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3 後悔先に立たず

1


 バチバチバチバチバチバチ


 ドッガーン


 バゼロフが弾けた。部屋一面が炎と雷に覆われる。


(クリッド! )


 ユーズレスがクリッドを引っ張り出した。


 ユーズレスが素早くバックパックから『流体金属』を取り出す。


 パリン


 流体金属が体積を減少させながら形を変える。


 ユーズレスは大盾であるバベルを選択した。至近距離からの爆発ということもあって、一瞬で大盾は溶けた。


「《強奪》」


 だが、その刹那の時間でクリッドが出し惜しみなしの《強奪》を発現した。


 黒い闇に炎と雷が飲み込まれていく。


「うっぷ、気持ち悪いメェェェッ」


 クリッドは限界だったようだ。疲労も重なり、魔力酔いのようになった。


 残念ながら、爆裂黒炭酸とお菓子はリバースされた。




2


瓦礫となった主部屋からは超特大の純度が高い魔石が二つとバゼロフの一角が見つかった。


トロント迷宮は踏破したが、正直いって今回のバゼロフは実力ではなく搦め手で倒したため、余り参考にならなかった。


「なんだか、雷系の魔法を取得したメェェェッ」


 バゼロフの雷を《強奪》しまくったクリッドは雷の適正を取得した。本来、雷系の魔法は神々か使徒にしか扱うことができないものだそうだ。悪魔が、新たに能力を持つのはいままでに前例がないことだった。これは、真なる悪魔であり真名持ちであるクリッドだからかと補助電脳ガードは推察した。




「一回、秘密の部屋に戻りたいです。ユーズ兄上の美味しい料理が食べたいですぅ」


(賛成)


『異議なし』


 悪魔と機械に疲労という言葉があるかは不明だが、クリッドの頑張りのご褒美としてユーズレス達は一度『秘密の部屋』に戻った。




3


 秘密の部屋


「ウンメェェェです! このジャガバターは! トロっとした触感にバターの濃厚さがマリアージュだメェェェッェェ」


(まだまだいっぱいあるぞ! )


『テンス! あれも』


 ユーズレスと補助電脳ガードは大盤振る舞いした。


 ジャガバターから、チーズとトマトソーストロトロのピザ、カレーにトンカツ、特にトンカツをクリッドは気に入った。


「ああああああ! アツアツのカツに繊細なソースの味が」


(マヨネーズもあるぞ)


『カレーに入れるとカツカレーという人類の神秘にたどり着きます』


「あわわわっわわわ! そんな、背徳的な行いを神々はお許しになられるのでしょうか! ああああああああ! カツがカレーの海を泳いで、マヨネーズが……ウンメェェェ! ウンメェェェ! なんですか! この美味さは! 死んじゃうメェェェ」


 秘密の部屋にある食材はクリッドの暴走でほとんど無くなった。


 前回のクリッドの凶暴化で、研究室の機材が壊れ食糧庫のコントロールが効かなくなったのだ。新たに食料が生産されなくなった。


 だが、いつまでも食材を残しておけないので片づけることにしたのだ。


 ユーズレスも機械ビールを久しぶりに飲んだ。


 調子に乗ってユーズレスが『爆裂黒炭酸』にウイスキーをちょっと入れた。


「メェェェ! 」


 クリッドは暴走した。


 ユーズレスも暴走した。


 良く分からないが何故か、いままでドロップしたアイテムを鍋で煮てみたりした。


『ビィー、ビィー、悪魔と機械人形にバクが発生しました』


 二人は酔い潰れた。




 起きたら二人の目の前にはとんでもないことが起きていた。




4


『ビィー、ビィー、《鑑定》……魔笛と神誓薬と断定します。神話級のアイテムです』


 補助電脳ガードが呆れたようにアナウンスする。


「うーんと、これは一体? 」


(なんだろうな? )


 クリッドとユーズレスは散らかり放題になっている部屋を見まわした。


 まるで泥棒が入ったかのように、部屋には食い散らかしたウンメェェェ食べ物に、飲みかけの酒類や機械ビール、迷宮からドロップしたアイテムや魔石が散乱していた。


『二人とも昨日のことを覚えていないのですか? 』


「まったく」


(デリートされているな)


 補助電脳ガードは呆れた。


 昨日、クリッドとユーズレスはいままでの振り替えりをしていた。新たに迷宮を作るためのちょっとした話し合いだ。新たに人工迷宮を作るときの、魔獣や迷宮ごとの特性、階層ごとの強さや、罠、ドロップアイテム等を協議していた。


 そのうちに、クリッドのお腹が空いて『霊獣バゼロフ』のお祝いで食材庫を大盤振る舞いした。酒も解禁した。ユーズレスも久しぶりに機械ビールを飲んだ。


 楽しくなった二人は、互いの『四次元』から戦利品を取り出した。


 特級の魔石や、高位の武具、迷宮主の素材等、控えめにいってお宝だらけであった。


 詳細は省くが、酔った二人は何故か料理を始めた。


「史上最高のスープを作るメェェェ! 」


 クリッドの暴走は止まらなかった。


(史上最高のスープを作るには最高の素材で出汁を取るんだ! )


 ユーズレスも暴走していた。


 二人は事もあろうか、鍋に『神獣フィールアの一角』『霊獣バゼロフの一角』『クリッドの角』、『液体の宝石』、踏破した迷宮主の特級魔石を二桁とご乱行をした。勿論、『爆裂黒炭酸』も混ぜた。


 その刹那に世界が沈黙した。


『理なる境界線を越えました。自動修正します』


 誰か分からない声が聞こえたが、二人は酔っぱらって気付かなかった。




 こうして良く分からないレシピの末にできたものが二つ。


『魔笛』


 高確率で不幸を呼び寄せる。低確率で幸福を呼び寄せる。神々からも干渉を受けない。



『神誓薬』百回分(10リットル)


 すべての病気、怪我、状態異常、呪いを癒す。神々からも干渉を受けない。




 三人は取扱いに非常に困っていた。

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『機械人形(ゴーレム)は夢をみる~モブ達の救済(海王神祭典 外伝)』 https://ncode.syosetu.com/n1447id/
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