絶望
三枚目の写真、それは伊藤が今上と一緒にホテルに入っていく姿だった。
「三枚目の写真の女の子limeのアイコンの子じゃない?」
みつからコメントが送られてきた。
頭が真っ白だ。
白だ。
真っ白。
何にも考えられない。
僕は数分間それを見つめることしかできなかった。
しばらくすると我に返った。
ふと頬らへんに違和感を感じた。
なんだろう?
僕はその違和感のする場所をおさえた。
僕は泣いていたのだ。
気が付かないうちに泣いていた。
状況が読めない。
彼女らは付き合っていたのか?
そんなはずはない…、だってあんなに仲が悪そうだったじゃないか。
怖い。
なんで?どうしてだ?
そして再びみつからコメントが送られてきた。
「既読無視?まあ変なの送ってごめんね。」
僕には返信する気力などなかった。
しかしふと今思った。
これが今さっきならまだいるはずだ…。
僕はみつに返信をやっと送った。
「ここのホテルってどこ?」
既読がすぐについた。
開き置きしててくれたのだろう。
少し待っているとすぐに返信が来た。
「えとね、確かルトインホテルだと思うよ」
「どこの?!」
「的区矢駅の近くのところだよ」
わかった。
的区矢駅の前のルトインホテルね。
僕はみつに返信せずに窓から飛び出した。
すぐにバッチを付け飛んだ。
全力疾走で飛んだ。
その時も泣いていた。
伊藤、中学校生活で初めてできた友達。
病んでいる僕の唯一の支え。
多分僕は彼女のことが好きなのだろう。
本当に涙が止まらない、悔しい。
あんな奴とするなんてありえない、絶対何か脅されてるんだ。
心配だ、大丈夫なのか?
怖い。
早く行け、もっと飛ばせ。
頼む早く、早く!
5分くらいでついた。
5分もかかってしまった。
僕は息を荒げながらも前に進んだ。
入ろうとしたとき中から伊藤と今上が出てきた。
「これで拓馬君に近づかないでくれる?」
伊藤がそういった、いったい何のことだろう。
僕はwizardを解除せずに二人の話を聞くことにした。
怖いけど聞く。
伊藤に何があったんだ?
僕が助けないと…。
「いいぜ、でもその代りさあ、知ってると思うけど週一な週一」
「…」
伊藤は少し泣きそうな顔になっていた。
「わ…、わかった…」
声が震えてた。
「あのさ…、これって妊娠しないよね…?」
「するに決まってるだろw」
え、妊娠?
再び頭が真っ白になった。
wizardの状態なのに気分がまったく上がらない。
逆に怒りが湧き上がってくる。
「中に出したんだら妊娠するにきまってるだろw」
「え…」
伊藤の目からは涙が流れていた。
ついに我慢できなくなったのだろう。
ついには声を上げて泣いてしまった。
それを見て今川は気色の悪い笑顔を浮かべた。
「保険の授業で習わなかったか?ははは!決まりだな、来週は俺と保険の勉強だ」
「あああ…。あああ。」
彼女の姿を見た。
今日の昼見た表情のかけらもなくただ目の前の状況に絶望していた。
怖くなった。
「お前ええええええええええええええええええええええええええええ、許さねええええええええええ」
僕は声をからして手から鋭い氷をたくさん出した。
伊藤にあたることなく今川に命中した。
「あ、え?」
今川は状況を理解していなかった。
感じたのは多少の痛みと冷たさだけだった。
「きゃあああああ!」
伊藤が叫んだ。
それは叫ぶだろ、なんせ今川の体中には多くの氷が刺さっていたのだ。
「は?何?うるせえんだけど?」
状況を理解してない彼の姿不敵だった。
「こ、氷…。体に氷が…」
「は?」
そして彼は気づいた。
自分の体に氷が刺さっていることを。
「うっ、うっわあああ…!な、なんだ、なんだこれええええ!」
その顔は恐怖に染まっていた。
その顔は実に愉快だった。
腹の奥から湧き出る怒りにまかせ殴った。
もちろんこの間とは違う。
今の僕はwizardだ。
彼は三メートルほどとんだ後地面に打ち付けられ、さらにバウンドした。
地面には血が飛び散っていた。
「あ、うう…」
彼が喘いだ。
喘ぐことしかできない彼を見て僕は笑った。
はきそうになるほど気持ちがよかった。
せめて最後は苦しませて死なせようと思った。
彼を抱き抱え、上昇。
1メートル、2メートル、3メートル、10メートル、30メートル。
そろそろここでいいか、
僕は手を離した。
今川が落ちていくのが見えた。
「あ、はははははははははははははははは。ぎゃはははははははははははっははは」
笑い声を思いっきり吐く。
きもちいいいい
「ねえ、拓馬。依存しないって約束したよね」
そこには今川を担いだ、みつがいた。
「まあこの子は悪い子だけど殺したらいけないよ」
みつは自分の水魔法を使いゆっくりと地面に寝かせた。
「ほら、拓馬自分の顔見てみろよ」
水を使って僕の目の前に手鏡位の大きさの壁を立てた。
水の反射により少し揺らめく自分の顔が見えた。
「え、あ…」
顔が真っ黒になり、あちこちから目玉が出現していた。
よく見れば腕もだ、真っ黒だ。
そこにいた僕は人間ではなかった。
クラミティと行っても過言ではない。
「危なかったね、もう少し遅かったら君はクラミティになってたよ」
「ぼ、僕…。なんてことを…。」
自分に失望した。
「これじゃあイドォウ二きラわああああああれチャううううううううううううう」
感情が爆発した。
体のあちこちからトマトを潰した時のように怒り、不満が飛び散る。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
僕の意識がきれいに途切れた。
きっとクラミティにでもなったんじゃないかな?
