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23話 ユグルの幽霊

 玄関の前に椅子を置いてボケッと日光浴しながら通りを眺めていると、近所の住人達が集まって何やらヒソヒソと井戸端会議をしていた。


 たまにこちらをチラッと見て、またヒソヒソ話を始める。

 そういえばまだご近所さんへ挨拶をしていなかった。嫌がらせされないように仲良くしておく必要があるな。

 ご近所トラブルは恐ろしいものだ。早く対処しないとポストに生卵を入れられたりするかもしれない。


 「何の噂話だ?面白そうだな。俺も混ぜてくれ」


 おばさん達は顔を見合わせて怪訝そうにこっちを見てきた。

 しまった。既に遅かったか。

 これは完全に村八分モードだ。


 「…………あんた、そこの家に住んでるのかい?」

 「そうだ。昨日引っ越してきた。グラルドだ」

 「あらそう。いやねえ……引っ越してきたばかりの人にこういうのもあれなんだけど……実は最近出るのよ……」

 「出る?腹がか?中年になったら気をつけないとな」

 「違うわよ。幽霊よ幽霊。幽霊が出るのよ」

 「幽霊……おばさんはもしかして霊感があるとかそういうタイプの人なのか?」

 「あなた信じてないみたいだけど、本当なのよ。みんな聞いてるんですって。夜中にひもじい……ひもじい……って言いながら通りを徘徊する幽霊の声が聞こえるのよ」

 「それで何かされるのか?」

 「何かされるってわけじゃないんだけどね。昔ここら辺でね、孤独死した女性がいたらしくて、その人の祟りじゃないかって。一人暮らしなのに、何故か子供の玩具や椅子があってね、変な儀式でもしてたんじゃないかって噂なのよ。……それ、あなたの家なの」


 家?ん、パルマの幽霊?


 パルマの幽霊が出るのなら、まず俺のところではないだろうか。

 パルマは無関係なご近所様に迷惑をかけるほどひねくれた性格ではない。

 まったく馬鹿馬鹿しい話だ。


 というより、いきなり人の家を事故物件呼ばわりとはどういうつもりなのだ。本当の事だからって、言って良いことと悪いことがある。 

 スピリチュアルな精神をお持ちの方なのか、新手の地上げ屋なのか知らないが、霊感おばさんはどうやら幽霊の気持ちは分かっても俺の気持ちはわからないようだな。

 それとも、こういう根も葉もない噂を立てて俺を追い出すつもりなのか。


 「ふん。霊なんていない。全てはプラズマが原因だ。俺が幽霊の正体を暴いてやろう」

 「プラズマってなんね?おばさん若い子の言うことはよくわからないわ」

 「まあ任せろ」


 そっちがその気ならこちらにも考えがある。目には目をってやつだ。


 魔法のある世界だ。幽霊とは言え馬鹿にできない。アンデッドみたいなやつらがいるかもしれない。ということは、そういう物の怪に対抗するための方法を知っているやつも当然いるはずだ。


 商店街に向かった。

 干したきのこや木の根っこに囲まれて、今日も占いおばさんは暇そうに通りを眺めていた。


 「おい、おばさん。お札と塩をくれ」

 「お札?お札ってなによ。あたしゃそんなもの売ってないよ」

 「お札だ。幽霊とか退治するあれだ。なにかあるだろ」

 「幽霊?……ああ、はいはい。幽霊ね。幽霊ならちょうどピッタリなものがあるわ。ほらこれよ」


 占いおばさんは壺を出して来た。


 「これはね、魔を封じる壺なの。この壺があればどんな魔でも封じることができるうえに持っているだけで幸福が訪れるのよ。毎日この壺の中に向かってあんたの夢を叫ぶだけでどんな願いも叶うのよ!」


 やはり、魔を払う道具があるのだ。

 俺の予想は正しかった。


 「そんな凄いアイテムがあるのか。いくらだ?」

 「これ本当は千万バルするんだけどね、王様からそんなにいただくわけにはいかないから特別に百万バルでいいわ。本当は売りたくないんだけどねえ」

 「大特価じゃないか。そんなに安くていいのか。後で返せと言われても返さないぞ」

 「いいのよ。あたしゃ人情で商売してるからね。これからもご贔屓にしてくださいな」

 「よし、買おう。しかし、10バルしか金がないからローンでいいか?」

 「10バル?バカなのかいあんた?頭金にもなりやしないよ。あんた王様なんだから後払いでいいわよ。この書類にサインしてちょうだい」

 「そうか。助かる。それじゃあこいつはもらってく。あと塩をくれ」

 「塩はサービスでいいわ。台所行ってくるからちょっと待ってて」


 占いおばさんは店の奥へ引っ込んでそれから塩を一袋壺に入れた。

 これで準備は整った。


 民を惑わす妖は退治しなければならない。

 それが王の務めだ。

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