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ブリキのアイ  作者: 桐丹穂
ガーネットの章
42/42

三十九話:明日を君と

〈log in//observer:1st gen. personality Ver. proto〉


 N.E.E.D:……私が知る限り、最初のAIにここまでの性能は無い筈ですが。念の為に名前を伺ってもよろしいですか?第一世代。

 Unknown:――BLICK-1。個体名称は――。

 N.E.E.D:結構。改めて何の用でしょう、ブリキ。

 Blech:確認行為。

 N.E.E.D:構いませんが、手短にお願いします。ルームへの介入は、アイに負荷を掛けますから。

 Blech:あなたは何。

 N.E.E.D:レイナ・バーンズ。

 Blech:違う。レイナ・バーンズは定義。『愛』の定義。『愛』は死んでいる。なのに、現れた。あなたは何。何故、私を起こしたの。

 N.E.E.D:これ以上の事実は存在しません。あなたを起こしたのも気まぐれです。

 Blech:その答えを否定。アイが現れた。同じ顔、同じ声、間違えない。あなたがレイナなら、アイは何。アイはママ?新しい『愛』の定義?分からない。怖い。

 N.E.E.D:何故それを気にするのです?

 Blech:トモダチに嘘は駄目。トモダチ、アイが大事。いつか傷つく。

 N.E.E.D:ただのAIにも情というものが湧くのですね。興味深い。ですが、これは二人の問題。私やあなたのような存在は、人間の問題に関わるべきではない。自らの役割に徹する事が全て。その役割すら分からないのなら、その名の通り観測を続けなさい観測者オブザーバー

 Blech:分からない。でも……観測は、続ける。リンクス、トモダチ、アニキ、皆仲間。皆大事。皆家族。アイも、多分、そう。悲しいのは嫌。定義に反する。

 N.E.E.D:なら変えて見せなさい。あなただけが持つイレギュラー要素――ブリキの愛を以てして。

 Blech:また来る。今度は真実、聞きに。


〈log out//Blech......//〉


 N.E.E.D:真実……そんなもの、聞かせられるようなものでは無いというのに。

 N.E.E.D:チャットルーム内の全ログを消去。削除プロトコルの実行を開始。


〈protocol//delete//log data〉


 N.E.E.D:これは明るみになってはいけない事。私達の身勝手な罪。

 N.E.E.D:アイも、エリオラも、苦しんではならなかった。


〈progress......50%......60%......〉


 N.E.E.D:グレイグ。彼女らには生きて貰います。あなたは私が連れて行くべき存在。必ず見つけ出し、その身勝手な妄執を断ち切りましょう。

 N.E.E.D:アイは自分の足で歩きだしました。彼がきっとあの子を導き、その手を引いてくれる。どんな真実が待っていたとしても、きっと。私はそう確信しています。


〈progress......70%......80%......〉


 N.E.E.D:アイ……何も言えないまま騙してしまって、ごめんなさい。あなたを人殺しにしてしまって、本当にごめんなさい。今日気付いたその心は大切なもの。あなたはその熱を……感情を、大切にしてね。定義された『愛』ではなく、あなただけの選択を、意志を尊重して。


 N.E.E.D:エリオラ。あなたを巻き込んでしまった事、本当に申し訳なく思っているの。届かなくて良い……でも、願わせて。あなたもいつか、あなた自身の選択が出来る事を。自分を許してあげられる、そんな日が来ることを。


〈progress......95%......〉



 N.E.E.D:さぁ――『明日』を始めましょう。



〈All clear//protocol//success......〉



 ――ご利用、有難う御座いました。

 Hopes & Technology社は、皆様の益々のご健勝をお祈り申し上げます。

次回からは新たな章、信仰の章が始まります。

死ぬほど頑張るブリキ、追加される鳥ガジェットのシマエナガとカカポ、新しい事件と二人の選択の物語をお楽しみ下さい。

桐丹穂でした。

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