第73話
「必殺筋肉パンチ!」
普段は暴力を振るわない陽介が、いきなり俺の頭を殴ってきた。
「あだぁ!」
思いのほか強かったので、変な声が出てしまった。
「何しやがる!」
「それはこっちのセリフだこの……スカタン!」
そう言ったのは聖来だが、今時「スカタン」なんて言葉使う女子高生なんて見たことない。
「何お前死のうとしてんだよ! 全然かっこよくねーんだよバカ!」
そう言いながら聖来も陽介が殴ったところと同じところを殴ってきた。
しかも一発だけではない。二回、三回も連続で頭を殴ってきたのだ。
「わ、悪かった悪かったって! そんなにも連続で頭殴るなよ! 脳みそが潰れたらどうするんだ!」
「るせぇ! るせぇ! るせぇ!」
もう五回以上殴ってきている聖来の目には涙が溜まっていた。
「悪かった! 悪かったってば! もうあんな映画の主人公じみた自己犠牲はやらねぇよ! だからもう殴んなや!」
「たりめーだ!」
最後に一発、頭蓋骨の頂点に向かってかかと落としを食らわされた。
あまりもの痛さに思わず「あだばぁ!」と叫んでしまった。
「い、いくらなんでもやりすぎだろぉ! お前、サラマンダーに燃やされる代わりに、その一撃であの世に行くかと思ったぞ!」
「るっさい! 死ね!」
死んでほしくなかったり死ねっていったりわけがわかんねぇ……
「それよりもよー、遠藤の奴はどうするんだ? 追いかけることはできなくてもよ、警察にチクるってのはどうなんだ?」
陽介がそんな提案をしてきたが、俺は首を左右に振った。
「確かにあいつは数え切れないほどの人間を殺してきた、これはまず間違いないだろう。だがビーストによる犯行が証拠になるとは思えない。ビーストっていう摩訶不思議な力による犯罪は法律では裁けないと思うぜ?」
「くそ! 間違いなくあいつなんだ! あいつなのになんで裁けねぇんだよ!」
悔しそうに地面を蹴る聖来。
「もっと強くならねぇとな……」
俺はそう呟いたが、実際ビーストって奴はどうすれば強くなれるのだろうか。
チェック曰く何度もビーストカードを使用することによってビースト自身も力を増すとは言っていたが、俺たちと遠藤ではビーストを使用している回数に大きな差が発生している。
あいつは私利私欲のために積極的にビーストを使っていた。なので奴のビーストであるサラマンダーはあんなにも強かったのだ。
その差をいかに埋めるかだが……
「強くなりたいか?」
チェックがそう言ってきた。
「何か方法があるのか?」
「ああ。ビーストを強くする方法に心当たりがあるんだ」
「なんだよ! もったいぶらずに教えてくれよ!」
チェックの顔をゼロ距離まで詰めた俺は、両肩を掴んで前後に揺らした。
「落ち着けバカ! 心当たりがあるだけで、本当にそれが実在するかどうかわからないんだよ!」
「どういうことだ?」
何か特殊な修行方法があるのかと思ったが、そういうことではなかったらしい。
「ビーストを一時的にパワーアップさせることができるアイテムがあるんだ。それさえ手に入れることができれば、あるいは……」
「で、なんなんだよ! そのパワーアップアイテムっていうのは!」
「その名は……アドバンスカード」




