三話 謎
ようやく都市に入場した。
都市は賑わっており人がたくさんいて、歩くだけでも一苦労。
周りを見ると魔道具や武器、ご飯などの様々な店がある。
建物と建物の間の路地裏にはフードを被った人がなにか取引をしていたり、いい街ではあるが全く治安がいいわけではなさそうだった。
宿の1部屋を借り馬を宿に預けた。
今は部屋にあるベッドに寝転び気持ちをリセットさせている。
固いが確かな柔らかさがある。
「…ふぅ…」
久しぶりのベッドはなかなかに気持ちがいい。
この旅の間は一度もまともな場所で寝ることができなかった、毎日鞄を枕に薄い布を体にくるみ眠っていた。
しかも最悪な日は寝ることすらできなかった。
おかげでで目の下にはうっすらと隈ができ初対面の人は威圧感を感じているらしく常に要注意人物扱いされていた。
そうして荷物を宿におき真っ先に向かったのは魔法大学だ。
ここの魔法大学は資料室があるらしくそこならなにか手がかりがあるのではないかと思い向かった。
魔法大学の門前まで来て入ろうとしたところ呼び止められた。
「お前ここの者ではないな、何のようだ」
男は目をギラリと光らせこちらが何者か怪しんでいるようだ、恐らくだが門番だろう。
「僕はアレクと申します、ここの教授に紹介状を貰って来ました」
「そうか、それならそれを見せてもらおう」
「わかりました」
ポケットから紹介状を取り出す。
これは師匠の知り合いから頂いたものだ。
なにやら師匠は大学に友達がいるらしく頼んでみると快く書いてくれたらしい。
門番は本物の紹介状を取り出しじっくりとこちらの紹介状との筆跡を見比べている。
納得したのか紹介状に判を押し返して貰った。
「入っていいぞ、疑ってすまなかったな」
「ありがとうございます」
そうして大学内に入ることができた。
資料室には何事もなく着き早速資料を探す。
事件についての資料を探していると気になるものがあった。
「……エルフの歴史書か……」
ペラペラとページを捲っていく。
古代のエルフは種族としては最も神に近い存在であり、現存する種族の中ではなによりも高貴で高尚な生物ゆえ他種族を見下していたらしく他種族からは相当嫌われているらしい。
そして最近のエルフは人間や他の種族との混血が増え少しずつ神から離れてきているらしく、力も魔力も昔ほど驚異ではなくなりつつあるらしい。
そのため人間や他の種族との戦争の際も古代では圧倒していたが、今では種族の中でも弱く争いを避けるようになったらしい。
しかも古代のエルフによる被害のせいでエルフが降伏したとしても差別も迫害も全て黙認されているらしい。
他にも色々と書いていたが戦争や争い事ばかりで興味深いものは無かったので元の場所に戻した。
引き続き探しているとここ最近の事件の資料が纏められているものがあった。
手に取り7年前の物を開く。
最初から見ていくがあるのは人間や他種族の事件ばかりでエルフの事件は1つもなかった。
ここの管理者に聞いたところエルフの事件はここ2年間の分しか取り扱っていないらしく、結局なにもそれらしい情報は見つけることができなかった。
だが資料を探しているときに1つほど気になる話が聞こえた。
なにやら最近盗賊によるこの大陸のエルフの村の襲撃が頻発しているらしくエルフ達は少しずつこの大陸から別の大陸に移っていると言う話を聞いた。
考えを纏めるために宿に戻ろうかと思っていると誰かに肩を叩かれた。
振り替えるとそこには魔法使いのような尖り帽子を被りローブを羽織っている女性がいた。
女性はジロジロとこちらの顔を凝視しなにかピンと来たのか口を開いた。
「…もしかして!君がアレクくんでしょ?」
「えっとはい、そうです、どうして僕の名前を?」
「よかったー、私は君の師匠の友達のハニだよ、今日は来てくれてありがとう」
そう言うと手を握られ上下にブンブンと腕を振り回される。
「い、いえこちらこそありがとうございます」
中々見た目に合わずパワフルそうな方だ。
ようやく腕を解放してもらい
「それで今日はなんでここに来たいと思ったの?もしかして入学するために見学とか?もしそうなら大歓迎だよ」
どうやら師匠からは理由を教えて貰っていないらしい。
「い、いえすいません、今日は資料室を借りたかっただけで入学するつもりは全くなくて、今日はこのまま礼を言ったら帰るつもりでした」
「そっかー、それは残念だよ、せっかく来たんならもっと設備とか見ていったらいいのに」
「見たくもあるんですけどそれよりも先にやりたいことがあって」
見てみたいのも山々だがそれ以上に一度考えを纏めたい、忘れる前に情報を書き写しておきたい。
