2 手紙
短めです。
1
アペンドがユーズレスにシナシナになった手紙を渡す。
『ユー坊、恥ず……いから、手紙……書……た』
『ユフト師らしいですね。あえて、映像は残さなかったところが……』
(……手紙をくれたってことは、オトウサンはもう……いないんだな)
ユーズレスが悲しそうにエメラルド色の瞳を点滅させた。
「決めたメエェェェェ! このメロンクリームソーダにするメエェェェェ! 状態異常無効の加護持ちである真なる悪魔である私には、腐った沼のような緑だろうがドンと来いだメエェェェェ! 」
『かし……こまり』
クリッドはメニューを決めた。
2
手紙
おかえり、ユーズ。この手紙を見ているということは、良い出会いがあったようだな。
この部屋は二人でないと入室できない。となると、お前にも友と呼べる存在ができたことになる。
喜ばしいことだ。
息子の友人になってくれた君、こんなわがまま息子の友達になってくれてありがとう。
ユーズは飽きっぽく、自己中心的なところもあるが、心根は優しい機体だ、今後も仲良くしてもらえるとありがたい。
ユーズよ、外の世界を見てきたと思うが災厄戦争後、マナの爆発的増加により人の生存が困難な状態となってしまっている。
そこで我々は緊急避難的処置として、「人類休眠計画」が実施され、一部の人類はインテグラへの避難が行われ、宇宙へ上がった。貴族達は冷凍睡眠によって時間を越えて保管される。
私か?私は残ることにした。多少なりともこの事態に抵抗したいのでね。インテグラには甥っ子も行くし、デクスも同行するからな。問題はないだろう。
それに、私にはアリスから出された問題の答えを直接伝えに行かなければならない最重要任務があるからな。おいそれと天へはいけないよ。
ずいぶん長いこと待たせているから、かなり怒っているとは思うがね。
私の悪あがきが形になるまで三千年…いや五千年はかかるだろうか。
それまでは人類には苦難の道を歩むことになる。
ユーズ、外の世界は見てきたかな。
かつての機械超大国ヴァリラート文明は滅んで、悲惨な世界だと思う。
それを見て、お前は人類をどう思った。
その答えはお前に任せる。
これからは、私のことは気にせずにお前のやりたいように稼働てほしい。
できるならば、様々な場所を訪ね、様々なモノと出会い、自分の世界を広げていって欲しい。
ユーズよ、世界を、時代をめぐり、自分がやりたいことをみつけてほしい。
最後に、私のかわいい機体達よ!
お前たちに会えて(作製できて)私は本当に幸せだった!!
お前たちの前途に、幸あらんことを!!!
私の最後の地はアリスの墓標かな……
3
ユーズレスは、手紙を読んだ。
何度も、何度も読んだ。
補助電脳ガードは、何も言わなかった。
クリッドはメロンクリームソーダの最初の一口を躊躇ったせいで、ミルク氷菓がほとんど溶けてしまった。
勇気を振り絞り、魔界の沼が腐ったような緑の液体を口に含んだ。
クリッドは、衝撃を受けた。
まだまだこのようなウンメェェェェェ飲み物があったのかと驚愕した。
時間をかけてゆっくりとメロンクリームソーダをクリッドは飲み干した。
クリッドが気づくと、ユーズレスは膝を落としながら前屈みでずっと手紙を見つめていた。
ユーズレスのエメラルド色の瞳が、メロンクリームソーダのような色をしているなぁとクリッドは思った。
エメラルドグリーンの瞳が何度も何度も点滅している様はまるで、機械が泣いているようだった。
手紙は原案者様であるヴァリラート様監修です。
皆さんお忘れかもしれませんが、アリスはユフトの後輩でボンド様の製作者です。




