25 第二部プロローグ リテイク2
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「なんだ、ありゃあ、化け物か」
国王であるピーナッツはアーモンドを化け物呼ばわりする。
「息子を化け物呼ばわりとは、殺されかけた私が言うのもなんですが、レート様が聞いたら悲しみますよ。しかし、あれは本当にアーモンド様ですか? 外見もそうですが、中身も全くの別人では」
「確か、先日はエメラルド翁の孫でアズールったか、決闘を申し込まれて、手袋にゲロ吐いたみたいだなー! わが息子ながら、最高にイカしてるじゃねぇか」
「そのことで、スムージー様から嘆願書がきました。私の首一つでことを収めて欲しいと……」
「ああ、ゲロのせいでうやむやになったからいいが、ピスタチオのところ、なんっつたっけか先生騎士? 」
「聖なるものに選ばれし騎士達、聖選騎団でしたな。パトロンがジュエル様ゆえに、こちらとしても手を出しずらいのですが」
「皇太后のババアのことだ。ただの気まぐれで多分、団体の存在すら忘れてるぞ」
「それは、それで困りますが」
「正直面白そうたがな。ボンレスハム対、聖選騎団とピスタチオ、世界会議と査問会のいいパフォーマンスになるんじゃねーか」
「今のアーモンド様にならば、小兵が何人いようが勝てないのでは」
「それにしても、マジで化けたぜ。泣いてパンを食べたものしか人生の味は分からんというが……親父殿の代で獣国戦争から帰ってきたやつらと同じ匂いがする。我が息子ながら末恐ろしいぜ」
国王が杯に入った酒を一気にあおり、再び口を開く。
「厄災級〖馬蹄フィールア〗、〖巨帝ボンド〗、〖魔素生命体アノン〗、〖雷獣ガーヒュ〗、〖紅牛コフィン〗〖鬼熊フューネラル〗、〖名犬ホクト〗、〖ネームレス〗、〖森長木人〗、〖猿王レイアート〗、海の竜王を倒した聖なる騎士〖白き狼アーモンド〗格は少々落ちるが、奴も化け物の仲間入りだな」
「猿王はそれほどですか、弱いとはいいませんが数年前の報告ではそこまでの脅威ではないと」
「それは、猿王の眠りが浅かったからだ。真の猿王は下手をすると一国を滅ぼしかねない伝承が残っている。下手に巣をつつく必要もあるまい。いずれにせよ、あのドラ息子が……力だけならば俺の手に負えんぞ」
「陛下がお名前を呼ばなかったせいではありませんか。今更ですが、ボンレスハムは如何なものかと……」
「お前もいままで何も言わなかった癖に、調子がいい。しかし、豚が狼になりやがった。奴を《鑑定・極》で見たが不運の呪いが解けていた。竜の血で穢れを清めたのであろう。俺の右目(神の眼)の借金も無くなっていた。しかも、大勢の女神を引き連れてな。あのスケベが」
国王は多少動揺しているのか、言葉遣いがチグハグである。
「何事も見通す神の眼ですか、恐ろしいものです。呪いが解けたのは、喜ばしいことではありませんか。外見もそうですが、女にだらしないのは御父上譲りなのでは」
「死にぞこないが、口が減らないものだ。まぁ、本人は全く自覚がないのもタチが悪い。それに見たかあの片腕の機械人形を」
「確かハイケンと申しましたな。密偵からは、ボールマンの補佐を担っていたとか」
「ハイケン……あの機械は加護持ちだ」
「機械人形が加護を持っているですと、生き物ではない機械が」
「神々からすれば、機械も人も大した違いはないのかもな」
「大いなる意思からすれば、所詮は人種の認識ということでしょうか」
「やつの刀、白橙を鑑定したが面白い結果がでた」
〖赤橙・王殺しの刀〗
種類、魔法刀 ハイケン(アーモンド)専用装備
効果とストーリー
西の姫君の祈りによりアーモンドのための模造刀であったが、刀と巫女の願いにより王を殺し、その血の涙によって刀身を真っ赤に染めた魔法刀。刀には意思があるかのように使用者を選ぶ。効果は、魔力によってその切れ味は変化する(微~極)。
「王殺しの刀ですか、これは一体……」
「危なかったということだ。今回のシーランドの一件がなかったら、数年先にはもしやウェンリーゼという国ができていたかもしれんな」
国王は東の海からの土産をみながらいう。
「国でございますか。ご冗談を」
「ウェンリーゼは今や人工魔石生成炉だけでも食っていける。隣国の巨帝ボンドが納める人工ダンション都市は喉から手が出るほど魔石が欲しい。今回の死亡者リストも見たが、表には師匠のギンだけだが、そうそうたる面子だ。そこに、王族の血が入ったのだ。建国王アートレイと同じ竜殺しの血がな。建国する条件は十分に揃っている」
国王は義手である左腕で、玉座の肘掛けを撫でながらいう。
「陛下の義手に関しても、明らかにあの地以外では生産ができないでしょう」
「これは明らかに【オーバーテクノロジー】だ。俺が昔使っていた義手は肩からでは唯の動かない装飾品のものだったが、この特別式は生身の右腕となんら変わりがない。感覚もだ。二十年間なかった左腕が戻ってきたようだ」
国王は、昨年の就任祝いでのボールマンからの贈り物の義手に対して苦い顔をする。
「ウェンリーゼの地下には伝説の、王宮でも知りえない【パンドラの箱】でもありますか」
「中身は、希望とは限らないがな。今回のシーランドの一件で主たる人材が亡くなったのも幸いだ」
「補佐のランベルト、私はあの曲者がいなくなっただけでも朗報です」
「不思議とあの地には昔から、良き人材が集まる。いまのガタガタの王宮からすると羨ましいかぎりだな」
「流石はボールマン・ウェンリーゼ、陛下のかつての恋敵とでも申しましょうか」
「ふん、昔のことをいちいち一言多い男だ」
「それが私の仕事なので」
「ふん、それでお前の密偵はどうなんだ」
「定時連絡はしっかりきますが、恐らくあちらにほだされているでしょう。捏造や誇張はありませんが、肝心な情報は巧みに秘匿されています」
「まだ賭けをするには分が悪いか(ウェンリーゼをいただく)」
国王は宰相より密書を受け取る。
「起きろ、アナライズ(U-2)」
国王は玉座に話かける。
『おはようございます。何をお調べしましょうか』
「ユーズレスシリーズ(機械の神々)についてだ」
『ご要望にはお応えできません。序列第三位でありますピーナッツ・グルドニア様の権限を大きく越えております。ご検索はできません』
玉座が国王に激しく盾突く。
「ふん、兄弟は売れんか。まあよい。アナライズ、この密書(海王神祭典)をスキャンしろ。そして、見せろお前の《予測演算》を」
アナライズ(玉座)が密書に光を当てスキャンする。
『スキャンが終了しました。《予測演算》を開始します。口頭での情報に加え、海王神祭典のあらましを映像化します』
「それでは、見せてもらうではないか。隠されし機械神の戦いを」
かつて金級冒険者であった国王が戦闘狂の隻眼を覗かせ……
アナライズのブルーの瞳が一回点滅した
リテイクにお付き合い頂ありがとうございました。




