表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第二部完結〜第三部へ】転生薄幸令嬢の奇妙な愛人契約――イケオジパトロンか富豪貴族か――えっ二股愛人ですと?  作者: 赤城ハルナ
【第二部】スキャンダル王ランベール・ギーズの憂鬱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/22

ギーズ邸の奇妙な住人――疑惑の悪妻

~~~~~~~~

★隣国からの亡命貴族ランベール・ギーズ周りの、軽そうに見えて重い事情です。

~~~~~~~~

 僕の朝は遅い――大切な奥様も。


 今朝もご機嫌伺いに、奥様専用の寝室へ行く――忍び足で――まどろみを壊さないように。


「朝ですよ、エレン」

「う〜〜ん、もう?」

「起きましょう、マダム。モーニングティーですよ」

「今朝は何?」

「ブルーベリーティーでございます、奥様」

「ストロベリーがよかったわ」

「わがままが過ぎますよ、奥様。ですが許しましょう、僕はあなたの奴隷ですから」


 エレンの額にさりげなくキス。

 ついでに頬にも。

 ついでに……。


「も〜ランベールったら、何をコソコソしてるの?」


 あぁ、今日も失敗。


「べ、別に何も……していませんよ、麗しの奥様」


(結婚してるのに……)


 しかしこの結婚は、貴族籍が欲しかったエレンと、まとまった資金が必要だった僕の『共犯』のようなもので……はじまりが『事後事故』だったとしても。


 朝食は、シェフのジャン・ジロー特製『亡き王国のキッシュ』に、たっぷりのカフェオレ。僕は軽食用ダイニングで、奥様は陽光をレースカーテンで遮ったサンルームで、侍女たちと共に。


 今日の予定は出版社とお抱え芸術家巡り、奥様は『侍女』という名のセントレ家用心棒(複数)とエステ通い、そのあとはパーティー巡りだ。


 現在僕は、クーデターで祖国から逃げてきた芸術家のパトロンをしている。宮廷お抱えだったシェフのジャンも、僕を頼ってこの国へやって来た。

 クーデター政権が終わらない限り、僕たちは祖国に帰れない。何しろ処刑された僕の祖父母は、新興貴族なのに頑固な王党派だったから。

 今更王政というのもどうかとは思うけどね。


「ジャン、ミシェルのピアノ・リサイタルを来月わが家で開催するから、簡単につまめる素敵なメニューを考えておいて」

「お任せ下さい、旦那様。クーデター政権が発狂して暴れ死ぬようなメニューをご用意いたします」

「それはいいね」


 ピアニストのミシェル・バルビエも亡命組だ。彼は王宮でピアノを弾いていた。王妃のお気に入りだったのだ。彼のピアノが好きな僕はギーズ邸に招いた。近々新作『将軍様のエチュード』をわが家で発表する予定だ。


「旦那様、一週間遅れの祖国の新聞でございます」

「どうなったかな、わが祖国は」

「首都のレストランにて、反クーデター集会があるそうです」

「相変わらず耳ざといね。じゃあ、匿名でワインとオードブルを用意して。予算はいつも通りで」

「かしこまりました。これは昨日配達されました、旦那様宛てのお手紙でございます」

 有能な執事が新聞と手紙の束を差し出した。


 執事のパスカルほか数名の使用人も亡命組だ。祖国のギーズ家タウンハウスをクーデターのお偉いさん――処刑人と言うべきか――に没収されたため、行き場を失った。


「ミセス・ロイド、ミセス・ケーヒル、ミセス・ムーニー……」

 手紙の大半は有閑未亡人からだ。

 最近はそういった熟女フレンズとの逢引きを控えている。アイラ嬢にバレたら軽蔑されるかもしれないからね。あの虚ろな、けれども純真な、汚れのない目で非難されたら、立ち直れそうもない。


(過激なクーデター政権が終わったら――さて、どうしよう――エレンを祖国へ連れて行く? それはセントレパパが許さないだろう。では、アイラ嬢は?)