「えーそっか、じゃあこれ」
なにかのバッジを手渡された。
「えっとこれは?」
「これはこの大学の学生ってことを示すやつね」
「えっと僕は入るつもりは」
「知ってる知ってる、ただいつでも入れた方が便利でしょ?だからあげる」
もしかしたらまた資料室にお世話になるかもしれない、それなら貰っておいた方がいいだろう。
ポケットにしまう。
「はい、ありがとうございます、是非また来ます」
「うん、また来てね、師匠にもよろしく」
「はい」
そういえばこの人は師匠と友達らしいがいつぐらいから友達なのだろうか、というか師匠がエルフであることを知っているのだろうか。
「あの、ハニさんは師匠とはいつぐらいから知り合いに?」
ハニは1度考える素振りをし、話し始めた。
「えーっと、そうだね、私が13の時くらいかな、研究について行き詰まってたら君の師匠に助けて貰ったんだよ、確か彼がまだここの教授をやっていたときだね」
え、師匠って教授だったんだ
「師匠って教授だったんですね」
「そうだよ、中々に尊敬できる人でね、あの人の背中をを見て私は教授を目指したといっても過言ではないからね」
師匠が教授か、そんなことをしていたとは中々に意外だ、想像が全くできない。
ハニが昔を懐かしんでいると、突然顔を曇らせた。
「…あの時はまだエルフに対する差別はあんまり過激じゃなくて、彼もここで教鞭を取っていたんだけどね、少しずつ過激になっていってエルフは雇えないって追い出されちゃったんだよ、もっと一緒に研究とかしたかったんだけどね…」
手は力強く握りしめられており少し震えていた。
「だからせめて彼のお願いは聞きたくてね」
「…そうだったんですね」
師匠にはいつまで経っても頭が上がらない。
「ありがとうございます今日はほんとに、また絶対に来ます」
「うん、じゃあねアレク」
そうして魔法大学を後にし宿に戻った。
1度情報を整理しよう。
「まず俺のエルフの村の事件は7年前に起こった、そして犯人は都市にいる可能性が高いと師匠は判断した、そして最近ここらではエルフの村に対しての襲撃が頻発……うーむ」
まず師匠が犯人が都市にいる可能性が高いと判断した理由はあの時村には馬の足跡があった、そしてそれが都市がある方向に向かって進んでいたからだ。
村があった場所から都市までの方向にはなにも街も村も建造物はなにもない、だから都市であるだろうと断定した。
だがもしかしたら足跡は途中で進路を変えている可能性だってある、師匠も最後まで足跡を追ったわけではない、どこかで進路を変えている可能性の方が高い。
そして最近ここらへんの村で襲撃が起こっていると言っていた、もしかしたら同一人物の可能性だってあるじゃないか。
いやでも流石に希望的観測過ぎるな。
というか最近ってのはいったいいつからなんだ今年からなのかそれとも7年も前から既に始まっていたのか。
情報が無さすぎる、今ある情報だけではとてもじゃないが犯人なんて見つけることができない。
更に情報を集める必要がある、資料室にはもう新しい情報はないだろう、どうしたものか。
どうしようか頭を捻っていると突然ガシャンと何かが割れるような音がした。
いったい何事かと様子を見ると。
「あ…」
「あ!」
こんな白昼から人がいる部屋で覆面を着け鞄を漁る相当間抜けな泥棒を見つけた。
こちらを見るや否や素早く鞄を抱えて窓から飛び出した。
「待て!」
窓の外を見ると泥棒は宿の屋根に上っており隣の建物の屋根に飛び移ろうしていた。
こちらも急いで屋根に上ると泥棒は既に隣の建物に飛び移っておりちらちらとこちらを見ながら鞄の中身を捨てていく。
「なんしとんじゃー!」
憤慨しながら泥棒を追いかける。
泥棒を追いかけるが足が速くこちらが隣の建物に飛び移っている間に2個も3個も建物を移りどんどん距離を取られていく。
しょうがない、街中だが魔法を使うしかない。
「ウォーターボール」
水球が泥棒の後を追いかけていく。
ぐんぐんと距離を詰めていきもう少しで着弾と言うところで予兆もなく水球がボシュッと蒸発した。
「え、なんだ今の」
一瞬だが呆けて前を見ていなかった、ガッと屋根のでっぱりに足を引っ掻けた。
「あ」
そのまま体が建物と建物の間に頭から落ちた。
ガツンと衝突しその場にうずくまってしまう。
立ち上がろうとするが体から力が抜け焦点が合わない。
「…ふうぅぅ……かひゅっ」
頭がズキンとし手をやるとヌルっといやな感触がした。
手を見ると血がべったりと着いており出血していることがわかった。
「…はっ……はっ……」
