魔女
空港で竜樹達と別れてから蒼井翼は人気のない路地に来ていた。
「……あぁ……こっちは大丈夫だ。順調だ。そっちはどうだ? ……そうか。くれぐれも無理はするなよ。また連絡する」
蒼井は電話を切りケータイをポケットにしまった。
「リフ、そっちの状況は?」
「まだ少ないが着実に集まってきてる」
「そうか。わかった」
そう言い蒼井は胸ポケットからたばこを取り出し一本口にくわえライターで火を点ける。
「フゥーーーー……」
一息つく。
「さて、そろそろ捜索に戻るかな」
そう言ってまた歩きだした。
……今なんて言った? 『ボルテックスじゃん!』って言った。定食屋に入ったら俺の前にいる店員の女の子がそう言った。
なんで分かった?
「てんちょー! 休憩もらいまーす」
女の子が店内に響き渡るような透き通る声で元気に言った。
「あいよー」
奥で店長らしき人の声がした。
「じゃあ休憩とれたしちょっと外で話そうか」
俺は言われるがままに外に出て近くのファミレスに入った。席に座り、とりあえずドリンクバーを二つ頼んだ。俺じゃなくてその女の子が。女の子が手際よく注文してる間も俺はポカーンとしたまま動けなかった。
「自己紹介がまだだったね、私は魔女のフラス。ボルテックスのお友達だよ!」
「……はあ……」
フラスと名乗った女の子は身長が百六十五センチくらいで、桜色の髪の毛をポニーテールにまとめ、ぱっちりとした目、大きくふくよかな胸、すべすべの肌、はっきり言ってかなり美人だ。少し見とれてしまった。
「あなたの名前は?」
フラスに優しく話しかけられた。
「く……黒井……竜樹です」
「そう。よろしく」
そう言ってフラスは手を差し出してきた。俺も手を出し握手する。
「よろしく」
その手はやわらかく、指は細くて温かい体温を感じた。
やっと頭が追い付いたのでとりあえず質問してみた。
「あの……フラスさんは」
「さんつけなくていいよ」
「あ、うん。フラスは本当に魔女なの?」
「そうだよ」
そう言ってフラスは手で隠しながら髪を少しあげ耳を見せてきた。
「あ……」
その耳は俗に言うエルフ耳だった。初めて見た。当然か。
「ていうか、人間と一緒にいなくていいの?」
「ボルテックスからはなんて聞いてる?」
「たしか……重症おって実界に逃げてきて波長が合う人間の体に宿らせてもらって休んでるって。で、俺達と一緒なら強い力が出せるって」
「まあ、おおむね正解」
おおむねってことは少し違うのか?
「ていうか少し説明が足りないかな。別に私達はずっと人間の体にいなくちゃいけないわけじゃないの、こうやって外に出て活動することも出来るんだよ」
「そうなのかボルテックス?」
俺は右腕にいるボルテックスに聞いてみた。
「そうだ。ただこの実界で俺やカイエンみたいなのが出てきたら旅どころじゃないだろ?」
確かに。
「それにお互いのことがよく分かれば力もより強く出せる」
なるほど。そういう理由だったのか。
「そろそろ休憩が終わるから戻るね」
そう言ってフラスは立ち上がった。すると何かを思い出したように、
「あっ、そうだ連絡先教えてよ」
と言った。俺は自分のケータイを取り出しアドレスと番号を教えた。
「今日バイト早めに上がるからここで待っててね」
「あ、うん」
そう言うとフラスは定食屋に戻っていった。
………とりあえず姉ちゃんと蒼井さんに連絡しとこうと思い二人にメールを送っといた。
「和風ハンバーグセット一つ」
みんなが来るまで暇だしお腹も減っていたのでとりあえず頼んどいた。
約十分後に運ばれてきた。
「いただきます」
……ふつうにおいしかった。
食べていたら姉ちゃんが店内に入ってきて小走りで俺のところにきた。
「見つかったって本当?」
「本当」
「でどこにいるの?」
「今そこの定食屋でバイトしてる」
「バイト? なんで?」
そういえばなんでバイトしてるんだろう……。戻ってきたら聞いてみよう。
「蒼井さんは?」
「まだ来てない」
「そう」
そう言って姉ちゃんは店員を呼びドリンクバーとサーロインステーキセットを頼んだ。
「遅くなってすまないね」
蒼井さんが表情をやわらかくしながら来て、姉ちゃんの隣に座った。
「ドリンクバーとカルボナーラ一つ」
蒼井さんが店員を呼んでから頼んだ。