完璧とは呼べないがいい人生だったと思う。
みつや伊藤
伊藤?
ああ、でも伊藤が心配だ。
とても心配だ…。
「あちゃあ…。こりゃ戻るかな?」
いつもの拓馬とは違い自分の欲望に任せ暴れまわっている。
これが本当に俺の友達の拓馬なのか?
あっ、泣いてるじゃん。
間違えなく拓馬だなw
ぐわっと彼の背中からぐわっ翼が生えてきた。
不思議なことに手の形になっていた。
どんどんクラミティ化が進んでいるのだ。
早く倒さなければ彼は人間に戻ることができなくなり、完全なクラミティとなり人の心を食らうだけの存在になってしまう。
流石にこのへらへらしてる俺でも拓馬は失いたくない。
俺の下した決断はもちろん「拓馬を救う」だ。
「拓馬、少し痛いだろうけど我慢してね」
俺は魔法を唱えた。
別に唱えても唱えなくても同じなのだがなんとなく気合が入るのだ。
「うぉおたああ」
水を生成し、彼をゆっくり包んだ。
呼吸を封じ気絶させるという戦略なのだ。
やはり無理だったか、彼はその大きな手で水を跳ね返しいつもの数倍の速さで襲ってくる。
相当病んでる僕の魔法の力さえ弾いた、今の彼はこの俺でも止めれないのか?
そんな焦りが頭の中をよぎった。
攻略方法を考えつつ俺は拓馬の攻撃をよける。
一発一発が重い、それなのにかなりの速さ。
何とかその手をどうにかしないと…。
「ふぁいああああ」
少し強めに打った。
右手に命中。
しかし何事もないようだ。
水でもダメ、火でもダメ。
あ、そうか電気なら動きを封じれられるかも。
感電したら自分までもぴくぴくするって聞くしね。
彼から一定の距離を何とかとり再び魔法を唱える。
「ぼるとおおお」
命中!
習い通り彼の動きを封じれた。
このまま何とかし手をどける。
思いっきり殴られた。
いつの間にか放電し彼は俺を殴り落とした。
ルトインホテルの前の地面に打ち付けられた。
地面に10センチほどめり込んでおり気絶しそうになった。
wizardでも気絶すれすれ、もしこれが生身のままの俺だったらどうなっていただろう。
考えるだけで恐ろしい、きっと今頃ハンバーガーだ。
さてこの痛さ、お前にし返してやる!
「ねえ、拓馬はどうなったんですか?」
え?
確かに今俺は話しかけられた。
「え?」
振り返ると拓馬の友人が話しかけていた。
確かに俺と目が合っている。
この子まさか…。
「ねえ、君俺が見えるの?」
「見えますけど?」
ああ…。
あらら、この子病んじゃったか…。
「じゃあ君俺の背中に乗って、早く!」
拓馬の友達が乗ったのを確認し、素早く空中へと逃げた。
後ろから来る拓馬に気を付けながらまた会話を再開した。
この子は確か拓馬の好きな子だっけ?
limeのアイコン見たところ少し良さげな感じだった。
この子に少し託してみよう。
「君の名前は俺の名前はみつ」
「私の名前は伊藤 雪です!」
「ああ、敬語じゃなくていいよ」
「はい!」
「君、拓馬を救う気はあるかい?」
「…!」
「見たらわかるとおり彼は君の行動を見て暴走したんだよね、ここまでは多分最初から見てたからわかると思うけど…」
「私のせいか…。私はただ拓馬君を守りたくて!」
「だよね…。君の気持はわかる。お願い!俺の友達を救ってくれ!」




