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エピソード12 復活のカイト

Episode12

登場人物

濱平 万里:主人公

度会 海斗:トルコ石の蛇を持つエインヘリャル

ガルム:猟犬の聖獣

吾妻 碧:青龍の尸童


海斗がベッドから転げ落ちる。

床の上に仰向けに転がって、虚ろな目で私の亡骸を見ている。


万里:『無茶だよ、逃げなよ!』



私の遺骸を抱きかかえたガルムが嘲る様に息を吐く。


ガルム:『心配するな、お前もちゃんと殺してやるさ。』



倒れたままの海斗の腕が、見えない牙に喰い付かれて血飛沫を上げる!


海斗:「うぁあぅ…!」


ガルムは、なぶる様に少しずつ海斗の手足を噛み砕いて行く。




万里:『海斗、逃げて!』


もう、私の声は届かない。


海斗:『俺が、守るんや!』


海斗の心の声が私に届く。



海斗は、忘れていたやり方を思い出すかの様に、ゆっくりと立ち上がる。


ガルム:『まだ動けるとはな、』



海斗:「くそぉ、…くそお!」


海斗がふらふらになりながら力ない拳を振り上げる。


ガルムはそれをにやけながら弄ぶ、



見えない牙が、海斗の指を…食いちぎる。 …脇腹の肉を切り裂く。


海斗、ぼろぼろになって膝をつく…



ガルム:『もう良い、そろそろ飽きた…』

ガルム:『この女も身体全部を運ぶのは面倒だ、腕だけで十分だな。』


ガルムの見えない牙が、私の左腕を、食いちぎる…。

腕を切り取られた私の屍骸が、床に転がる。



既に視力は失われいる。

痛みも感じない、それでも恐怖は私を狂わせようとする。




万里:『海斗、キスして…』


私は、必死で正気を保つ




万里:『海斗、キスして…』


海斗が、ぼろぼろになった私を見つめる。



ガルム:『サニワの断末魔の願いを叶えてやるが良い、それからお前もろとも息の根を止めてやる。』




海斗が、私の亡骸に寄りすがる。


万里:『泣いているのね。 御免ね、一緒に居てあげたかったのに。』


万里:『お願い、貴方だけは…生きて。』




海斗が、優しく私に口づけする。



万里:『山猫! ちゃんと出来てなかったら…殺す!』




血の紅が…海斗に唇に移る。



ガルム:『お前の様な出来損ないは、ヴァルハラにも、冥界へも還れんな。』


ガルムの見えない牙が、海斗の喉元に食らいつく!


海斗の喉仏を押しつぶし…

…食い込んで…行かない?




海斗の、左腕が展開する!


中から出現する二本の金属棒、その先には二つの青い宝石、


一瞬、辺りに「無音」が鳴り響く!




青い宝石を中心に、燃え広がる強烈な閃光!

射程距離は、恐らく半径10m、



ガルムが身体の自由を奪われている?



もう一発、フラッシュ!












