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エピソード13 ニガヨモギ

Episode13

登場人物

濱平 万里:主人公

源 香澄:黄龍の尸童、砂、土、岩石を自在に操る

難波 優美:白虎の尸童、金属、電気、電子情報を自在に支配する

吾妻 碧:青龍の尸童、生命を自由に作り替える事が出来る

舘野 涼子:玄武の尸童、水を操り、あらゆる物を水に溶かす

池内 香澄:朱雀の尸童、火を操り、大概の物は昇華させてしまう

加地 伊織:五行聖獣の輩、聖獣は輩の命令に逆らえない

度会 海斗:規格外のエインヘリャル、聖獣を殺せるトルコ石の蛇を持つ

山猫コピー:マッドサイエンティスト山猫のコピー人間、濱平の奴隷

西野 仁美:第6師団大尉、表向きは聖獣軍団の責任者

南 浩二郎:第6師団通信士、相方は行方不明

オッテル、レギン:カワウソの聖獣、キモオヤヂキャラ

ムスペルの子ら:ロキの手下、火の巨人(聖霊)


石川県白山市 山中の秘密基地

ニガヨモギ衝突迄5時間


人気の無い医務室のベッドで香澄と優美が目を覚ます。

一糸まとわぬ姿で抱き合っている二人…



そこへ飛び込んで来る制服姿の集団。


将校:「失礼しました! 自分は大日本神国空軍航空軍団、第三航空団、島少佐であります。」


一同、敬礼



香澄:「頭痛…。」


島、どうしようもなくチラ見…。


島:「EMUをお持ちしました。」



女子職員が女性用の下着を差し出して来る。


優美:「ちょっと、これ、お子様用じゃないの…?」

香澄:「可愛いじゃない。」


EMUと言われる宇宙服? 潜水服?を装着する二人。



香澄:「何だかエッチなアニメの宇宙服みたいね、ピチピチで身体の線がモロバレ。」

優美:「ちょっと、ブカブカなんだけど…これ、」


スタッフ:「こうも体型が規格外だとどうしようもなくって、…これが限界です 。」


優美:「これ、Designed by Yamanekoって書いてあるわよ…。」





北海道千歳 第六師団作戦室が有る自衛隊の基地

通称「加地伊織と五行聖獣軍団」の部屋


椅子を横に並べて 吾妻碧が寝転んでる…。


碧:「何か、どっと疲れてるんだけど…。」

伊織:「お前凄いよ、実際84万人を2時間で転送するとは思わなかった。」


碧:「万里さん、厳しすぎ!」

伊織:「いや、お前やっぱり体育会系だよ。」


碧、睨む


伊織:「褒めてんだけど。」



同基地内ヘリポート


舘野涼子、空に向かい両手を広げ…

…空の浮遊物を片っ端から溶かして行く


ヘリポートの真ん中には、半死半生のオッテルとレギン

…「聖なる箒」の威力で動きを封じられている。


その隣で箒を肩に担いでいるのが私、濱平万里


万里:『分かってんでしょうね、後一回この箒で叩いたら、あんた達は未来永劫復活出来ない事になるんだからね。 嘘付いてたらどういう事になるか、分かってるわよね。』

(作者注:『』は精神感応、テレパシー交信)


オッテル:『ロキには義理はねえ、』

レギン:『空を固めたのはムスペルの子だ、星を落とそうとしているのも別のムスペルの子だ。』


万里:『どうせ、もろもろのゴミを一気に地上に落として汚染するって目論見だったんでしょうけど、そうはいかないわ。』


今や憐れなカワウソの聖獣を睨みつける。


オッテル:『言っとくが、奴は聖獣じゃねえ、巨人だ。』

レギン:『それも一人や2人じゃねえ。異変の数だけムスペルの子らが居る。』


万里:『それで、ムスペルの子らを操っているのが、誰だって?』


オッテル、レギン:『スルトだ、』

オッテル:『なあ、こんだけバラしたんだから殺さないでおいてくれるよな?』


万里:『さあね、あんた達が役に立つかどうか次第だわ。』


身体が硬直したまま動かせないカワウソの聖獣、…涙を流す。


オッテル、レギン:『お前、ずるいよな、卑怯だよな。』

万里:『アンタ達からそんな風に言われるなんて…最高の褒め言葉だわ!』




そうだよ、

敵が来る!


