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蛙のお姫様【仮】  作者: stenn
二章
34/61

母親

ここから少し過去編が続きますm(__)m

一人称は『あたし』ですが会話文以外『私』としてます。

( `д´) ケッ!兄様歓喜設定……知ってたけど。

 『あたし』がその家に連れてこられたのは五歳の時だった。女手一つ。育ててくれていた母が亡くなったからだった。父親は知らない。村のおばさんが言うには私は『ふていの子』で居てはいけない、生まれてはいけない存在だったらしい。それは私もそう思う。生まれさえしなければ母は村人から嫌われて石を投げられることも怖い言葉を吐かれることも無かったのに。すべては私のせいだったのかもしれない。母が死んだのも。



 母が幸せを手に入れなかったのも。



 だから、私は私は嫌いだ。何もかも。私なんて死んでしまえばいいと思う程に。



 けれどそれができないのはなぜだろうか。よく分からなかった。



「君が、ライラだね?」



 私を迎えに来た大きな男は母と同じような目元をしていた。弟、らしい。この村の誰とも違う整った清潔な衣服に身に纏った男は優しく私に笑いかけていた。



 どうやらこの辺を支配する領主様の農奴らしい。農奴と言うのは領主様の持ち物で一生を領主様に捧げる人の事らしいが……農民よりも安定しているのだろう。私は彼等を観察するように見つめてしまう。



「あら。大きな目はマキナにそっくりねぇ? ふふふ。将来美人になるわ。貴方とは違って」



 隣に居るのは女だ。母親も綺麗だったけれど、この人も相当きれいだと思う。化粧なんてしていないのに白い頬には赤みが差し、黒く艶やかな髪がさらさらと流れている。彼女もまた優しく柔らかな双眸を浮かべていた。



 温かな二人。村の人間とは違って、手を延ばせはしっかりと受けてめてくれそうだった。けれど、嘘かもしれない。今までそうやって泥を吹っ掛けられたことは幾度もある。何をする気なのだろうか。隣の家にいたおばあさんの様に今度こそ私を売り飛ばす気なのだろうか。あの時は逃げられたけれど。



 私は二人を拒むように見つめた。



 女は困ったようにして少しだけ首を傾げた後、バンッと軽く小気味のいい音を響かせながら両手を合わせた。思い出したかのように。



「人見知りなのね。大丈夫よ。ああ。――私の子供を紹介するわ。歳が近いもの。仲良くできるわよね?」



「……」



 いらっしゃい。と手を招いたのは二人の子供だった。二人とも母親によく似ていて艶やかな黒い髪と人形のような整った顔立ちを持つ男女だった。兄はオーエン。妹はベネッサというらしい。ベネッサはまだ幼く歩くたびに身体が左右に揺れていた。



 軽い音をさせて私に近づく兄。オーエン。彼は私を凝視した後でバンッと一度私の頭を叩いた。



 しかも無言。口をへの字に曲げて私を見つめている彼に私は目を瞬かせて視線を返した。



 当然、慌てたのは大人でオーエンは私から引き離されると父親に同じことをされて涙を浮かべていた。『だってあいつ人形みたいなんだもん!』それが当人の言い訳だけれど意味が分からない。それを言うなら私を叩いた子供の方が人形のようだが。



「……ら、ライラちゃん。大丈夫?」



 何がだろう。所詮子供の力だ。痛くもかゆくもない。石をぶつけられるよりましだ。私は首を捻ると『はい』とだけ答えた。一瞬女は戸惑ったような顔を浮かべたが私の額を撫でるとゆっくりと抱きしめた。



 優しい温もりが身体を包む。それはまるで母親のような錯覚を覚えるほどに優しいものだった。包むような安堵感。けれど同時に戸惑いを覚えていた。



 何故なら彼女は母親ではないのだから。『おかあさん』は死んだのだから。



 あの劣悪な小屋の中で。とても寂しく。惨めに。私はとても、無力だった。



 一人で山に遺体を運んで爪が弾け飛ぶまで穴を掘って、埋葬した母親。その顔はとても安らかな顔をしていた。どこか笑っているようなそんな顔。死んで楽になったからだろうか。私と言うお荷物が無くなったからだろうか。



「おかあさん」



 ポツリ落とすように呟く。ぼんやりと見つめた空には白い雲が流れていた。いつか母と見た空と同じだ。それがゆっくりと滲んでくる。



 大丈夫だよ。――私、ちゃんと罰を受けるから。



「だから――逝かないで」



 その時私は母が死んでから初めて泣いた。大声で。人目を憚ることも無く。そしてそれを誰も咎めることはなかった。ただ、ただ、その人は私が泣き止んで眠るまで抱きしめていてくれたし、男も私の頭をゆっくり寄り添う様に撫でてくれた。『大丈夫』そう言い聞かすようにして。

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