再会と新たな風
くるるるっと喉を鳴らしながら、ユウの膝ほどの高さの灰色の鳥が勇ましく空から降りてきて、膝にくちばしを擦り付ける。
「わふっ!? ぐるるるるるっ」
シロがまん丸な目を鋭く細め、ぐいっと鳥とユウのあいだに割って入った。
「きゃっ? くっ! くっ」
鳥はシロを見ると嬉しそうに翼をぱたぱたさせ、今度はシロにもくちばしを擦り付ける。
「わ、ふっ!?」
シロは自慢のもふもふの毛をくしゃくしゃにかき乱され、戸惑いながらユウに助けを求めた。
「あー……もしかして」
ユウが木の上を見上げると、立派な羽をはばたかせながら、一羽の大きな鳥が降りてきた。
「メ、メイワクカケテ、ス、スマナイ」
大きな鳥が口を開き、申し訳なさそうに眉尻を下げる。
「あのとき実を持ってきた鳥だよな? ってことは、この子は――」
ユウは、シロにじゃれつく、シロよりひと回り大きい鳥を見る。
「ムスメダ」
「前に見たときは、手のひらサイズだったと思うけど」
「ニンゲンノメシノオカゲ、ゲンキ」
「あれだけで!? 大きくなったなら良かったけど」
あんな少しの量で、こんなに成長するとは思えない。きっとリップサービスで言ってくれているのだろう。
「またご飯を食べに来たのか?」
「イ、イヤ、ムスメヲミセニ……」
ビビり鳥のお腹が、きゅるるるっと鳴る。見た目に反して、とても可愛らしい音だった。
「せっかくだから、食べていくといいよ」
「イ、イヤ、デモ……」
ビビり鳥がちらちらとグラードのほうを見る。
「なんだ? 我のことを気にしているのか? 食べるときは序列など関係ない。好きにしたらいい」
しばらく戸惑った顔を浮かべていたビビり鳥だったが、相変わらずシロにちょっかいを出しにいっているムスメを見て、諦めたように息を吐いた。
「ジャ、ア、タベル」
「そうか、よかった。なら、たくさん作らないとな」
ユウは新たに小麦粉を取り出し、また生地の成形作業に取りかかる。
食べる相手が増えると、料理をする腕にも自然と力がこもる。
ユウは勢いそのままに、味噌だれで作ったピザをかまどへ入れた。
こちらは焼き始めた途端、匂いが一段濃くなる。甘じょっぱい味噌の香りが熱で立ち、チーズのこくと角豚の脂が絡む。
グラードが今度は少しだけ早く、かまどの前へ寄った。
『さっきとまた違うな』
「味の雰囲気が一気に変わると思います」
『ほう』
ほどよく生地の端がぷくぷくとふくらみ、ところどころ黒く焦げてきた頃合いで取り出す。
味噌だれが表面でつやつやと光り、ところどころ香ばしく焦げた匂いがしている。切り分けた瞬間、こちらもまたチーズがとろりと伸びた。
グラードに出し、ユウもひと口食べる。
すぐに笑ってしまった。
「うん、うまくできた」
味噌の甘辛さが、生地と肉のうまさを真正面から引っ張り上げてくる。トマトのほうより、がっつりした味で、喉に染み渡る。
グラードも噛んだあと、がっとひと飲みでピザを平らげた。
『……さっきのより、こっちの味付けのほうが好きかもしれん』
「じゃあ、グラードさんは和風派なのかもしれませんね」
話しつつ、ビビり鳥の親子、そしてシロとミツにも皿を配る。
ビビり鳥のムスメは、がっと皿にかぶりつくと、ピザだけを綺麗にひと飲みで食べた。
おいしかったのか、くちばしにたれをつけたまま、ぱたぱたと羽を動かしている。ミツとシロは自分も負けまいと食べるのに必死だ。
「アイカワラズアンシンスル」
ビビり鳥が、ムスメとシロたちを微笑ましそうに見つめながら、そっと呟く。
「安心?」
「ショウキガオチル。コンナタベモノ、イママデナイ」
「確かに、それはそうかもしれんな。ユウ、貴様の料理には他にない効果がある」
ユウは、最初この世界に来たとき、スキル欄に《料理》と表示されていたのを思い出す。
「ただ単に、料理する人が珍しいってだけじゃ……」
「いや、今まで帝国から来た奴に振る舞ってもらったこともあるが、そんな効果はなかった」
グラードの言葉に賛同するように、ビビり鳥がこくこくと首を動かした。