万里:「お出ましの様ね。」

万里:「涼子! 後どれくらいでゴミを片付けられるの?」

涼子:「…。」


ツインテールの少女、無言…、ちょっとビビってる…。

仕方が無いので涼子の中の聖獣に直接呼びかける。


万里:『クロ子!』

クロ子:『後半分くらいかな。』


万里:「30分位? それまでは敵の能力を消す訳には行かないか…」

万里:『10分でやって!』



クロ子:『全く、人使い荒いンだから。』


空中浮遊していたゴミ達が見る見る水蒸気に溶けて行く。




突然!

涼子目掛けて、火柱が襲いかかる!


海斗、鉄板で炎を遮断! 涼子を庇う。



何故か空中に浮かんでいる女3人。

修道女の服に身を包んでいる。

結構グラマラスな美人。



万里:「アイツ等が本体ね。行くわよ、海斗!」


空飛ぶスクーター、フライングシューズ離陸! グラマラス・シスターズに突っ込む!


ニケツの海斗、赤い箒を振り回す。 まるで孫悟空??

空中浮遊して逃げるムスペルの子ら、



シスターズ、機関銃掃射の様に断続的に火柱を繰り出す!

フライングシューズ! これをギリギリで躱す!



一気に加速!

海斗、箒をぶん回してムスペルの子にぶち当てる!



一気に距離を取るムスペルの子。

内一人が何か、を仕掛ける!


途端にフライングシューズが空に掴まる。

…身動きが取れない。


万里:「よーし、コイツが本命だ!」

万里:「涼子! まだかぁ!」


クロ子:『今やってる!』



万里、ロケット噴射! 全開!!! フライングシューズ…びくともしない


集中砲火で火柱を発射するムスペルの子


海斗、ジャンプ!


それと同時に展開するトルコ石の蛇!


無音の閃光がギリギリの射程でムスペルの子を捉える。






空が、元に戻る!


玄武に溶かされた諸々のスペースデブリが、水溶液となって降り注ぐ!

溶かしきれなかった残骸も多数あるが、まあ、止むなしとする。


自由を取り戻して急発進するフライングシューズ、急旋回して

自由落下する海斗!を拾い上げる!


万里:「ナイスキャッチ! 私!!」



身体の自由を失って落下するムスペルの子


残る2体は、上空へ逃げる。


万里:「涼子、どれ位やり残した?」

クロ子:『2割弱って所かな、』


万里:「まあ、上等でしょ。」

万里:『香澄、後は頼んだわよ。』





石川県 白山市 秘密基地内、ロケット発射場

ロケット操縦室内


香澄:「大体、小惑星って言うのは太陽の周りを回っているのだから、公転速度は秒速30km位、これよりも速ければ公転軌道を外れるし、遅ければ太陽に曳かれて堕ちる。 つまり同じ速度で同じ回転方向で走っている者同士が衝突する場合の衝突速度は大抵秒速30km以下になる筈だわ。 要するに後ろから追っかけて来てぶつかるって事はあり得ないから、普通は前を並走している隕石の軌道が地球の軌道と交差する事で衝突するのよね。」


優美:「ふーん。」


香澄:「観測によればニガヨモギの地球との衝突速度は秒速30km、つまりどんだけ自信があるのか知らないけれど、秒速30kmで垂直に行き交うもの同士を衝突させようって訳、交差点の出会い頭事故みたいなものかな。」


優美:「それで、どうやってその衝突を回避する訳?」


香澄:「ニガヨモギには黄龍の能力が通用しない。 考えられる原因はいくつか有るわ、一つは余りにもスピードが速過ぎて今の黄龍では捉えきれないか、あるいは別の聖獣の能力でコントロールされていて、黄龍の能力が干渉出来ないか。」


優美:「へえ。」


香澄:「直接干渉出来ないので、一か八かの手に出る。 正直言うと他に良い案が思いつかなかったのよ。 地球の公転方向に対して進行方向45°の角度の位置にニガヨモギと略同等質量の岩の塊りを置いておくの、 要するにビリヤードの要領よ。 ニガヨモギが「手球」で、黄龍が作り出した岩の塊りが「的球」、二つをぶつけて方向を変えさせるって訳。」


優美:「何処がちょうどいい地点なのか分かるの?」

香澄:「今「51州」のチームが計算中よ、」


優美:「場所が分かったとして、どうやってその場所に正確に岩の塊りを作るのよ?」


香澄:「だから、私達が直接その場所に行くわけ。」


優美:「なるほどね、それでこんな格好してロケットに乗ってる訳ね。」


優美:「それにしても、よくロケットなんて見つけられたわね。」

香澄:「世の中にはこういう事を想定している人間が居るものなのよ。」


優美:「それって、」

香澄:「山猫よ。 たまには役に立つわね。」


ガコン!

