この感情を忘れないように
手帳を開いて、思わずため息をつく。
全然課題が終わらない。先週の課題すら終わっていない。
しかも、先週の課題は先週のページに書いてあるから、わざわざ戻って確認するのが少し面倒だ。普段は今週のページしか見ないから。
ページをめくりかけて、ふと手が止まる。
そういえば、前のページに貼った写真や文章も、全然見ていない。
なんとなく、裏表紙を開いた。
そこには、成人式のスピーチの原稿を貼ってある。
たった一人に見てほしくて、わかってほしくて、そのためだけに書いた文章。
もう連絡も取らなくなった彼に向けた、私なりの決意。
失敗を繰り返さないために、これからは義務感よりも感情を優先して生きていこう、なんて。
成人式のスピーチらしくない、どこか軽くて、ちゃらんぽらんな夢。
客観的に見れば、馬鹿みたいな話だと自分でもわかっている。
それでも、あのときの私は、それを伝えたかった。
久しぶりに原稿を読む。
我ながら、少しだけ胸を打たれる。
生きる理由なんて、大げさなものでなくていい。
今日見た葉がきれいだったから。
友人がクッキーをくれたから。
小テストが満点だったから。
そんな些細なことで、人は生かされている。
――ああ、そうだったな、と、思い出す。
ページを閉じると、さっきより少しだけ、呼吸がしやすくなっていた。
それでも、いつしか合理的に生きるようになるのでしょうか。それが少し怖いです。




