格別だ。

水路の傍なら幾分かはマシだが、気怠い熱気が路上で渦巻いている。

ほんの数メートル先に逃げ水を見る程に。

先を行く君の足元も、不確かに歪む。

咄嗟、細いを掴んだ。

なあに、パパ。

無垢に見上げる君。

ジェラードを食べに行こうか。

僕は誤魔化す。


341. 指先の記憶


男が集い、酒が入れば、下世話な話が飛び交う。

初めて、は何時だった。

僕は酒精に塗れた戯言に、黒髪の少女だった、と努めて淡泊に返す。

途端、沸きあがる歓声。

詳細はぼかし、適度に餌を投げれば其れで話は終い。

『何の』初めてかは口にしない儘、彼女は再び記憶に沈む。


342. 盲目の真実


大なり小なり程度の差があれど、事件と云う物は酒に似る。

推論を語る者は誰もが酔った様な目をしている。

過ぎれば狂気の態を成す所も同じ。

何方も、輪の外より眺めている内は大層面白いとも思う、が。

煉瓦に水を掛け、残る残骸と染みを洗い流す。

此れは猫のせいだろうに。


343. ロール


貴方はアイちゃんの王子になりたいの。

ルーカへの態度を咎めてだろう。

ロラが珈琲を寄越し乍ら訊う。

こんな董の立った王子では厭だろうと僕は首を振る。

為るならば魔法使い。

誰もが幸せな其の裏で忘れられ、物語に埋もれる方が良い。

そう答えると、呆れた様な溜息を返された。


344. ノアの啓示


よくよく考えれば、戻る場所など無いのだと気が付いた。

本当は一つきり、戻る場所を知っている。

だが、其れは唯の『世界』に過ぎず。

矢っ張り何処にも戻れないのと同じなのだ。

そして、其れは君も一緒。

同じだと笑うから、僕らの帰る場所は此処なのだ。

この『長屋』だけ。


345. ティラミ・ス


大人はね、見得っ張りなの。

ロラは甘い匂いの中でウィンクする。

格好付けて痩せ我慢するし。

言いたい事も飲み込むわ。

みっともない所は隠して、凄いんだって思わせるのよ。

だから傍に居てあげなさいって、ドルチェをお土産にくれる。

『大人』の声に、子供の私は頷くの。


346. 貴方を満たす


卵。

牛乳。

バター。

ジャム。

ハム。

色んな野菜。

冷蔵庫に入ってるモノ。

沢山入ってるなあ、ってパパが言う。

そう言えば。

私が初めて見た時は全然入ってなくて、空っぽの箱みたいだったっけ。

空いてる所にロラのケーキを何とか押し込む。

もう、空になんてしないんだから。


347. 君次第


下らない行事だと思っていた。

甘い物が嫌いな訳では無く、寧ろ好きではあるが。

街中が甘い芳香を漂わせているとなると食傷気味だ。

貰ったら返すのがルールと云うのも、面倒でしかない。

が。

雑然と紙袋に詰め込んだショコラに目を輝かせている君。

うん、こんな行事も悪くない。


348. 舌上の誠実


睫が入ったらしい。

ユウは眼を擦らせない様にして、アイちゃんの顔を覗き込む。

取ってやるのだろう。

其の儘見てると、奴は矢庭にべろりと目玉を舐めた。

其れでも、アイちゃんは少しも怖がらない。

信頼されてるな。

ぼそりと零すと、奴は当然だろうと云う様に鼻を鳴らした。


349. 最後の夏


公園の木陰では、じわじわとセミが泣いてた。

外はとても暑くて、砂場が真っ白に焼けてる。

けど、コンクリートの遊具は涼しくて。

お日様が沈んでセミの声がしなくなるまで、そこでずっと待ってたの。

それが夏だった。

けど、もうセミは鳴かない。

パパと一緒に聞く事も、無い。


350. 膚下に宿る


世の中には己に似た容貌が三人居ると云う。

が、別段問題無いだろうに、と常々思う。