「で、魔女は?」
「そこの定食屋で今バイトしてる」
「バイト? なんで?」
姉ちゃんと同じ反応だ。まあ普通はそういう反応するよね。
蒼井さんが来てから一時間後にフラスが戻ってきた。
「どもども~。お待たせー」
フラスは俺の隣に座った。ほんのりと汗の匂いがした。決して汗臭いのではなく、なんかいい匂いだ。
「そっちの二人は初めましてだよね、魔女のフラスです。よろしく!」
「え……君が……?」
「そうだよ」
そう言って俺にやったのと同じように耳を見せている。
「おぉ……」
「はぁ……」
二人とも驚いているようだ。そしてフラスは俺にしたのと同じような説明をした。
「……なるほど。キミのパートナーは今どこに?」
蒼井さんが聞いた。
「今は家に居るはずだよ」
「なんでバイトしてるの? 魔女なのに」
姉ちゃんが聞いた。
「まあ、こっちでの面倒にてもらってるわけだし私と妹の分は少しくらいは払おうかなって」
「妹?」
また姉ちゃんが聞いた。俺も若干気になった。
「そう妹。私達姉妹は同じ人間に波長があってパートナーになってもらったの」
そういう事ってあるんだ。
「とりあえず詳しい話は今の私の家で。そこで妹とパートナーを紹介するよ」
フラスがそう言ったので蒼井さんにお会計を済ませてもらってからファミレスを出た。
そしてバスに乗り二十分ほど走りバスから降りた。そこから五分程歩いたところで着いた。
「ここが今私がお世話になってる家だよ!」
普通に二階建ての一軒家。すると家の中から俺と同い年くらいの女の子が出てきた。
「こんにちは。私は橘海香。十六歳。よろしく」
そう名乗った女の子は身長が百六十センチくらい、腰あたりまで伸びた黒い髪、少しつりあがった目、そして貧乳。程よく肉のついたすべすべの足。はっきり言ってドストライクだった。可愛い。
「んでこの子がフラスちゃんの妹のソラスちゃん」
いつの間にか海香さんの隣には背の小さい女の子がいた。
「ソラスだ。よろしく頼む」
そう言った偉そうな子供は身長が百四十センチないくらいで茶色い髪の毛をツインテールにした幼女だった。
「とりあえず上がって」
そう言われ海香さんの家に上がった。
「今日は休んで、くわしいことは明日ちゃんと話すから。寝るときは蒼井さんと竜樹君はこの部屋使って。火月さんは私と同じ部屋で大丈夫?」
「うん」
姉ちゃんは返事した。まだ昼間だけど言われた部屋で疲れたので眠った。
起きたら外は暗くなっていて晩ご飯ができていた。海香さんの手作りらしい。とてもおいしかった。
ご飯食べてる時に聞いたんだが海香さんの家庭は父子家庭でお父さんが一年前から海外に出張しているらしい。だからフラスたちが来るまではこの家に一人きりだったらしい。
俺は部屋に戻りテレビを見た。一時間程テレビを見て風呂に入ることにした。
俺は脱衣所で着ていた服を脱いでから、一応自分の家の風呂ではないのでタオルで大事なところを隠してから浴場のドアを手前にひいて開ける。
「あ……」
「お……」
「え……」
「大胆だね~」
すると女の子四人が入っていた。姉ちゃんがからかうように言っている。
そこでは姉ちゃんがソラスの頭をゴシゴシと洗っていて、フラスが湯船につかっていて、海香さんが今まさに浴槽の中に入ろうとしてたとこだった。
因みに俺の視力は両目とも2.0なので、空気が凍った瞬間にばっちりと瞼に焼き付けることが出来ました。本当にありがとうございます。
「あ……ありがとうございます!」
本音が出てしまった。
すると海香さんがゆっくりと浴槽から出てきて桶を掴んだ。そしてメジャーリーガーもびっくりのスピードでそれを投げつけてきた。外れましたが。
「す、すすすすいませんでした!!」
俺は一瞬にして恐怖を感じてしまい、ダッシュで浴場から出て脱ぎ捨ててあった服を掴んで部屋に戻った。
部屋では蒼井さんが漫画を読んでいた。
「……?」
蒼井さんは何も言わずまた漫画を読み始めた。
………せめてなんか言って欲しかった。風呂は明日の朝入ろう。俺は服を着て布団に入った。でもあの風呂での映像が頭からはなれなかった。
………本当にあんなことあるんだ。明日顔を会わせずらいな…。
そんな事を考えながら俺は目を閉じた。