意識を保っていられない、膝を着き地面に手をつき体を支えているがそれももう限界に近かった。
「……っ………」
視界がブラックアウトしその場で意識を失った。
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意識を取り戻し目を覚ました。
いったい何があったのか直前の記憶がない。
しかもなんだか頭が痛い、頭に手を当てるとヌチャッと気持ち悪い音がした。
何事かと手のひらを見ると手にはべったりと血が着いていた。
「……あ」
そういえば屋根から落ちていたのだった。
長く意識を失っていて直前の記憶を一瞬だが忘れてしまっていた。
ふと空を見上げると既に太陽は沈んでおり月がこんばんわしていた。
「…月が綺麗だなぁ」
呆然としてしまっていた、荷物は取られ恐らくだが全財産が入ってる財布も取られた、今僕に残っているのはボロボロの体だけだ。
唯一助かったのは命だけ。
後頭部に手を当てる。
「ヒーリング」
手からポワッと緑の淡い光が発生しみるみる頭の傷を治していく。
さて傷の治療もすんだし宿に戻ろう。
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部屋には窓ガラスの破片が飛び散っており窓の空いた穴から風がビュウビュウと入り込んでいた。
よし、もう今は現実は見ないようにしよう。
一旦寝たら全てが元に戻っているかもしれないし寝よう。
布団に入り目を閉じる。
「寝れるか!」
毛布を蹴飛ばし勢いよく起き上がる。
目がギンギンだし頭の痛さもギンギンだ。
治癒魔法をかけたとはいえ痛みはそのままだし、そのせいで眠れないし最悪だ。
「すぅぅ………はぁぁぁぁ」
心を落ち着かせ今できることを考えてみた。
よし、眠れないので街を散歩しよう。
昼は人が多くて移動しにくかったしこんな時間から自由に見て回れるだろう。
そうと決まれば早速、外に出てみた。
外に出るともう全ての店は閉まっており、まだ営業しているのは酒場とか飲み屋ばかりだ。
風がビュウビュウと吹いている。
他にも見て回るがあるのはやっぱり飲み屋だけだ、あとは冒険者ギルドが一応開いていたが受付の人は寝てたので閉まってるのと一緒だ。
その後も見て回るが何も面白そうなものは見つからなかった。
「はぁ」
肩を落としながら歩いていると、なにやら遠くの方にまだ明かりがついている建物を見つけた。
そこに向かうとあったのは1階建ての小さな図書館のようなものだった。
建物のドアを開け入るとそこは外と違い全くの無音に近く、暖かい、不思議と懐かしくさせてくれるような場所だった。
管理者を探してみるが誰もおらず既に潰れた図書館なのだろうか。
ここには本棚が10個ほどあり、それぞれの本棚に本がぎっしりと詰められている。
読書スペースのような場所もある。
「…」
タイトルも表紙も見ずに一つ手に取ってみる。
そして読書スペースに行き静かに座り手に取った本を読んでみる。
内容はどうやらこの世界の始まりについて書かれていた。
どうやらこの世界は元々魔力などなく種族も人間の1つだけで今のようにエルフなどはいなかったらしい。
だがある村で突然手から炎を繰り出す男が現れたらしい。
その男は元々その村の出身でただの魔力を持たない人間だったのだが突如として魔法を使えるようになった。
原因はいっこうに分からず村からは気味悪がられ村八分的なことをされていた。
そんなことをしていた村の人たちだが村からは少しずつ同じような人間が現れ始めた。
あるものは水を、あるものは風を操り、土を操り人によってやれることが違っていた。
そしてちょうどその辺りから村には異形の子がよく生まれるようになった。
耳が尖っていたり、獣の耳がついていて尻尾がついているものであったりなど様々な異形の子が生まれていた。
最初は呪いや忌み子扱いされ異形の子を産んだ家庭は差別や迫害の対象にされていた。
しかしあることがきっかけで立場が変わってしまうらしいのだが、続きが書かれているページが載っていない。
ここでページが破られている。
「……はぁ」
これからというところで肩透かしをくらってしまった。
しかも表紙には①と書かれておりこれの続きがあることが分かった。
「まぁ今度魔法大学の図書館にでも探しに行こうかな」
読み終えたので本棚に戻した。
さて本を読んでいると痛みも紛れ眠気もいい感じに溜まったので帰って眠ることにしよう。
そうして宿に帰りベッドに入った。
目を閉じるとスッと意識が落ちていきゆっくりと眠ることができた。