そも、己の顔など鏡等を使わない限り見えはしない。

困るのは、顔でしか区別を付けていない他人だけだ。

そう。

君が僕を僕として認識し、僕が君を君として認識出来ていれば。

何も問題無い。


351. 誰かの為に鈴は鳴く


かろん、かろん。

鈴が鳴ってる。

水の音と一緒に。

いつでも、どこでも。

気付くと鈴の音がするの。

どこで鳴ってるか誰も知らない。

神様への合図。

神父様がそう言う。

悪い物を遠ざけてるのさ。

バヴィさんはそう言う。

モビィが街に降りて来ないのはそういう事かしら。


352. プロセルピナ


うちのはみんな人魚の肉だ。

市場のお魚屋さんは切り身を買うと、いっつもそう言うの。

人魚だって夜は海の底で寝るからね。

そこを網で攫うのさ。

可愛相でも人魚は体に良いんだよ。

それが魚屋さんの口癖。

だから、うちのご飯はお魚が多いの。

パパに食べて貰わなくっちゃ。


353. 魂の器


蝶々ホテルのマダムが教えてくれた。

白い蝶はね、死んだ人の魂よ。

だからホテルには白い蝶がいないのねって手を叩くと、マダムはくすくす笑う。

それはどうかしらね。

もしかしたら、どこかに閉じ込めているかも。

薄暗いホールで、蝶の翅みたいなアイシャドウがきらりと光った。


354. 智恵の実の中身


知っておきなさい、ってパパは言う。

理解も、納得も、しなくていいから。

ただ、頭のどこかに置いて欲しい。

そういう事や物もあるんだと。

私の頭を撫でながら、言う。

でもね、パパ。

私はちゃんと解りたいの。

すぐにじゃなくても、パパがどうして教えてくれたのか、を。


355. 盲の聖者


此の街で生まれ。

此の街で育ち。

此の街で老い。

此の街で死ぬ。

其れだけで良いのか。

槌打つ音の間。

落ちた問い。

俺は胸を張って答える。

其れで十分だと。

外に出て一体何になる。

俺は此処で、皆と働いてるのが好きなんだ。

ユウの奴は、何だか眩しい物でも見た様に目を細めた。


356. 種を蒔く人


パパはお家だとあまり喋らない。

家でまで愛想良く喋り続けたら疲れる、だって。

黙ってる方が好きだからって、家の中ではウソ吐かないで静かにしてる。

だから、私は代わりに一杯喋るの。

そうしないとお家が静か過ぎちゃうし。

時々パパが笑ってくれるから、大変じゃないわ。


357. 畢竟


今日のロラは大忙し。

昨日船が着いたから、お店はマレビトさん達で一杯。

賑やかだけど、何を言ってるのかは全然解んない。

ロラも解んないみたい。

でも、『何が食べたい』や、『どれが美味しかった』は、解るわ。

それさえ解れば十分でしょ、って腕まくり。

うん、確かにそうかも。


358. サンベリーナ


棚の奥。

隠すかの様に一冊の本が押し込まれていた。

怖い物でも、好かない物でも、大概は大切にするのに。

君はどんな気持ちで此所に置いたのだろう。

唯の嫌悪。

其れとも、罪悪感。

表紙では、生家で待つ母を忘れたか、妖精となった少女が幸せそうに王子と寄り添っている。


359. 継接ぎ目隠し


モビィが吐く『落下物』には物語が付き纏う。

何故、元の世界で不要とされたのか。

今日も『工房』では経緯に空想を広げ、語られる様々な推論。

其れを付属して、修繕された『落下物』は売られる。

其の真贋は如何でも良いらしい。

其れこそ君の作り話でも。

売れさえすれば。


360. 1人分の空間


パパの靴は大きい。


パパのシャツも、とっても大きい。


私が着たり履いたりすると、あっちこっち隙間だらけになる。

その隙間の中には、私の知らないパパがある。

