二十八話:報告
第二地区医療センターの、白で統一された清潔感漂う室内。ベッドで横になるリンクスを囲む形でボーディ、トーマン、ダンパー、パフィにイザベラの五人が椅子に座っている。前髪でよく見えないが、リンクスは普段からは考えられない大人しさで、天井をぼんやりと見ているようだった。
「今回の件に関する前線部隊からの報告は以上だ。第四世代型アンドロイドの襲撃による負傷者は、技術班含め六十三名。内、死者は二十六名。中には第二地区出身の者も居た。追って名簿は作成する。家族が居た場合の連絡はそちら側に一任したい」
「……分かった」
イザベラはそれっきり何も言わない。謝罪の言葉は無く、ただ少し俯いているだけだった。
「次に観測班からの報告だ。ボーディ。お前の……お前達のした事を、全て教えてくれ」
「……全部?」
「あぁ。もし言いにくい事があったとしても、だ。すまないが、俺達はこれ以上の被害を出すわけにはいかない。情報は少しでも欲しいんだ。悪いようにはしないと約束する」
悪いようにはしない……ダンパーはそう言ってくれるけれど、それを他の地区が見逃してくれるとは思えない。もし彼女の中に居るあいつの力がバレてしまえば、もう機能するかどうかも怪しい第三地区自警団に置かれるより、第二地区で引き取られる可能性もある。そうなった場合、彼女はどうなる?下手をすればアンドロイドと信仰者たちの板挟みにあい、エリオラさんを探すのは難しくなる。それに……兵器のように見られでもしたら――。
隣のベッドでは、輸血パックを繋いだアイが、小さな寝息を立てている。夢を見ているのか、誰かを探しているのか、そんな状態でも時折指が何かを求めていた。
……深呼吸。
割り切れたわけじゃない。ただ、少なくとも今だけは……リンクスでも、トーマンでも、エリオラさんでもなく。自分が彼女の居場所を守る。
だって――《《共犯者》》なんだから。
「——Ru-liを介して、第四世代アンドロイドの行動原理になっていた最優先プロトコルを書き換えたんだ。あいつらが『自害』するように」
誰も言葉を発しない。あの時目の前で起きた現象が、例え何となくだったとしても実感させているのかもしれない。
「アイは……右眼に自律式AIが入ってる。そいつは自分の事を、第六世代人格だと言ってコミュニケーションを取って来たんだ。彼女の身体を乗っ取ったみたいに、『繋がった状態』だって言って。長時間繋がったり無理をさせると、脳に負荷が掛かって、今回みたいに出血するみたいだ」
「……普通じゃねぇとは思ってたけどよ。何か、現実味がねぇな」
「僕だってそうだよ。そいつは第四世代のニューロンネットワーク……って言ってた何かに繋いで、あっという間にあの場を制圧した。でも、それだけじゃないんだ。ダンパー、イザベラ……今すぐ各コロニーに確認して貰って。第六世代は――」
もう一度、深く息を吸う。
「――単独で、衛星掃射砲を発射出来る」
その時、扉が勢いよく開かれて、ゲイルが慌ただしく飛び込んできた。
「リーダー!二十八番コロニーから全コロニーに緊急連絡!ここから南東に四十キロメートルの地点で巨大なクレーターが見つかりました!推定ですが、第四世代の生産プラントかと思われます!」
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