表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

398/423

1 霊獣麒麟バゼロフ

1


 トロント迷宮 百階層 深層主部屋




 バチバチバチバチバチバチ


 迷宮内に稲妻が舞い降りる。


 神獣フィールアに負けない一角に雷と炎を纏った麒麟が出現した。


「メェェェェェェ! 聞いてないメェェェェェ!なんで、オルフェノクじゃないメェェェ! 」


 クリッドが悲鳴を上げた。


『ビィー! ビィー! データー照合できません。《演算》 恐らくでありますが霊獣麒麟、個体名バゼロフと思われます』


(バゼロフって! 古代図書館で見た伝説の生き物だろ?)


 補助電脳ガードとユーズレスも驚愕する。


「シャチョウ! このトロント迷宮は鹿型の魔獣オルフェノクがボスじゃなかったのかメェェェ? 」


『恐らく、イレギュラーです』


(なんでいつも、剣帝殿の時のように裏ボスばっかりなんだよ)


バチバチバチ


『二人とも! 来ます!』


 稲妻が迷宮を支配した。




2 


 三か月前


「兄上、シャチョウ、地上をまた虹を見れるような世界にしましょう」


 クリッドがユーズレスと補助電脳ガードにいった。


 クリッド達は、秘密の部屋に戻って考えた。どうしたら地上を生物の住める環境に戻すことができるだろうと……


「思ったのですが、このパンドラの迷宮はどうやって魔獣を生成しているのでしょうか?」


 クリッドのその一言が決め手だった。


 パンドラの迷宮はユフト師が作った防衛機構であり、人工ダンジョンである。そのエネルギーは魔力粒子から取り込み、魔獣を生成し魔石、罠、プログラムによるドロップ品が生成される。


『簡単にいうと、人工迷宮を作りまくって地上から過剰な魔力粒子を吸収してもらう訳ですね』


(でも、調整間違えると魔獣とか大量発生しないか? )


「それでは、迷宮から溢れた魔獣だらけの世界になってしまいますね。個人的には、人類には以前の文明とまではいきませんが、美味しいものを開発してくれるレベルまで戻って欲しいところです」


 ちなみに悪魔に飲食の必要はない。


 討論の末にユーズレスたちは現在ある迷宮を参考にすることにした。


 秘密の部屋には、人工迷宮を作成するノウハウがあったのが救いだった。


 そのため、ユーズレスたちは小規模、中規模、大迷宮の攻略を始めた。


 小規模迷宮と中規模の迷宮は合わせて十近く踏破したが、正直、ユーズレスやクリッドには簡単すぎた。補助電脳ガードが観察と記録をした。ただ、補助電脳ガード曰く、中規模の『ダイアン迷宮』だけはお勧めしなかった。


 どうやら、ダイアン迷宮の門番であるブラックロータスは大迷宮主並みの強さで、その先にある迷宮主とは別の意味で絶対に戦っていけないとプログラムにあったようだ。


 そこで、三人は大迷宮トロントへ挑んだ。


 迷宮主である鹿魔獣オルフェノクは、データーベースにもある魔獣で、大迷宮の中では比較的討伐しやすい魔獣だったからだ。




3


 バチバチバチバチバチバチ


 ボワッ


 バゼロフから纏った雷と炎の勢いが増した。


 ユーズレスとクリッドに《雷撃》が迫る。


『《魔法抵抗》』


 バチーン


(ぐううううう! )


 ユーズレスが右手で《魔法抵抗》による障壁を発現し《雷撃》をレジストした。だが、《雷撃》そのもののダメージはないが衝撃により巨体のユーズレスは十メートル近く吹き飛ばされた。


『テンス! 魔術による衝撃が予想以上です。《器用》との併用を推奨します』


(霊獣やばい! )


「メェェェ! 」


 攻撃の隙を見てクリッドが側方から剣を振る。


 このパーティーはユーズレスがタンク、補助電脳ガードが分析して、クリッドがアタッカーとして遊撃する。時には、ユーズレスが『流体金属』や遠距離装備で援護、時にはアタッカーとして近接戦闘もこなす。機械人形は呼吸はしないが、状況によって《心音》で繋がっているユーズレスとクリッドは人種でいう『阿吽の呼吸』である。


 ボワッツ


 バゼロフの身体に纏われた炎が勢いを増す。


「なっ! 」


 燃え広がった炎はクリッドを包んだ。


 クリッドは夢剣の効果で魔力を喰らおうとしたがどういう訳か、バゼロフの炎は夢剣で喰らうことはできなかった。


 キャハハハハハハハハ


 夢剣はまるで不味いとでも言っているようであった。




「《強奪》」


 クリッドは自身を焼いたバゼロフの炎を《強奪》で消し去った。


 クリッドは一旦、後退する。


(クリッド大丈夫か?)


「あぶなかったメェェェ! 父上から頂いた燕尾服じゃなかったら灰になっていたメェェェ」


『魔界の炎ですら耐性があるクリッドを燃やそうとするとは……それに、夢剣が炎を吸収できなかった。《演算》ビィー、ビィー、恐らくですが、霊獣バゼロフの炎と雷は魔力ではなく、自然界のものを化合して使っているのでしょう。魔力を喰らうクリッドの夢剣と絶剣の対象ではないのでしょう』


(自然の力? )


『霊獣麒麟バゼロフは、いうなれば自然そのもの一説には、神々すら知らない単なる自然現象が意思を持った存在です。魔力という概念がないのでしょう。ここが迷宮だからバゼロフも本来の力を発揮できないのがせめてもの救いですが』


 バチバチバチバチバチバチ


 バゼロフが前脚を上げた。


 ビュン


 その刹那にバゼロフの前脚が一気に伸びてユーズレスに迫る。


 ガギィィンン


「重たいメェェェ! イタメェェェ! 」


 クリッドが二刀を十字にしてバゼロフの攻撃を防御したが、纏った雷でクリッドが感電した。


(クリッド! この野郎! )


 ユーズレスが四次元のバックパックから大槌を取り出しバゼロフを殴打する。


 ボオオオオオオオオオオオオオオオ


  バゼロフの大いなる炎がユーズレスの大槌を溶かした。


挿絵(By みてみん)

霊獣麒麟バゼロフ 原案ヴァリラート様

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『機械人形(ゴーレム)は夢をみる~モブ達の救済(海王神祭典 外伝)』 https://ncode.syosetu.com/n1447id/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