ううん。

きっと、もっと、私の知らないパパがいるのよ。

ねえ、パパ。

私は、パパの指一本分位はあるのかしら。


361. 或る日の序曲


今の僕は事有る毎に、幾度でも思い出すだろう。

器に注がれた水の様に容易く形を変えて寄り添う。

そうして何時しか網膜を通り、頭蓋の内側へ浸透した君を想うだろう。

君を失くして後、仮令、其の痕跡を尽く消し去ったとしても。

余韻は必ず残るだろうと、呪う様に繰返す。


362. 表裏一体


レッシさんは大きく息をする。

そうして体の中から色々吐き出してるみたい。

パパは小さく息をする。

そうして出来た隙間に色々詰め込んでるみたい。

笑う時もそう。

レッシさんは楽しい事をみんなに分ける風に笑うけど、パパは大事にしまう風に笑うの。

どっちも優しくて好きよ。


363. マーブルチョコレート


こぽんと間抜けた音を立て、紙筒が引き抜かれる。

そして卓上に広がる色の粒。

どうやら色分けで半分こにしたいらしい。

勿論、可愛い色は全て君の分。

けど僕も赤が欲しいかな。

君は暫し悩んで、赤を一粒差し出した。

青二粒と交換、らしい。

どうぞ、御気に召す儘。


364. 此方を見てよ


一人目。

らしいなと笑って相槌を打つ。

二人目。

気を付けなさいと叱った後、当人にも云わねばと心に決める。

三人目、四人目。

放っておきなさいと忠告。

そして五人で留まらず、六人目まで行った所で遮った。

君の交友関係が広いのは良い。

けど、もう他人の話は止めないか。


365. 酷い口癖を覚えたね


愛して貰えましたか。

赤いお口が、にんまり笑う。

そろそろ愛して貰えましたか。

黒猫の首が、かくんと傾ぐ。

変なオーズィ。

私が、パパを愛すのよ。

パパが私を、じゃあないの。

ずうっと前からそう言ってるのに、やあね。

黄色いガラスの目の中で、女の子が笑ってる。


366. 常世と謳う


女の人が歌ってる。

イスに座って、窓の外を見たまんま。

お外で雨が、さあさあ降ってる。

お家の中でも、ぽろぽろ雨が降ってる。

名前を呼んで。

私、を呼んで。

ここに居るよ。

でも、お願いは届かない。

絶対届かないって、知ってるの。

目を開けて、隣のパパを見る。

ほら、ね。


367. 両手の愛情


私は、知ってる。

時々パパが確めるみたいに、私の首を触ってるのを。

頭がベッドに沈んで。

喉に温かい手の平。

それから、息がほんの少しだけ苦しくなる。

最後におでこへキスをくれるの。

今はまだそれだけ。

大丈夫よ、パパ。

私は起きたりなんかしないわ。

寝るのは得意なの。


368. 彼方が招く


此処暫く閉ざされていた扉。

今日になって漸く開いた本屋に、訳を尋ねる。

すると夫婦は顔を見合わせ、涼やかに宣った。

旅行、と。

或る日届けられた搭乗券二枚。

『彼方』へ一時的な帰郷を誘う其れに乗った。

貴方ならば如何した、と半券を見せる。

僕なら、破り捨てるだけだ。


369. 綻びの歌


縫い包みを揺すり乍ら、君が歌う。

――緑の湖。

小鳥が一羽。

ゆうらり沈んで行きました。

青い湖。

お花が一輪。

さわさわ揺られて咲きました。

廻るひととせ。

戻りふたとせ。

小鳥は何羽。

お花は何輪。

数えておくれ、可愛い嬢や。

歌い終えた君は、何も無かったわと微かに零した。


370. 耳を塞いで世界にキスを


手の甲だろうと。

額の上だろうと。

頬の上だろうと。

唇の上だろうと。

瞼の上だろうと。

掌の上だろうと。

腕と首であろうとも。

其の他も全て。