衝撃音がして、…多分、発射の準備が整った?



香澄:「ニューホライズン打ち上げよりも高速のロケットで約2時間、半分は加速、半分は減速と軌道調整、地上から公転進行方向、垂直距離共に8万1500kmまで上がる。 当然、訓練してない私達の身体は諸々耐えられないでしょうけど、まあ何とかなるんじゃないかな。」


香澄:「寝てたら万里に叩き起こしてもらうわ。」

万里:『了解、優しく起こしてあげるわ!』


優美:「失敗したら?」

香澄:「2700秒後にニガヨモギは地球に衝突するわね。」


優美:「それで、私は何を手伝えば良いのかしら。」

香澄:「細かいコンピュータの計算をシロに翻訳してもらって現場で確認したいのよ。」



オペレータ:「発射します!」


轟音!!!!!!!!!!!!!!!!!!





アメリカ カリフォルニア州 サンブルーノマウンテン州立公園

公園内、全裸の女が目を覚ます…

瑠奈:「ここ、…どこ? あっ、アメリカ、」

瑠奈:「へっ! なんで私裸?」


瑠奈:「もう、転送する時裸になるなんて言ってなかったじゃない、万里ちゃん!」


身を隠す物は、何も無い。

幸い、辺りには人影無し…


瑠奈:「私、ここでどれ位気を失ってたの?」

万里『20分くらいかな。』



やがて、土煙と轟音を立ててヘリコプターとパトカーが駆けつける。


兵士:「Nice to meet you Runa, I am George in 51st state、、」

瑠奈:「だから、英語喋れないって!」






北海道千歳、第6師団作戦室


山猫コピー:「ロケット所定の位置に到着したわよ。」

万里:「ご苦労様、さあてアンタにはまだまだチャキチャキ働いてもらうわよ。 人類の為にね。」


山猫コピー:「あんた良い死に方しないわよ。 絶対!」

万里:「そうね、今度三回目に死ぬ時までに考えとくわ。」


南:「ニガヨモギ衝突迄 後94分です。 軌道・速度ともに変更無し。」






宇宙空間、作戦位置


優美:「どうやら、予定の位置に着いたみたいね。」


ハッチを開けて船外へ出る2人

全天を覆い尽くす輝く地球!


優美:「本当に地球って綺麗なのね。」

香澄:「今度、宇宙のラブロマンス小説でも書いたらぁ?」


優美:「カッスン! いい加減そのネタ止めてよね!」



香澄:「やるわよ! 黄龍!!」


ピアノの鍵盤に触れる様に、優しく強く、広げた指先で地球を感じる。




地球から、吸い上げられて来る砂…

柔らかに浮上し、風に舞い上昇気流に乗って、そして一気に加速する!


秒速3000km!



香澄達が載って来たロケット司令船に辿り着き、降り積もり、次第に大きな球体へと成長して行く地球のカケラ達。



優美:「何故私達が2時間かけて辿り着いた所を、砂粒ごときが30秒でやってくる訳?」

香澄:「さあ、考えたって仕方ないわよ、そういうルールなんでしょ。」



地上からはまるで砂嵐か竜巻の様に大量の砂が舞い上がる。


優美:「一体、どれ位の砂を集めるの?」

香澄:「うーん、山一個分くらいかな、たいした事無いよ。」


シロ:『妨害きたのだ!』





北海道、作戦室


南:「ニガヨモギ、軌道修正します! 速度上昇! 衝突地点変わります。 このままでは「的球」に当たりません!」


万里:「何処よ! 何処に居る!」


敵を、能力を行使する聖獣を探り出す。

今の私になら…解る! 「知っている!」


万里:『見つけた!』


万里:『瑠奈! 敵のイメージを送るわよ!』


カリフォルニアの瑠奈にイメージを転送!