気がつくと、

私はベッドに寝転がって、じっと天井の蛍光灯を眺めていた。



そっと左手を上げてみる。

食いちぎられた筈の腕は…ちゃんとあった。



助かったのか。


万里:「便利な物ね。」



果たして目論見通り「トルコ石の蛇」は公約を果たしてくれた様だった。


まさか、自分が再び生き返れるとは思っていなかったが…




万里:「吾妻さん、居るのかな?」

碧:「ええ、居るわよ。」


また、ずっと傍に付き添っていてくれたらしい。



私も、もう2回も死んだから、いい加減腹を決める事にした。


これが私の現実だ。





万里:「ほら、分かる?」

万里:「ここに、山猫が居る。」


私は、私のイメージを吾妻に、吾妻の中に居る青龍に伝える。

青龍が、瞬時に情報をスキャンする。



空気中に形成されて行く山猫の身体…

ものの一分も立たない内に完成する男の肉体。

生まれたばかりの山猫は、裸のままぐっすり眠っていた。



碧:「出来ましたね。」

万里:「意外と簡単だったわね。」



体育会系少女が、横たわったままの私の視界に飛び込んで来る。


万里:「残しておいてくれた?」

碧:「ええ、元の身体はそのまま残しておいたわ、」

碧:「でも、どうするんですか…このコピー。」


万里:「そうね、死ぬ迄蹴ってみよっか。」


吾妻、苦笑い。




深呼吸して肺の中の空気を入れ替える。


万里:「よいしょ!」

といって起き上がる。


見ると、医務室には所狭しと患者が寝転がっていた。

カワウソ聖獣の毒ガスにやられた人達だろう。


万里:「全部生き返らせたの?」

碧:「まあ、半分は人体コピーの練習みたいな物だけどね。」



辺りを見回しても、彼の姿が見当たらない。


万里:「海斗はどうしたの?」


碧:「さあ、」

万里:「…いいの、分かるから。」


万里:「あの子、屋上で、ぼんやりと景色を眺めているわ。」




海斗の心に触れる。


海斗:『ねえちゃん。』

万里:『海斗、お帰り。』


海斗:『俺、どうすればええんや。』

万里:『いつまでも泣いていても始まらないわ、…人類を救いましょう。』


海斗:『なんや、それ、』


海斗が笑ってる。






吾妻と一緒に作戦室に戻る。

…いや、垂れ幕の位置が変わっていた。


碧:「さっきの部屋、聖獣に壊されたんで別の部屋をもらったのよ。」


垂れ幕には何故か「加地伊織と五行聖獣軍団」と書かれてあった



新・作戦室の中では死んだ筈の5人+西野が機材を調整していた。


香澄:「お帰り…」


源は何だか昼間っからウォッカをラッパ飲みしている。



万里:「どしたの? 何かのお祝い?」


香澄:「消毒よ…」

伊織:「香澄の奴、顔燃やして自殺しようとしたんですよ。」



ああ、さっきのディープキスは確かにトラウマだろう…

もう一人の眠れる森の妹キャラは…


…珍しく落ち込んでる。


万里:この子でも感情表現するんだ。




万里:「とんだ邪魔が入ったけど、状況はどんな具合?」


一同、吃驚する!

鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔…


…何? 私が仕切るとそんな変??



香澄:「「ニガヨモギ」は到達迄10時間を切ったわ。 問題は「巨大ミミズ」の方ね、」


万里:「水曳いたんじゃなかったの?」

香澄:「姿をくらませたわ、」


万里:「消えたの?」

香澄:「大量の「最後っぺ」を喰らわせて消えたわ、今、急激な水位変動の影響で信じられない位世界規模の津波が起きている。 さっきこの基地の前の通りにまで水が押し寄せて来たのよ。」


香澄:「それと、最後に排泄したガスはやはり毒みたいね、…海棲生物の3割が死んだわ。」




万里:「そう、」

碧:「でも、いいニュースも有るわよ。」

碧:「山猫を使った人体転送の実験は成功したわ。」



香澄:「それは良かった。 では何処に転送しましょうか、…西野、どこか良い避難場所はある?」


西野:「東の駐屯地に場所を借りて仮設の収容施設を用意する事は可能かと思われます。」



万里:「それじゃあ吾妻さん、これは小手調べよ。」

碧:「はい?」


万里:「今から空に囚われた全ての人々と交信して青龍に伝えるわ、貴方は片っ端から転送してくれる?」



伊織:「青龍を召還して完全体にしましょうか?」


万里:「これ位の事は「不完全体」で出来る様にならないと駄目だと思うの。」

碧:「一体何人居るの?」


西野:「現在旅客機が着陸出来ずに行方不明になっている乗客の数は83万6667人です。」


香澄:「一人1秒で転送出来たとして、230時間以上はかかる計算ね。」




碧:「伊織ぃ…、」


吾妻、半泣き…



伊織:「頑張れー!」




そうだよ、

私達ならきっと出来る。


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