君がくれるのならば愛情に他ならない。

勿論、僕も。

君の綺麗な指にキスを落とし、独り言つ。

他の意味など知った事か。


371. 理性と狂気の箍


僕は知っている。

今でも君が時折、確かめている事を。

床下に眠る過去。

クローゼットの底。

打ち付けられている釘の頭を、幼い指が辿る。

其の数が、一つ足りとて欠けていない様にと願いつつ。

僕は其れを見て見ぬ振りをする。

安心おし。

僕は、二度と其れを使いはしない。


372. 星を売る


アコーディオンの音がしたら、ロブさんが来た合図。

コインを握って、橋の上まで走ってく。

そこで、琥珀色の塊をハンマーで割るのを見るの。

グラシン紙に包まれたカケラは、お日様に透かすと金色に光る。

キャンディの様ですが、歴とした星ですよ。

含み笑いが耳を掠めてった。


373. アムレート


パパはお日様が沈んだら外に出ちゃダメだって言うの。

ルーカと一緒でもダメ。

狼に襲われるよ、ですって。

それなら私、カバンにハサミを入れておくわ。

ハサミを持ってたら、きっと怖がって近くに来ないはずだもの。

だって、いつだって悪い狼は、お腹を切られちゃうでしょ。


374. グラドゥス・アド・パルナッスム博士


近頃『落下者』の失踪が相次いでいる。

尤も、以前より老若男女を問わずして『消えて』はいた。

が、何か気に掛かる。

此れ程、頻繁だっただろうか。

滔々と流れ出した思考を、唐突に響いた楽音が障った。

軽快な足音が後を追う。

あの音も何時からだ。


375. 狩人の爪月


街からは又一人消えたらしい。

風聞の傍らでレッシが鼻に皺を寄せる。

全くどいつもこいつも。

其の嘆息は何方へ向けられたものか。

僕はと云えば、獣の本能は容易く消えはしないのだろうと、赤い痕跡を水で押し流す。

鼻先を掠めた柔毛に嚏を一つ。

其れにしても、近頃は酷い。


376. 火宅の異邦


何だか最近、街に知らない人が一杯居る。

『帰る』人が多いからかしら。

その分、新しい人が『落ちて』来るの。

何だか減った分を埋めるように。

幾らでも代わりがいるみたいに。

そうだとしても、お逢い出来て光栄です。

ロブさんはお姫様にするみたいに、私の手にキスをした。


377. 水隠りの文


雑然と伸びる街衢の陰影から湧いた人影。

刹那交わった眸は、するりと逸れて行き違う。

男はアコーディオンの調べを後背に揺曳し、隘路の奥へと消えて行く。

甘い残り香に嚏一つ。

むず痒い鼻を擦りつつ、坂を昇る。

上衣の中で手紙が囁く。

神父からの呼出し。

さて、何用だか。


378. 雲隠の止り木


小鳥を抱いた少女が可愛らしい嚏を一つ。

おや、此れはいけません。

優しく語り掛けるはアコーディオン。

貴方には特別な飴をあげましょう。

さあさ、此方へ。

路地角から誘う黒手袋。

煉瓦にワゴンがごとりと跳ねた。

金目の猫が欠伸する。

小鳥の代わりは幾らでも来るさ、と。


379. 金声の警鐘


ディング、ドォング。

鐘が鳴ったら『また明日』。

あっちこっちで、帰っておいでって呼んでる声がする。

急いでお帰り。

こちらにお帰り。

影が夜と一つになっても、まだ帰らない子がいるのかな。

呼ぶ声がずっと響いてる。

早く帰るといいね。

ソラとお話しながら、窓を閉めた。


380. 土芥の明日a


落下者が幾等消えようと誰も気に留めない。

ラヂオが伝えるのは変わり無い街の日常。

嘆息の代わり、飛び出た嚏。

途端、手元で澄んだ音が響いた。

嗚呼。

今度こそ嘆息だ。

砥石を片付け、欠けた包丁を君が触れない様、丁重に隠す。

