あしきり事件 2話
大学の構内で資料を片手に地図を地面に広げて
なにやら重りの付いた紐をブラブラとさせている女性がいた。
「ミコト教授!今日ははかどってますか!」
「まあまあね。次の非存在の発生場所を幾つか目星を付けられそうだわ」
ダウジングと呼ばれる占いの方法がある。
かつては水脈から金脈まで地下に埋まっている価値のあるものを
探り当てるために使われた手法だ。
二本の金属棒を使うパターンと今回のミコトのように重り付きの紐を使うパターンがある。
「今日はここが霧が濃そうね……いや、でもこっちにも?ううーん」
答えが2つあるときにどちらに決めるかを決定する方法をミコトは持っていた。
「コイントス、ね。そこのキミ!協力してくれないかしら」
たまたま通りかかった学生に声をかける。
「私がコインを投げるわ。裏か表か。当ててみて」
「はい。いいですけど」
「当たったら食券をあげる。ラーメンよ」
「ぜひ協力させてください!」
それじゃあ……と初めて指でコインを上に弾き飛ばす。
パチン。左手の裏側で受け止め右手でコインを隠した。
「表?裏?どっちかしら?」
「表だと思います!」
手を開けてみる。
「正解、ね。表だわ。ありがとう。方針が決まったわ」
◇
辻占いと言う占いがある。
辻で出合い頭に合った他人に悩みを打ち明けて方針を決めてもらう
と言う占いだ。
ミコトのコイントスは辻占いと不確定性原理の合わせ技だった。
この技術によって、ミコトが向かった先での非存在に出会う確率が高くなる。
と、ミコト自身は思っている。
8割は超えているので普通ではありえない確率だろう。
ミコトは非存在を観測し続けていた。
それが無意味な存在に分解されてしまうことを願っていた。
今日の事件でその願いを再確認することとなったのだ。
◇
「霧……ね!最近活発的じゃない!」
ミコトはスプレーを構えてマスクをした顔で霧を中からにらみつける。
どこが発生源かも計り知れないその非存在に体一つで対抗しようとしていた。
「今日はとっておきの道具を用意したわ」
何の変哲もない風船と変哲のあるわら人形を取り出した。
「霧の中心部がわからないのなら……作り出してしまえばいいのよ!」
シュコシュコと風船を空気入れで膨らませる。霧入りの空気で。
「さあ!年貢の納め時だ!」
風船とわら人形のセットに釘を打ち込む。すると……
パァン!と遠くで何かが鳴った音がした。
ミコトは音のした方角に向かう。
霧が晴れていく。
「こ、これは……!?」
音の発信源にたどり着くと、そこにはとんでもないものがあった。
人骨。だ。
頭蓋骨、脊椎、骨盤、特に頭蓋骨は穴だらけになっていた。
「くっあの霧……まさか人食いだとは、ね」
あしきりと呼ばれた霧の化け物を撃退したミコトだったが心はちっとも晴れなかった。
あしきり……落ち込んでいる人の負の精神エネルギーを吸い上げて養分にするバケモノ
足切りと悪し霧が重なって言霊で強化されたとても強い非存在だった。
「今回は幸運だったわね。五体満足で帰れそうだわ。次はもっと準備をしないと」
あなたが出会う霧もあしきりかもしれない。
お気を付けください。




