過去のエネルギーにサヨナラした心の旅
9月の長雨のある日、久しぶりに酵素風呂に行った。
身体の底に眠っていた疲労が一気に解き放たれた。
帰宅してから、とにかくだるい。
眠気に何度も襲われ、爆睡した。
翌日になっても余韻が残り、
全身が「お休みモード」になっていることを実感した。
酵素風呂、君はさすがだ。
いつでも期待以上の答えをくれる。
頭の中では、
「明日は大雨だから、
今日のうちにヨガへ行って体を動かしておこう」
という現実的な思考での計画が浮かんでいた。
けれど、どうにもこうにも体が動かない。
だるいー
身体はいつでも正直
頭よりも確かで1歩先を進んでいる。
思考の現実的な損得勘定よりも、
身体の発する「休みたい」というサインの方が
圧倒的に強かった。
結局、ヨガに行くのはやめた。
身体からわいてくる感覚が大切!
夕方、外に出てみると、雨が静かに降り始めていた。
ヨガに行くことはやめたものの、
外の空気を吸いたい。
フレッシュエアーを身体が求めている。
雨音を聴きながら歩きたい
という欲求も湧いてきた。
雨の中の散歩は、昔から好きだ。
雨音でノイズが消えるー
規則的な雨音と少しの風が
見えない膜になっているかのように
世界のノイズがトーンダウンする。
灰色の薄いベールが全てを
淡く柔らかい色合いにしてくれる。
そんな雨の日の静けさが何よりも好きだ。
傘をさし、気の向くままに足を踏み出した。
思いつくまま、
足が向くまま歩くうちに、
なんとなくお寺の境内へ入った。
何度も訪れたことのある、見慣れた場所だ。
けれどその時、ふと横に滑らせた視線の先に、
今まで気づかなかった小さな引き戸と、
その奥へ続く細い道があることに気が付いた。
「行ってみようか」
理由もないまま、
ちょっとした登山気分で
その道を登りはじめた。
進んでみると、そこは木々が生い茂り、
雨に濡れた葉と土の匂いが立ち込める細い坂道だった。
両脇にはお墓が静かに並んでいる。
お寺が管理している墓地なのだろう。
夕暮れ時の雨のお墓。
普通なら少し怖くなったりするのかもしれない。
けれど、不思議なことに、全く恐さを感じなかった。
「まあいいか」
静けさを味わいたい自分を優先させた。
よく見ると、手入れの行き届いた墓石のそばには、
彼岸花が鮮やかに咲いている。
誰かが大切にここに訪れて、
整えている気配が感じられて、
胸の奥がじんわりと温かくなった。
静寂の中、雨音だけが耳に届く。
思いつくままに階段を登り下り、
木々と雨の香り、そして雨音を楽しんでいるうちに、
一周回って、お寺の反対側の出口に辿り着いた。
その時はただ、
「たくさん歩いて気持ちよかった」
そんなスッキリ感だけで
満足して家に向かった。
その夜、布団に入って眠りかけた時、
なにかハッとするような、
不思議な感覚になった。
寝入りばなの曖昧な意識の境界線で、
昼間歩いたあの雨の墓地の光景が、
何度も何度も、
ふわっと浮かんでは消えていったのだ。
半分眠りに落ちながら思った。
ああ、これは私が頭で考えていた以上に、
何か深い意味のあることだったのかもしれない。
効率や計画といった「現実の思考」よりも、
身体の「なんとなく」という声を大切にしたこと。
雨音に囲まれた境内の奥で、
静かな過去の記憶のような場所を歩き、
一周回って異なる出口へ出たこと。
出来事ひとつひとつが
象徴的な深い意味があるように感じられた。
雨
散歩
お寺
静けさ
お墓
登山道のような坂道
彼岸花
一周回る
雨の中の散歩は思考のノイズを消し、
五感を取り戻すためのプロセス
何度も行ったことのある場所で、
ふと「新しい扉」や「道」に気づくのは、
「これまで見ていた世界の一歩奥にある、
自分自身の未知の領域に踏み出す準備が整った」
という合図
そして、「雨の夕方のお墓」を怖いとは思わず、
「まぁいいか」
「きれいに手入れしてくれる人がいるんだな」
そんなふうに感じたことは
「過去の終わり」
「一区切りの象徴」
「もう使わなくなった古いエネルギーや固定観念を手放した」
「過去に対する恐れや拒絶がなくなった」
「静けさ」や「自然の香り」として
過去を穏やかに受け入れられる状態になっている、
ということ
迷うことなく元の場所の「反対側」に辿り着いたのは、
「古いプロセスを通過して、
以前とは違う新しい位置へ無事に辿り着いた」
そんな意味なのだと感じた。
あの散歩は、私の身体知能が導いてくれて、
いらなくなった感覚・過去を洗い流し、
新しいサイクルへと私を運んでくれた、
「儀式」のようなものだったのかもしれない。
理由のない「なんとなく」を大切にするとき、
身体はいつも、現実思考の結果の場所ではなく、
もっと奥にある、
先にある、
深い場所へ導いてくれる。
次の日の朝、そんな感覚を全身で感じた。
金色に輝く陽射しが
カーテンの隙間から
真っすぐ差し込んでくる朝だった。
ーおわりー