此れは今晩にでも処分して、新調しないとな。


381. 落日の波旬


何も心配は要らん。

そう囁いたのは神父。

ああ、心配などする筈も無い。

何せ、『落下者は突如として失踪する物』。

唱和は夜に融け。

然様なら。

さようなら。

別れの言葉に、銀色がちかり、月と瞬く。

タイルの目地に沿って水が走る。

其の先端より、僕はそっと爪先を逸らした。


382. 依然の隣


猫ならクリーム以外では溺れません。

弾む口調。

しかし狼は沈む物。

そう付け足す黒猫を、うっそり眺めやる。

尤も、海は石を飲まずとも返さないでしょうが。

ところで、新しい包丁の具合は如何。

ああ。

前のとは段違いで頗る良い。

僕の答えに、其れは重畳とOZは喉を鳴らした。


383. ふたりぶんだけやさしいせかい


塗り込められた頁は無いも同じ。

完全に見得なければ、其れは無いも同じ。

忘却は消失。

居なくなった者達の行方を問う君に、明日の予定を尋ねる僕。

こうして明日を口にする度、昨日は薄れて行く。

そして何れそっくり消えてしまえば良い。

君のも、僕のも。


384. 花の棺


もうダメだね。

パパは言う。

もう捨てないと。

くにゃりと曲がった首を見て。

さよならだねって、ノイさんから貰ったお花を花瓶から抜いた。

水を換えても、もう元気にならないから。

残ったのは机に落ちた花びら一枚。

パパに内緒で、そのしわしわのお花を食べた。

一緒にいようね。


385. 白い消息


イールさんは『帰っちゃった』みたい。

誰も居ない部屋。

このままじゃ荒れてしまうからって、パパたちがどんどん荷物を運んで空っぽにしてく。

ねえ、思い出したの。

思い出せたの。

それとも、何にも無くなっちゃったの。

お部屋みたいに。

私の中のイールさんは教えてくれない。


386. 飛躍思考


窓の向こう。

うんっと先に一本の線。

本当はあそこで終ってるの。

海も、空も。

なら、この下は動物が支えてるのかな。

パパは私のお話を笑わないで、そう聞いてくれた。

ううん、違うわ。

ものすごく大きな本なの。

いつか誰かが読むのに飽きたら、ぱたんって閉じられちゃうのよ。


387. 空の飼育


窓辺に在るのは両手に乗る程度の小さな水槽。

魚影も無く、水草が揺れる事も無い。

白い砂と控え目に小石が点在するだけ。

そんな硝子の器へ、君は丁寧に水を注ぐ。

本当に良いのかい。

問いに、君はそっと微笑んだ。

お日様や、お月様が泳ぎに来るもの。

だからお魚は要らないわ。


388. 一段飛ばしで貴方の場所へ


階段を軽やかに昇る君。

其の足が急に止まる。

パパと同じね。

耳元で転がる、弾む声。

そうだね、一緒だ。

何時もより近い、君の顔。

何の事は無い。

単に君が数段上に居るだけの事なのだが。

真っ直ぐに交わる眸を見返し、秘かに願う。

どうか余り急がないでくれ。


389. どうか生かせて


ねぇ、パパ。

生きるって如何云う事。

高く柔らかな声は、生命活動について問うているのではないのだろう。

生きるとは。

問いを口腔で転がし、考える。

考える。

誰かに自分の存在を託す事、かな。

零れ落ちた解に、君は神妙な顔で僕の手を握る。

じゃあ、パパは生きてるわ。


390. 優雅な雑音


蝶は死者の魂に擬えられるけれど。

其の実と云えば、屍体に集う蝶が一斉に飛び立つ様から連想したに過ぎないわ。

オテル・ファルファッラのマダーマが秋波を寄越す。

だから、美しかったり、愛らしいばかりじゃないのよ、女も。

其れでも愛せるかしら。

其の唇は紫煙で見得ぬ。