瑠奈、「51州」のチームに貸してもらったカリフォルニア州警察の制服に着替えて待機中、



瑠奈:「えっ、どこ? 何これ? 万里ちゃん! 解んないよ。」


しようの無いお姉ちゃんね!


万里:『シロ! 敵の位置を「51州」に伝えて!』

シロ:『了解なのだ!』


宇宙のシロを仲介、精神感応で得た情報を電子情報に変換してスマホのマップに再現する。



手筈通り瑠奈を乗せて飛び立つヘリUH-72Aラコタ!


瑠奈:「ちょっと、高いの怖いんだってばぁ!」


瑠奈、半泣き!





再び宇宙空間 作戦位置


万里:『シロ、接触地点の変更、香澄に伝えて!』


優美:「香澄、あっちの方向にずれたわ。」


優美が適当に指差す。


香澄:「任せて!」


今や直径200mにまで膨らんだ「的球」が、動き出す!






千歳、


モニターを凝視する作戦室一同!


南:「「的球」動き出しました。」


山猫コピー:「全くもって出鱈目ね。 アレだけの質量を動かすのに一体どれだけのエネルギーが必要なのかじっくり教えてやりたいわ!」






サンフランシスコ、ファイナンシャルディストリクト

津波被害で閑散・放置されたビジネス街、


高層ビル群を縫って飛ぶラコタ!



人気の無い道路の真ん中で、祈りを捧げる? 三人の女?


瑠奈:「修道女?」

万里:『違うわよ、そのコスプレシスターズが聖獣の本体よ!』



ヘリの接近に気付き浮上する3人のグラマラス・シスターズ

いきなり火柱の連続掃射!


間一髪で回避するラコタ


ヘリ側面の扉がスライドし、瑠奈が身を乗り出す。


瑠奈:「高いとこ怖いって言ってんでしょう!!」


半泣きの瑠奈の肩に出現する朱雀のビジョン!

朱雀、シスターズに炎をお見舞いする!!



しかし、火の攻撃が効かない!



瑠奈:「上等! どっちの炎が熱いのかはっきりさせてあげるわ!」

瑠奈:「行け!朱雀!!」


空中すれ違い様、莫大な熱量が交差する。

機能を失って道路に墜落、横滑りするラコタ、




何故か無傷でヘリから降り立つ瑠奈、見上げる空に…


…上空から見下ろす三人のシスターズ


瑠奈に向かって降り注ぐ火柱の雨!



瑠奈の頭上に現れる炎の孔雀!

シスターズが放った全ての火柱は、瑠奈に到達する寸前で火の粉となって舞い上がる!


舞い上がった火の粉は濁流の様に束なり、炎の針の束となってシスターズに突き刺さる!!



更に朱雀は上空へと舞い上がり、ひときわ眩しく輝いたかと思うと…


シスターズの身体が昇華する!





千歳、


南:「ニガヨモギ、接触迄15分!」

万里:「当然、間に合うわよね。」


モニター上、「的玉」が「手玉」の進行方向に修正されて行く。






再び、宇宙空間…


優美:「アレかな?」

香澄:「どれ? よく分かんない、」


闇に浮かび上がるおぼろげな星? でもよく見えない。


香澄:「位置はここで合ってるの?」

シロ:『だいたいこんなもんなのだ。』

優美:「良いんじゃない。」



優美、瑠璃色の地球を仰ぎ見る。


優美:「ところでさ、私達どうやって還る訳?」

香澄:「うーん、考えてなかったかな…。」






再び、ファイナンシャルディストリクト


やがて復活し始めるシスターズ、

溶けたアスファルトの中からぶちぶちと煮えたぎる様に発生する肉の塊り…


瑠奈:「さあ、出て来なさい! 再生するたびに蒸発させてあげるから!」



瑠奈、蠕動する臓物のスープに唾を垂らす!














衝突は、…余りにも一瞬過ぎて良く判らない内に終わっていた。



砕け散った破片の幾つかは隕石群となって地球に降り注ぎ、 大半の質量は、どうやら思惑通り黄道面から逸れてどこかへ飛んで行った。





西野:「成功したのか。」


体操服の少尉が、椅子の背もたれに深く沈み込む 。

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