 ウォルティーと出版社へ顔を出し、くだらない噂話を選り分け、遅いランチをしたあと、パトロンをしている画家との打ち合わせを終えて屋敷に戻ると、エレン奥様が侍女を伴って馬車に乗る所だった。


「おや、奥様。今宵はどちらへ?」

「パーティーよ、銀行組合の」

「うん? フリップもそんな事を言っていましたよ?」

「偶然じゃないの。わたしはパパのエスコートで行くの、セントレの大事なお付き合いだから。今夜は実家に泊まるから、帰りは明日の夕方になるわ」

「ハハッ、僕の奥様はいつもながら正直でいらっしゃる。僕の部下をペットにするとは」

「フフッ、ランベールもね。聞いてるわ、あなたのところの新人作家」

「……」


 華やかで洗練された装いの奥様を馬車までエスコートすると、奥様はセントレ銀行のホールへ向かった。


(フリップのヤツ、チクったな!)


 エレン奥様の奔放さは今にはじまったことではない。何かをしでかしたとしてもパパが全力でカバーするから、気にしていないのだ。


 ――来月画家仲間とタンディーゴルフ場へ行くから、ゴルフウェアを一新しよう。その後はミシェルの新作発表を兼ねた演奏旅行だ。


 あぁ、忙しい。


 無表情で虚ろな、何を想っているのかつかめない不思議な目。まるで人形のようなアイラ嬢。僕には彼女の癒しが必要だ。





 そんな忙しい日々を送っていた矢先、アイラ嬢が知らない男にさらわれた。


『実は、わたし、ぶ、ヴェストル伯爵家に、行く、ことになりました』


(――誰だ、その泥棒野郎!)


 どうやらその男は伯爵らしい。

 爵位が下で、しかも亡命貴族である僕に太刀打ちできるのだろうか。


『一年間の、契約なんだ、そうです。先方が『ご所望』、だと』


 ご所望!?

 その契約自体が眉唾ものではないか! 僕が親なら絶対に断る。一体サウス家はどうなっているんだ!?


『そんななおかしな話をなぜ引き受けたのですか?』

『う~ん、叔父に、言われたから』

『……困ったことになりましたね。今からでも契約を断ることはできませんか?』

『断われ、ません。両親が死んで、叔父に、引き取られた、から』


 おそらく彼女は金と引き換えに、高位貴族へ売られたんだろう。今のサウス家は金なら何でも欲しいだろうから。僕がもう少し早く彼女を救い出してさえいれば、こんな事にはならなかったのかもしれない。彼女を自立させるために家政婦付女性専用アパートを用意した直後だったのに。


 悔やんでも悔やみきれない。


 もしもこれが『愛人契約』だったら?


(許せない!)


《ヴェストル伯爵絶許!》


(待てよ、『ヴェストル』……ウエスト家のことか……では、例の……)


 サウス家と同時にそいつの調査もウォルティーに依頼しよう。


 僕は謎契約を強いられた、〈虐げられたエンジェル〉との連絡を取るため、伯爵家に出入りしている書店業者を調べた。その結果、アーチーという貴族専門の御用聞きに連絡係を依頼することにした。


「ウエスト邸にいる女性の客人へ、わが社が発行している書物の売り込みに行ってほしい。彼女に本を売ることができるのは、あなただけだ」

「かしこまりました、ギーズ卿。しかし、あのお屋敷に女性がおりましたか? 先代の奥様は領地で療養中と聞いております」

「若い当主の客人らしくてね」

「ほう……初耳ですね」

「当主がしばらく不在のためか、その女性は離れで生活しているとの情報があってね」

「『セカオピ』の裏取りがあるのでしたら、そうなのでしょう」

「周囲に気付かれないよう、慎重に接触してくれるかな」

「かしこまりました」


 何とかアイラ嬢の現状が分かるようにしたものの、一年間という長い期間拘束してしまう謎の契約。その後アーチーから渡されたアイラ嬢からの手紙で知ったのは、訳の分からない支離滅裂な契約内容だった。


(愛人契約ではなさそうだが……アホか? ヴェストル伯爵という男は、アホなのか!?)





『一年後、再会しましょう。必ず迎えに行きますから。どうかご無事で』


 アイラ嬢との約束。

 絶対に果たさなければならない。

 そのためなら少しくらい道理を捻じ曲げても構わない。

~~~~~~~~

☞アイラとランベールから『アホ』認定されたヴェストル伯爵。本人はそんなこととは知らず、一生懸命お仕事をしているらしいです。お仕事頑張ってください。

☞次回からしばらくアイラのターンです。

~~~~~~~~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