1話 「記憶喪失の少女と不思議な森」
「…………んん……ここは?」
私が目を開けると、不思議な森の中にいた。なぜここにいるのだろう。色々考え、思い出そうとすると頭痛がする。
「……私は……マナ?」
「マナ」
それが自分の名前だとなぜかわかった。……それ以外はわからない。
「……あれは?」
私はふと周りを見渡すと、群青色のローブと魔女帽子が落ちていた。私はそれらが自分のもので、着てかぶるものだと気づいた。なぜかはわからない。
それらを着用すると、隠れていたのか、とても分厚い本が出てきた。
「……軽い……」
それも自分のものだと直感でわかった。私は本を開く。
「……なにも、書かれてない?」
そう、書かれていないのだ。ほかのページもぱらぱらとめくるが、なにも書かれていない。
「なにこれ」
そう思った瞬間。
「キャァァァ!!!」
「!?」
叫び声が聞こえた。私は考えるまもなく走り出した。
「助けて」
「グルルルルル……」
「あれは」
花びらのようなスカートと花の髪飾りの女の子と、獣がいた。獣は毛むくじゃらで四足歩行、鋭い爪と牙が見える。
「この!」
私はその場にあった石ころを投げた。
「ガル?……グルルルルル……ワォォォン」
「しまっ……」
しまった、私は対抗手段なんて持っていない。私はとっさに分厚い本で牙をガードした。だが、獣は私に覆いかぶさっている。
「……このっ!」
「キャウン!?」
私は両足で獣の腹を蹴り上げた。体勢を立て直すと、少女のもとに向かった。
「大丈夫?」
「は、はい、」
どこも怪我はなさそうだ。
「グルルル」
「また来た」
(どうやら怒っているようだ。だけど、どうする。武器に使えそうなのはこの分厚い本だけ。殴る? いや、ダメージがあるかわからない。軽いし……)
「グルァッ!!」
獣は飛びかかってきた。
「……は、ハードウィップ!」
「グル!? キャウン~!?!?」
「すごい」
今の大きな蔓はいったい……あの少女が出したのだろうか? 狼は身体を串刺しにされて絶命している。
「君は……あれ?」
「寝て、いや、気絶している……ともかくひと安心……」
しばらく経って。
「うぅ……」
「あ、起きた?」
「あ、あれ?……」
少女は私を見た。
「あ、す、すみません」
少女はすごい勢いで飛びのいた。
「いや、いいよ、」
「あ、あの、あなたが気を引いてくれたおかげで『牙狼』を倒せました、ありがとうございます」
「牙狼?」
知らない言葉だ……。
「ん?」
「な、なんですか? それ」
あの分厚い本が光っている。私は本を開いてみる。
「のってる……」
名前「牙狼」
種族「魔狼」
説明「どこにでもいる狼型の魔物。普段は集団で狩りをする」
「これは」
「すごい魔導書ですね」
「魔導書?」
「はい、違うんですか?」
魔導書。聞いたことがない。いや、知らないだけだ。また光り出した。
「こんどはなに?」
魔導書
「様々なモノを教えてくれる本」
「これは、」
「どうやらこの魔導書は、知りたいモノの名前を言うと教えてくれるようですね。こんなの、見たことがありません……」
「そうなの?」
「そうですよ! 私はまだ若いですが、こういったものはとても貴重だと。あなたはどこかの貴族様なのですか?」
「いや、私は」
私はこれまでのことを話した。記憶喪失であること、気がついたらこの森にいたこと、ほか全てを。
「そんなことが……」
「うん、なにも知らなくて、ごめん」
「いえ、いいですよ。……そうです! 私がお供しましょう」
「お供?」
「はい! あなたの知らないこと、私が教えます。これでも私、大体の名前くらいはわかります。それであなたが名前をいえば、その魔導書が教えてくれますよ。これはいいコンビです! ということで……お友達になりましょ」
「お友達?」
「はい! 仲良くしましょう、ということです。あ、私はアルラウネの『ミク』です!」
「アルラウネ?」
種族「アルラウネ」
説明「亜人の一種で人間に友好的。農作物を元気にしてくれたり、子供をあやしたりする。人間の子供と遊ぶのが好き」
「なるほど……よろしく」
「はい!」
こうして、不思議な旅が始まった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




