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「ありがちゅうが口癖な俺は、ドブネズミに転生されたのでありがちゅうだけで生きてやる」  作者: 1010
プロローグ

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8/9

「ありがとうはな、タダでできる最強の魔法やで」



そう言ったのは、じいちゃんだった。


俺がまだ小学生の頃、商店街のはずれにある小さな駄菓子屋で、よく店番を手伝わされていた。面倒くさくて、正直サボりたくて仕方なかった。


ある日、雨の中をびしょ濡れで来た子どもが、たった一個のガムを買っていった。


「ありがとね」


その子は、たったそれだけ言って帰っていった。


たった十円の客だ。正直、何の得にもならない。けど、じいちゃんはなぜかすごく嬉しそうに笑った。


「今の見たか?」


「別に……普通やん」


「ちゃうちゃう。あの子はな、自分ができる最大の“返し”をしていったんや」


じいちゃんはそう言って、俺の頭を軽く叩いた。


「人はな、何かをもらったら返したくなる生き物や。でも金も力もないとき、何を返す?」


俺は黙っていた。


「“ありがとう”や。これだけは、どんな奴でもできる。しかもな、それを言われた側は、ちょっとだけ強くなれる」


「強く?」


「せや。“また頑張ろう”って思えるんや。それってな、巡り巡って自分にも返ってくる。だからな——」


じいちゃんはニヤッと笑った。


「ケチるな。ありがとうは、ばら撒け」


その日から、俺はやたらと「ありがとう」を言うようになった。


最初は照れくさくて、ちょっとふざけて、


「ありがちゅう」


なんて崩して言ったのが始まりだった。


でも、不思議なことに。


それを言うたびに、相手がちょっと笑ったり、空気が柔らかくなったりするのが分かった。


だから俺は、やめなかった。


どんなときでも、どんな相手でも。


「ありがちゅう」って言うのを。


それが、俺なりの生き方になった。


――たとえ、ドブネズミになったとしても。


この口癖だけは、捨てない。

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