21 冒険者は意味が分からない人たち
今日はアルバイトとボランティアの人たちがやってくる日。僕たち家族とレーナ姉ちゃん、つまり父さん以外の総出でお出迎えするんだー。
父さんはこの前、スリランカに移動したってメールが来てた。
そのうちまた、よく分かんない植物が送られてくると思う。
「あ、こんにちは、支部長さん」
「ああ、こんにちは。みんなを連れて来たよ。後はよろしく頼む」
「ありがとうございましたっ」
チーちゃんだ、生チーちゃん可愛いとか、ざわざわしてるよ。チーちゃん人気がスゴイね。レーナ姉ちゃんが静かにするように言って軽く説明をしてる。みんなも注意書きは読んでくれてるだろうけど、一応ね。
当然だけど仕事中の撮影は禁止になってる。でも仕事終わったあとならオッケーだよ。撮るのに夢中になったらダメだから仕方ないのだ。
改札口のブース前とかは人気スポットになるんじゃないかな?
「事前に伝えた通り、こっちの追尾カメラで撮影することになる。NGな人がいたら除外するので教えて欲しい」
ってレーナ姉ちゃんが聞いたけど、みんな撮影されても問題ないって。むしろ編集前の動画が欲しいらしい。
あー、分かるかも? その気持ち。僕もカットしたくないしなあ。
「極秘部分が映っているかどうかはチェックする。だけどそれ以外なら問題ない」
「でもカメラのほうで設定してるから平気だよね」
「うん。私のチェックは念のためよ」
「じゃあ明日から1周間お願いします!」
「「「お願いします!」」」
前のときみたいに3日じゃ短いってことで、期間は1週間になったんだ。抽選してチェックもするからね。連続して募集するけど、間を空けずにバイトの人を入れるかどうかは分かんない感じ。
試してみてから、かなあ?
「ところで太一くん。今からでも俺たちは働きたいんだが。な?」
そんな問いかけに冒険者さんたちはウンウン頷いた。
「え? ご飯の準備とか寝床のチェックとかは、いらないんですか?」
っていう質問に、待ちに待った瞬間が今だっていう回答が返ってきたよ。
「どうする? レーナ姉ちゃん」
「うん。気持ちは分かる。皆がそれでいいなら、さっそく働いてもらう。おば様、お婆様、予定通りボランティアのかたたちをお願い」
「分かったわ!」
「ええ。太一、失礼のないように。来ていただいているのですからね」
「うん。分かってるよ!」
1層のボランティアの人たちには、婆ちゃんと母さんが対応してくれることになってる。テントの中で遊んでもいいし、みんなで一緒にお世話したっていいしね。
そんな説明と、ハムハムやぺんぺんたちが喜ぶポイントなんかを説明してる。
「僕たちは2層に行きまーす」
僕は運営側なので、フリーパスのカードを作ってもらった。僕だけ通れないとウチ専用の階段まで戻らなくちゃなので。
ピッできるようになったんだー。
「こっちよ。付いて来て」
「おう」
「楽しみ。ついに私が名付けた、しらたまちゃんと会えるんですね!」
「おおっ、キミが? 実は俺も、いがくらさんの名付け親」
「おー! お名前ありがとうございます! いっぱいいるし、いい名前付けたいしで全然思いつかなくなっちゃって」
「やはり可愛い名前ならばOK、ということにしないと決まらないわ、太一くん」
「だよねえ。名前ないの可哀想だし、最近そうしよっかなーって考えてたんだ」
レーナ姉ちゃんが言うには、心が折れた冒険者さんもいるんだって。
「15お名前程度で折れるとは情けない。私なんて不採用のお名前は62よ」
「え!? レーナ姉ちゃんってそんなに送ってんの?」
「そう。応募フォームに送ってる分だけでも、62お名前を太一くんに否決された」
「ええ? 僕に見せる前にチェックしてるじゃん? 自分のは通すの? そこ」
「もちろん」
「ズルじゃん!」
2人の冒険者さんもズルいズルい言ってるし、やっぱズルだよね?
「改めて見て、ダメだと思ったのは自ら不採用にするけど──私も選ぶ側。当然の権利よ」
そうかなあ?
「さすがレーナ姉ちゃんですね」
「レーナ姉ちゃんは現実でもレーナ姉ちゃんなんだな」
「あなたたちにレーナ姉ちゃんと呼ばれるいわれは……ないわよ?」
「スマンが1でレーナ姉ちゃんへの諸注意を付け加えたの俺だわ」
「私はしらたまちゃんが採用されたから、不採用四天王になり損ねた冒険者です」
レーナ姉ちゃんに机はちゃんと新調したのかとか聞いてる。
なんかみんな知り合いっぽい?
レーナ姉ちゃんに聞いたら、文字の人だって。
「文字の人って……意味分かんないよ」
「映像がなくてもコメントしてる感じの人たちですよ」
「だな。太一くんは気にしなくていい」
「太一くんは穢れちゃダメ」
「????」
穢れのことみたいだし……知らなくていいことらしい?
大人の世界ってヤツ?
それともオバケ系かな?
「どっちにしてもいっぱい送ったらダメじゃん。いっぱいチェックするのメンドクサイかもだよー」
「太一くんも太一くんでしたね」
「ああ。そのまんまだったよ、アンタらは」
よく分かんないけど赤ちゃんモンスターのみんなが、向こうでウズウズしてるからね。お世話を開始しちゃおうよ。
「チーちゃん、みんなを呼んできて」
「基本的に遊んであげればいい。駆けっこやボール遊びみたいなこと」
「私はフリスビーを持ってきました」
「俺は縄。縄跳びにも使えるし綱引きもできる」
「そういうの、助かります! 僕、体力ないからなあ」
「アスレチックみたいな設備を揃えるのも、いいかもしれませんよ?」
「モンスターだから能力は高いんだろ? 障害物の壁なんかでも喜ぶと思うぜ」
「クッ、思い付かなかった……」
「僕もっ」
ガシッと後ろから抱き着かれる。
「レーナ姉ちゃん?」
「ダンジョンマスターの力を使おうとした」
「アッ」
「おいおい、気を付けてくれよ?」
「そうですよ。私たちが帰ったあとにして下さいね」
「……アルバイト中止前の3人にも確認したほうがいいかもしれないわ」
「向こうも分かってるとは思うがな。必要だろうさ」
「こういうムーブも慣れないといけませんね、太一くん」
「うん」
「私は確認してくる。ここは任せる」
ダ、ダイジョブだと思うよ?
「さ、遊ぼうぜ。みんな待ち構えてるだろ?」
「そうですね!」
「じゃあ僕は自分の体力強化のヤツやりますね。自転車で走り回るだけだけど」
「気を付けてね、太一くん」
「はーい」
「俺は全力駆けっこしてみるかな、いくぞみんなー! どりゃあああぁぁぁっ」
速ぁ!?
「じゃあ私は空の散歩をしてきますね。おいでー」
飛ぶの!?
「ぼ、冒険者さんって意味分かんない人なんだね、チーちゃん」
ムリだよ?
一生懸命引っ張ってもムリムリ。
いくらなんでも人は飛ばせられないでしょ。
カワイイは弾けてるけどね!




