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村娘が村人達とぬるーくダンジョン経営  作者: ムムのミニ神
三章 ダンジョン運営
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二層はお風呂

 ムムはツトと別れ、第二階層へと二人を連れてきた。


 最初に見えてくるのは十字路。左へ行けば女性用、右が男性用の薬湯へと繋がっている。

 字の綺麗なツトが案内板を書いてくれたので迷子になることはないだろう。


 わざと間違えない限り。


 そのもしもが起きたら大変だ。

 脱衣場手前にある部屋に閉じ込められ、父のウウや母のミミを始めとしたガーディアン達がモンスターハウスという罠によって召喚され、優しくない洗礼を受けることになる。


 さらに騒ぎを聞き付けた覗かれる側の冒険者も参入してくるので、オーバーキルぎみに磔にされると過去の男性五名女性一名が証明してくれた。

 ギルドからの信用とはなんだったのか。


 最後はツトの段取りの元、慰謝料をむしり取られて笑い話で済ませてくれるのでギリギリセーフなのだろう。


 と、話が逸れたが今回は直進だ。

 するとまた十字路である。

 ここもまたツトの案内板が設置してあった。


 左が熱霧の間。

 右が混浴。


 熱霧の間とは天使長のリクエストで作られた特殊なお風呂である。熱い霧を充満させてあり、とても蒸し蒸しする。


 天使長曰く、ここで汗をかいてから手前に設置した水風呂で流すと体内に溜まった毒素が抜けていくのだそう。


 ムムは全く信じてないので一度も使ってない。

 熱い思いまでして汗をかきたくないのだ。モフ達が寄り付かないのもマイナスポイントだろう。


 ちなみにだが、男性冒険者の一部には大人気らしい。我慢比べなんかもよくして目を回してるとのこと。


 二人に熱霧の間の概要をざっと説明してから、ここも直進。行きたそうにしていたが、後で行ってね、と却下した。


 そして、三度目の登場の十字路だ。例によってツトの案内板もある。


 左が天使の湯。

 右が運動場。


 運動場は壁が身代わり機能を持っている、あの部屋。

 汗をかいてすぐにお風呂に入りたいだろうと、ここに設置されている。


 また、機能によって防音ならぬ防振も完備されたので、いくら騒ごうとも暴れようとも、他の施設に被害が及ぶことはない。

 わざわざチャクマを呼び出してテストしたので万全だ。


 ただし魔法は禁止である。

 どっかのアホなダンジョンマスターが力任せに慣れない魔法をぶっ放って二層を粉々にしかけたせいだとかなんとか。ちなみにだが怪我人はゼロだった。


「ムムこれは?」


 けれど、ラギリ達が興味を持ったのは天使の湯の方であった。


「ん? 天使の湯だよ」

「薬湯だよな? どんな湯なんだ?」

「きららーんとしてる!」

「うん、さっぱりわからん」


 天使の湯は天使の湯だ。他に説明のしようがあろうか。

 ムムの乏しい表現スキルではこれが限界だった。

 まぁ、だったら見てもらえばいいのだ。


「よし! お風呂タイム!」


 ムムは右へ――


「そっち、運動場じゃないか?」

「うおおお!」


 恥ずかしかったので猛バックで天使の湯へと駆けた。


 ここは迷路の奥に天使長がこさえたエリアを流用して作ったエリアである。

 と言っても、場所を変え、男女の更衣室をそれぞれ作ったぐらいで他は手を加えてない。


 そう、天使長は引きこもってからも薬湯を堪能していたのだ。


「なんつーか、すげーなここ」

「うん、悪趣味だね」


 内装はオクビやラギリが引くぐらいゴージャスだった。厳かな神殿を成金野郎が金色に染め上げた、そんな感じである。作った者のセンスを疑いたくなること請け合いだ。


 と言っても、お客さんには意外と好評だったりする。今だって、チラホラお客さんが薬湯に浸かっている。

 ここに住むのはごめんでも、普段味わえない雰囲気を楽しむ分にはいいのだ。


 あとは、金が好きな人に好評だった。趣味は人それぞれなのだ。

 カナィド村の金銭担当のあの人なんかも、毎日ここを利用している。


「ざぶ~ん」


 かけ湯をしてから入浴。

 内装はともかく、お湯は眷属の子達が頑張ってくれているので一級品である。


 ムムは気持ちよさから息を吐いた。


「ああ~、極楽じゃあ~」


 セクシーさも情緒も無い残念吐息だ。

 ムムをお湯で滴らせても所詮はムムだった。


 男二人は一瞥をくれることもなく薬湯に浸かる。


「ふぅ……久しぶりだけど、ここのお湯はやっぱり違うね」

「だなぁ。あとはラモビフトがいりゃあ完璧なんだけどよ」

「ラモちゃん達はお湯嫌いだからねー」

「わーってるよ」


 オクビは後ろに手をついて、まだ再会叶わぬラモビフトに思いを馳せた。

 もふもふもふもふもふ。


「……ありゃ?」


 妄想に実態が伴いだした。それも、ラモビフトとはまた違うもふである。


 どうやら何か腕に巻き付いているようだ、と、オクビは気付いた。しかし、彼は慌てない。

 こんなことは前にもあり、正体はすでにわかっているからだ。


「マルモフモだよな」


 お湯に程よく毒を流し込んで薬湯にしてくれている働き魔物。

 深緑のもふもふ球。


「そうそう、こんな風に真っ白で天使の羽が生えて……誰だお前!?」


 マルモフモと似ているがマルモフモではなかった。羽付きの白銀もふもふ球であったのだ。


「ここにいる子達は天使長が産み出した合成魔物、アンジェマルモだよ。『天に仕えるならこのぐらいの美しさは必要でしょう』とか言ってたね」

「そーいうのは先に言えって!」


 これにはビビりのオクビもビビりまくっている。不足の事態にはとことん弱い男なのだ。


 ムムは抗議には耳を貸さずに、アンジェマルモを抱えてリラックスするのだった。

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