表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

344/423

7 グルドニア王国歴史450 血の誓い

短めです。

1

「それは、王家の短剣! 皆! 控えろ! 」

ウーゴ男爵は混乱していた。すでに皆、控えている。


デニッシュが懐から出した王家の短剣は、羊と竜が入り交じった紋章がついたものだった。

これは、王族であれば誰でも持っていて良いものではない。


何故なら、これはある一定の条件を満たすことで、王の名代として効果を発揮する証なのである。


「そうか、皆、この短剣の意味を理解しているようだな。ならば、話は早い……ぐっ! 」

デニッシュが左手で短剣の刃の部分を力強く握る。


ポタポタ


左手から血が流れ落ちた。

流れ落ちた血がジワジワと一滴、一滴と地面に吸われる。


「……殿下、ああ、高貴なる血が」

ウーゴ男爵含め、皆が狼狽えた。


「偉大なる建国王アートレイよ! 私は今、ウーゴ男爵領の大地に王たる血を注ごう。ウーゴ男爵領の大地に眠る祖霊達の加護があらんことを……皆、聞け! 王なる剣を伝い、ウーゴ男爵領の大地に王なる血が注がれた! 」

デニッシュが高らかに宣言した。


「これは……王家の血の誓い」

ウーゴ男爵が驚いたようにいった。


2

血の誓い


かつて、グルドニア王国が今よりも多くの戦争に明け暮れていた頃である。

このズーイ領がまだグルドニア王国でなかった頃、先住民達の集落であったときに、王太子であったゼノール、後の『鮮血王』は同じように短剣で血の誓いを行った。

その時に血の誓いにより、先住民達、ズーイ伯爵領の先祖達はゼノールと共に他国からの侵略を阻止した。


その武勇を称えて、先住民達はグルドニア騎士(ゼノールの騎士)として貴族の位を得た。

その武勇に名を連ねた一人がウーゴ男爵の先祖である。


なお、ズーイ伯爵領にはグルドニア王都からの貴族の血は混じっていない。

先祖の血と誇りを大事にする。それが西の領地の誇りであり、また王都に対する憧れと劣等感でもあった。


3


ポタポタ

短剣を伝いデニッシュから流れ落ちる血は止まらない。


「私はここに誓おう。この四肢が千切れ、骸となろうとも魂を燃やし、外敵たる魔獣どもから民を、皆を守ろう! このウーゴの大地を魔獣ども血で染め上げる! 」

デニッシュが皆を見る。


ウーゴ男爵をはじめとした兵士達は、瞬き一つせずにデニッシュを見た。


兵士達は胸が熱かった。

デニッシュの言葉(パフォーマンス)が兵士達の火種を炎へと変えた。


「それと! ウーゴの勇士達よ! いちいち、中央の貴族が来るたびに……自身を卑下するな! 確かにこの地には、この滴り落ちる王の血は交わっていない! だが、それがどうした! 見ろ! この血は銀か! 黄金か! 違うだろう! 皆と同じ赤い血だ! お前達は大地を耕し、風と共に木々や草、水のせせらぎを聴き、土の女神様の恵みに感謝できる尊き者達よ! このウーゴ領の恵みによってグルドニアは生かされているのだ! ウーゴの勇士達よもっと胸を張れ! 自身の心を魂を自分を傷つけるな! 」


「「「……」」」

いつからだろう、兵士達の瞳から滴が流れ落ちた。

それは、ウーゴの勇士達の心を、魂を洗い流すような清んだ涙であった。


何処からかやって来た美の女神がその清んだ雫石()を拾い上げた。


デニッシュは基本的に王家の水準でいえば学は低い。


正直、デニッシュが言ったことは支離滅裂で矛盾している。


しかし、デニッシュは冒険者としてこの五年間グルドニア王国の方々、他国でも活動し、様々な人々との交流してきた。

身体で肌で人々の営みを感じてきたのだ。



「おお! そうだ! 殿下のおっしゃる通りだ!」

「ここは俺たちの土地だ! 」

「殿下は我々を認めてくさだされた! 皆のもの殿下に恥をかかせるわけにはいかんぞ! 」

「俺たちの土地は、俺たちが守るんだ! 」


兵士達が立ち上がった。

砦の熱が上がった。


デニッシュの言葉は皆の心に通った。


そこには先ほどまでの怯えた者達はいなかった。


「……滾らせてくれるな。人種どものくせに」

何故か敵である獣人達も泣いている。


「……誰かが……これを……やられねばならぬ」

最後にデニッシュが力強くも悲しげにいった。


ポタポタポタポタ


短剣から滴り落ちる血の音がやけに大きく聴こえた。



いつも読んで頂きありがとうございますm(_ _)m

家庭の事情で更新が遅く本当に申し訳ありません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『機械人形(ゴーレム)は夢をみる~モブ達の救済(海王神祭典 外伝)』 https://ncode.syosetu.com/n1447id/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