391. フォー・ユア・シート


カブリオレ・レッグの優美な曲線。

柔く身を受ける座面は深紅の天鵞絨張り。

共布の背凭には金鋲が打たれ、象嵌の施された肘掛と共に品良く彩りを添える。

窓辺に新調された其のソファ。

部屋には似わないが構わない。

其処に座る僕の膝の上。

其れが君のお気に入り。


392. プレガーレ


何かを探し、或いは何かに縋ろうと君の手が敷布の上を彷徨う。

小さな手だ。

丸い手だ。

脂肪層が細い骨格を取り巻く、柔い肌。

ゆるりと短い指を握った所で、僕は無力感に溜息を付いた。

起こしたとして、何の意味も無い。

唯々、胸裏で繰り返し君の名を呼ぶ。

夢中へ届く様に。


393. 伝う電気信号


人間の気持ちは電気と同じ。

楽しいや嬉しいの電気が頭を流れるから、そう言う気持ちになるんだって。

そう、ジィモさんの『授業』で教えてもらった。

それなら、私にもパパにもコンセントがあればいいのに。

そしたら、楽しいを分けてあげられるわ。

静電気じゃダメかしら。


394. サクリフィカーレ


きりえ・えれいそん。

教会の子と一緒にカンティコの練習。

みんな、なんて意味か知らないけど、神父さまは気にしない。

祈りの歌は、神様の為じゃなくて、人の為。

意味が解らなくても、みんなの為に歌えばいい。

ここから居なくなった人の為にも、って十字を切ってた。


395. ハッシュ・リトルベビー


娘はそんなに可愛いか。

買い物の都度、何度と無く言われた事。

クローゼットを占める君の服。

キャビネットの中の小物の殆ども君の物。

他の何も要らないから、パパが欲しい。

そう君が云うから、僕も又君の物。

全てが全て君の物。

其れ故に。

君の全ても僕の物だ。


396. おいしく食べよう


ルーカが風邪を引いちゃった。

あげるつもりだったクッキーは、パパと一緒に食べる。

私はお医者様じゃないから、何もしてあげられない。

風邪を貰っちゃったら、パパが悲しくなる。

だから、全部食べちゃうの。

神父さまが、お見舞いしていい、って言ったら、又焼くわ。


397. 髪結の追想


変わらないモノなんて無い。

ここから消えてしまっても、誰かの思い出の中で変わっていく。

ぽろぽろロラの声が降って来る。

変わらないままでじゃ居られないの。

あなたもいずれレディになるわ。

クラウンみたいなシニヨンに冷たい声が染みる。

私が大人になってしまった様に。


398. だって生きている


僕は時々、君の語る事が解らない。

私は時々、パパの話す事が解らない。

僕の世界は君の世界とは違う。

私の世界はパパの世界とは違う。

『だから聞かない』其れは君を拒絶している訳では無く。

別にパパの事を知りたくない訳じゃなくて。

2人の此れからに必要無いから。


399. アドッタート


ヲルトは賢い奴だ。

今日もアイちゃんからクッキーを貰って来た。

首輪にお礼の手紙を挟むと、ベランダ伝いに持って行く。

アイちゃんからだけじゃない。

色んな物を貰っては、俺の所に運んで来る。

伝書鳩ならぬ、伝書猫だ。

そう自慢すると、皆から憫れむ様な目で見られた。


400. 接触伝達


生きる事は食べる事と繋ぐ事。

パパや、もっと前の人達が渡した物を受け取って、又次に渡す為に私達は生きてる。

なら、私は何を渡せるかな。

パパから教えてもらった事は、全部ノートに書いたわ。

愛し方はどうやって渡せばいいのか、良く分かんない。

だから、毎日ハグするわ。


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