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【第二部完結〜第三部へ】転生薄幸令嬢の奇妙な愛人契約――イケオジパトロンか富豪貴族か――えっ二股愛人ですと?  作者: 赤城ハルナ
【第一部】転生薄幸令嬢アイラ・サウスの脱出

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第一回目謎契約――疑惑のヴェストル伯爵

「「「ようこそウエスト邸へ」」」


「……よ、よろしく、お願い、します……」


(サウス邸の使用人さんやメイドさんたちとは、制服も所作もレベチ)


 ゴシックな調度品と暖炉がある応接間に通された。

 サウス邸の応接間は、装飾品だらけという意味では豪華だったけれど、ここは最低限のみで質実剛健という感じ。それだけに、威圧感が凄い。


 ソファに座るなり、メイドが飲み物とお菓子を用意した。

 美味しそう~だけど……吐きそうなので、今は無理。


(助けて、苦しい……)


 ソファテーブルを挟んだ向かいに座っているのは、二十五歳だという伯爵様ではなく、執事さんと思われる熟年オジサマ。表情が硬くて石のよう。石化魔法をかけられているみたい。

「アイラ・サウス男爵令嬢、ようこそウエスト邸へ。大変申し訳ありませんが、ヴェストル伯爵家当主のジェシー・ウエスト様が国外への出張で一年ほど不在のため、ウエスト邸の執事をしておりますわたしが、契約についての説明をさせていただきます」


(あっ、そう……)


「初めまして、アイラ・サウス、です。よ、よろしく、お願いします」


 伯爵様はジェシー・ウエストという名前なのか。しかも一年間不在。サウス叔父はその事を知っていて、上手く話せないアイラでも問題ないと思ったということ?

 とりあえず愛人契約じゃなかった、助かった~。

 だがしかし!

 本当なら今ごろ、ランベール様に紹介してもらった女性用アパートで小説を書いていたはずなのだ!


《ジェシー・ウエスト絶許!》


《ハゲろ、ハゲてしまえ、髪の毛一本だけ残して丸ハゲになってしまえぇ!》





「では、当主様とアイラ嬢との契約内容を説明いたします。アイラ嬢はこれから表向き当主様のお連れ様として、一年間ここで過ごしていただきます」


(お連れ様?)


「契約内容は次の通りです


・契約期間は一年間

・表向きのお連れ様

・外出は禁止

・手紙のやり取りは禁止

・商人以外の男性と会うのは禁止

・危機管理は自己判断に任せる

・ときどき表通りに面した外庭で散歩をする


 あとは自由にお過ごし下さい。

 以上ですが、質問はございますか?」


(?『表向きのお連れ様』『危機管理は自己判断』『外庭で散歩』?)


 ナニコレ。

 アホか? 伯爵(二十五歳)はアホなのか?

 謎が謎を呼ぶ謎契約。ツッコミを入れようにも気分が悪くてできない。


「お手数ですが、書面を確認して下さい」

「はい」

「これでよろしければサインをして下さい」

「はい」

 わたしは内容をろくに確認もせずサインをした。内容の理解ができないから。

「では、これで契約成立です。本日からよろしくお願い致します、レディー」

「よろしく、お願い、します」

 どうでもいいから早くコルセットを脱ぎ、洗面所へ行って思い切り吐きたい。


「ところで……」


(まだ何かあるんかーい!)


「旦那様からの贈り物でございます。手紙と指輪です。これは常に指にはめていて下さい」

 執事さんから渡されたのは、一通の手紙とシルバーの指輪だった。

 そのあと二階にあるというわたし専用の部屋に通された。

「アイラ嬢のお部屋は二階でございます」


(素敵! ヒラヒラフリルレースのカーテン、ベッド、テーブルクロス。ザ・お嬢様のお部屋だわ!)


 ところが使用人同士で何やら揉め事が起こり、わたしは数人の使用人によって罪人のように連行され、屋外の離れへドナドナされた。


(えっ、またまた何で? サウス家と同じじゃん!)


「アイラ嬢、申し訳ありません!」

 執事さんは謝罪していたけれど、訳が分からない。

『これからアイラ嬢のメイドをさせていただきます』と挨拶してきた、なぜか上から目線のメイドにコルセットを取ってもらい、わたしは洗面所で思う存分吐き、デイドレスに着替えてベッドに倒れた。


(もう、勘弁して)


 これからわたしの謎契約生活がはじまる。ただし、外交補佐官らしい契約者様は不在です。


(どうでもいいや……だるいし……)





 ウエスト邸の離れは外庭の木々に隠された平家だった。


 北橘ほっきつ佳奈の部屋が五つくらい入りそうなリビングルーム、ブルー系で統一された広いクローゼット付ベッドルーム、清潔なバスルームの1LDK。カーテンは全てブルーレース。最初に通されたフリルレースの部屋とは異なり落ち着いた雰囲気。少し暗め。

 リビングの片隅には、古ぼけた刺繍セットが置かれている小さな作業机、エンジのプリンセスチェアがあった。真っ白な壁には若い貴族女性の肖像画。


(誰かが暮らしていたのかな?)


 その後普段着用ドレスや下着、防寒用ショールなどがクローゼットに運び込まれ、しかも、契約期間内に使えるお小遣いまでもらっちゃった。

 さっすが伯爵家!

 これでちょっとした贅沢ができるかも。アイラちゃん人形も連れて来たから、また一緒だね。


(伯爵様からの手紙を読んでみよう)



~ ~ ~ ~ ~

アイラ嬢へ


初めまして。

ヴェストル伯爵家当主ジェシー・ウエストです。


社交シーズンもとうに過ぎ、新年の準備に忙しい折、いかがお過ごしでしょうか。

私はまだ見ぬアイラ嬢に手紙を書く栄誉にあずかり、心躍らせています。


さて、今回のサウス家とウエスト家との契約についてですが、突然のことで混乱したかもしれません。私は外交補佐官として一年間国外へ行かなければならなくなり、残念ながらアイラ嬢とお会いすることが叶いません。こちらの勝手な事情とはいえ、大変申し訳なく思っています。

その代わり、相応の報酬と心付けをご用意いたしました。

一年間もの長きに渡って契約を履行するにあたり、何か不都合な点がありましたら、遠慮なく執事のメルヴィンに相談して下さい。


アイラ嬢がウエスト邸にて心地よく過ごせますように。


ジェシー・ウエスト

~ ~ ~ ~ ~



(時候の挨拶ですかね?)


 ともあれ謎の契約社員(?)生活がスタートしたのであった。契約金はサウス叔父に支払ったと思うから、わたしへの給料はお小遣いのみ。三食昼寝付きだから構わないや。キャンドルがあるから夜でも小説が書けるし。

 季節は冬、寒そうなサウス家の小屋とは断違い。わたしの青春を一年間買ったジェシー・ウエスト(クズ男)は頭にくるけれど、この環境には感謝かも。


 これからわたしのネクストステージがはじまる。何事もなく過ごせればいいんだけど……。



Φ Φ Φ



『エリーゼお嬢様、どうやらウエスト邸に伯爵様の愛人らしき者が現れたようです』

『な、なんですってぇ!? 許せない、許せないわ、ブッコロ!』



~『【第二部】スキャンダル王ランベール・ギーズの憂鬱』に続く~

~~~~~~~~

☞これで【第一部】は終わりです。次回から『【第二部】スキャンダル王ランベール・ギーズの憂鬱』が始まります。亡命貴族ギーズ子爵家周辺の不穏なアレコレ。悪妻や悪役令嬢モドキが登場します。

☞第二部は来週から再開します。

~~~~~~~~

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