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蛙のお姫様【仮】  作者: stenn
二章
42/61

過去との対話

気付けばループ中>_<;

 冬が過ぎ去り、また春が来ようとしていた。何一つ変わらない学校生活。静かに時は過ぎ去っていく。相変わらず私は広い学院に一人だった。本当は『相変わらず』と言うのは少し変かも知れない。私には記憶が無いのだから。おかしなことに夏の終わり、朝目覚めたら無くなってしまっていたのだ。きれいさっぱり。


 そんなことってあるのかどうかは分からないけれど、現に私は記憶を無くしてしまっているのだからあるのだろう。



 とにもかくにも、この国の『騎士様』が訪ねてきていろいろ教えてくれたので助かったけれど。騎士様とは記憶が亡くなる前仲良くしていたらしい。



 トイレで手を洗い流しながら覗き込んだ鏡は私『ライラ・ストローズ』が映っている。美人ではないと思う。ごく普通の一般人の容姿だった。黒い髪を頭で束ねた快活そうな少女。だがその両眼はなんだが不釣り合いなほどに赤い――。それ自体が輝きを放っているほどに。



「?」



 考えていると数人コツコツと廊下を歩いて来る音が聞こえた。こっちに向かっているらしい。広い廊下を反響するような高い声がどんどん近くなって来た。



「そう言えば、聞いた? どうやら戦争が始まるらしいよ?」



 戦争。――そう言えばしばらく会う事が出来ないと騎士様が言っていた気がする。戦争とは言っていなかったけれど関係あるだろうか。



「ええ? マジで?」



「隣のデリオロン――ここにあそこの姫様いたじゃん? その女が王子たぶらかして国に持ち帰ったんだって、でさ――って、ライラ・ストローズ!?」



 ――どうでもいいけれど何故私はここで恐れられているんだろう。少し悲しくなってくる。



 私を見た途端に顔色が変わる少女たち。幽霊でも見ているような目だった。



 見覚えがある少女。同じクラスだった。名前は忘れてしまったけれど脅えた様に視線をぐるぐる回している。



 そこまで脅えなくても――。



 とにかく、何となくこの状況を緩和するために口を開いてみる。怖くないとアピールすれば、もしかしたら友達になれるかもしれない。そんな希望を持って。



「ええと、戦争、ですか?」



 ま、所詮は希望だったようだ。現実はうまくいかない。少女はさらに身を固くした。



「は――ひっ! でも決してお友達の悪口を言っていたわけではなく――オーエン様には内緒で……」



「友達?」



 私は訝しげに呟き首を傾げて見せる。



 オーエン。とは『オーエン・ストローズ』の事だろう。私の『兄』らしいが現在『お仕事』で暫く帰れないらしいと騎士様から聞いた。何故兄妹そろって恐れられてるんだろう。呪われてるのだろうか。笑えない――そう思う。



 それにしても、友達の事は騎士様は言っていなかった。しかしながらその友達が悪口に繋がるのだろうか。もう一人の少女が怯えている彼女の裾を引っ張った。



 冷たい視線が私を射貫く。



「エリナ――行こうよ。こいつに関わることないって。大体こいつのせいなんじやね? 戦争って。当事者の二人がこいつに関わってるんだから」



「――でもさ。無視したらオーエンが」



「行こうっ?」



 そこまで。そう言わんばかりに彼女たちは慌ててトイレを出て行った。用は足さなくていいのだろうか。と一瞬思ったが他にもトイレはある。――いいのだろう。



 ため息一つ。私は鏡の向こうの私を見つめた。それは私であって私で無い。そう思う。赤い双眸が私を見つめ返していた。



「当事者の二人って――戦争?」



『知りたい? ライラ』



 どう言う事だろうか。そう言葉に出す前に、鏡の向こうで薄い唇が開く。鏡の自分が喋るなんてありえないことだろう。人によっては卒倒するのかも知れない。しかしそれを私は別に不思議と思わず、ただ黙って見つめていた。



『知りたい?』



「――ええ。知りたい」



 考える事も疑問を持つこともせず、私は私に答える。単純に知りたい。いや――知らなければならない。そう思ったからだ。騎士様がどうして教えてくれなかったのかは分からない。もしかしたら私が゛知ってはいけないことだったのかもしれない。



 苦しいことなのかも知れない。



 けれどとても大切なことの様に思えたのだ。



『あたしは、貴方の過去――記憶を渡すことは出来ないけれど、伝えることは出来る』



「……過去」



 言うと『私』は少しだけ淋しそうに笑った。


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