読書/伊坂幸太郎『無重力ピエロ』 ノート20180523
伊坂幸太郎『無重力ピエロ』感想文
サスペンスタッチの物語は、遺伝子研究をする会社の泉水と、落書き消しをやりつつグラフィックアートを手掛ける弟の春を軸に動く。泉水と春のネーミングは、英語にするとスプリング。春にいわせれば、「最強コンビ」だという。舞台は仙台だ。
謎の放火事件が起こった。事件に関心を持った兄弟と、末期がんになった父親は、マップをつくっていくと、二十年前に起きた、連続強姦事件の被害現場と重なって行く。犯人は当時少年だった葛城という男だ。サイコパスで、反省している様子はない。現在は、売春斡旋業のようなことをやっている。強姦事件被害者の一人が、兄弟の母親だ。父親は事実を受け入れつつ自分の子供として産ませた。
泉水の前に、謎の団体名をつかって接触してきた謎の美女・郷田 順子は、春のストーカーだった。整形してまで春につきまといつつ、放火犯だということに気づき、兄である泉水に止めさせようと試みたのだった。
父親は、だんだんと、放火魔の正体が春だということに気づいた。そして、父親は、泉水の会社と提携している、探偵の黒澤をつかって、全容を把握していき、後始末をしようと動き出す。
ハル……。昔、『2001年宇宙の旅』という映画があって、暴走するコンピュータが描かれている。その名がハルだ。――物語ではそこまでは述べていないが。――また、ピエロというのは、幼児期に、亡き母親が、二人をサーカスに連れて行って、空中ブランコをするピエロを表し、無重力世界で楽しそうだいった。そのピエロのメイクは泣き顔だ。冒頭、春は、高校の二階から飛び降りて、学園女王を集団強姦しようとした、不良生徒を一人でやっつける。チートキャラだ。
物語のラストは、春が、遺伝子上の父親である、葛城を抹殺することで決着する。――春は、自分が、自分の家族とつながっていること、カッコイイ育ての父親とつながるために、性犯罪者である葛城とのリンクを断ち切ったのだ。他方、兄の泉水も、葛城を抹殺すべく、独自に動いていた。
素敵な家族による完全犯罪だ!
ノート20180923




