エピローグ7
エピローグ終わりです。
1
「もしかしたら、そいつらなら何かしらアートレイの秘密を知ってるかもしれないねぇ」
木人がいった。
「悪魔と機械人形ですって、そんな昔から機械人形がいたのですね」
「ハッハッハ、何いってんだいエミリア、機械人形はお前さんがよく知ってるユーズだよ」
エミリアは酷く驚いた。
「えっ!」
「機械人形ユーズレス、ユフトの十番目の子にして《統合》を司る機械人形さね。あんた、マスターだったのにそんなことも分からなかったのかい? まぁ、もっとも、ユーズにガードもその時の記録は削除されてるんだけどねぇ」
「木人様が何をおっしゃっているのかはよく分かりませんが、ユーズは元々は祠の御神体で村神様として扱われていました。苔とかも生えて随分と古い時代に造られたものとは思いましたがまさかそんな! 」
「魔道機械人形ユーズレス、あれはゆっくりだけどキカイノココロをもった成長していく生命体だよ。最も悲しいことに、いつも自分のメモリーを代償にして《覚醒》するから、覚えちゃいないけどね。アートレイを救う時に《延命》を使う過程であんた達との日々を、記録を代償とした。可哀想とか、同情はしないよ。あくまでもユーズが選択したことだからねぇ」
「それは……」
エミリアが顔を下げて地面を見た。
実はエミリアは、ユーズレスが再起動してボールマンやラザアの側にいたことを知っていた。何度か視界に入るように試みたが、ユーズレスやガードからの反応は何もなかった。
賢き竜ライドレーとの戦いで、アートレイに《延命》を発現したときにガードは、記憶を対価として統合するといっていた。
アートレイを救い、副次的にエミリアを生かし続けている《延命》は、ユーズレスとのかけがえのない思い出を犠牲にして成り立っているものなのだ。
「ユーズが繋いだ命が回り回って、アーモンドやその子まで繋がれているんだ。縁は巡るなんていうけど、あの機械人形は、知らず知らずに人々を幸せにする機械人形なのかもしれないねぇ」
「……今、ユーズはどうなっていますか? 」
「今回の海王神祭典では、相当無茶をしてねぇ。ボディはスクラップになっちまったけど、【ブラックボックス】は無事だよ。再起動には専門家でも、分からないから暫くは、秘密の部屋で眠っているよ」
「そうですか。それならば、良かった」
「案外、再起動したら今まで【デリケート】した記録も甦るかもねぇ」
「そうなりますと、もしかしたらアートレイの秘密にも近付くかもしれませんね」
フォローは蒸留酒を含みながらいう。
「フォロー先生、先生はガーヒュをどうするおつもりですか」
エミリアがフォローに尋ねる。その視線は、震えていた。
「どうもしやせんよ。今のところ、ガーヒュはグルドニア迷宮最奥から出てはこない。あちらから何かしてくるなら話は別だがね。ワシは、ボールマン様のことで、もう疲れた。これからは、ひっそりとジュエルを見倣って推し活をさせて貰うよ」
「「……」」
木人とフォローは顔を見合わせて「それはそれで、問題では」とは言えなかった。
2
いつの間にか月は隠れて、朝日が顔を覗かせた。
エミリアは木人に死期について質問した。どうやら、アーモンドに祝福を《強奪》されてからは、心に刺激を受けても若返らなくなったようだ。
木人はやっと理の中に入れる、時の女神様もご安心なさるだろうといった。
木人は何故かとても満足そうだった。
生きていることを実感出来て、毎日が気力に満ちているといった。
最近は、苦手だった料理をマロンに習っていることにエミリアとフォローは驚いた。
「何事も始めることに遅いってことは、ないよ」「ババアの手習いさねぇ」「今度、久しぶりにアップルパイをご馳走するよ」といった。
木人曰く、見た目どおりの寿命だが薬や術をつかえば騙しだまし、あと三十~五十年は生きれるとのことだった。
エミリアは、査問会については話さなかった。
あくまでも影であるエミリアは関与しない姿勢を貫くようだ。
「今回の査問会は、臭うよ。きっと荒れるねぇ。まぁ、若いもん達に期待しようねぇ」
カァン
三人は朝日とともに未来に乾杯した。
査問会まで残り三日
1ヶ月位休みを挟んで、「機械と悪魔 秘密の部屋」をやる予定です。
気付いたら主人公が半年位出ていない(笑)