プロローグ: 星に願いを
初投稿になります。
拙劣な作品ではありますが、少しでも読んで下さる方の暇つぶしになればと思います。
暗闇を走る強い光を、彼女は流れ星と呼んだ。
ベッドとソファーがひとつずつの、妙に静かな部屋。十四歳の誕生日を迎えた少女の側には誰一人居ない。
まだ身体に残る誰かの体温。耳元で囁かれた言葉。今日のそれは全部、ほんのすこしだけこわかった。
汗ばんだ体が冷えていく。いつまでも慣れない。寒くなるのは、いつだって一人になってから。
身体の下に敷かれていた毛布を少しだけ引き寄せた。それはすっかり水分を吸ってしまって、ちょっと重かったけれど。
頭から被り、光の方へ歩く。おぼつかない足取りで。
そうすると、なんだか賑やかな音が聞こえてくる。大きな声。音楽に歌。衝撃でビリビリと窓が震える。パチパチと硬いものがガラスを叩いた。
外では、楽しいパレードをしているに違いない。
父親や、大好きな人が新しい物を開発したのかも。きっと、お披露目パレードだ。
壁際まで辿り着いた彼女は一度座り直し、手にしていた人形を抱きしめる。みんな、みんな幸せムードの中で自分は一人。
「……あいって、なんだと思う?」
抱きしめた人形に語り掛けるものの、人形は答えない。おとぎ話の様に話をしてくれたとしても、きっと答えを持っていない。
「アイって、私。でも……そうじゃない」
立ち上がり、窓の向こうへ目を向ける。今は彼女だけの夜だ。少し位夜更かししても、生活支援アンドロイドはやって来ない。けれど、彼女は心待ちにしていた。無機質なそれでは無い。いつも手を繋いでくれる人の温もり。
今日ぐらいは、少し我儘を言ってみてもいいかもしれない。一緒に寝てくれるだろうか。でもお祭りなのだから、お父さんと一緒に、羽目を外しているかも?お酒を飲んで帰って来られると、ちょっと困る。
自然と頬が緩む中で、盲目である彼女の視界に、再び強い閃光が走った。
とてもじゃないが三度もお願いできる速さじゃない。折角の誕生日なのだから、流れ星だってこちらに融通をきかせてほしいと思う。
「いつか、おそとに行きたいな。エリオラ――早くかえってこないかな」
未だ歩んだことのない窓の向こうに思いを馳せながら、彼女は密かな願い事を星に託す。窓に映ったその瞳には光が無い。
病的なまでに青白さを帯びた細い身体は、窓向こうの景色を通して夕焼けの色へと変わっている。
外の声がひと際大きくなった。花火のような、火薬の破裂音に、想像だけが膨らんでいく。世界を隔絶する防弾ガラスは、彼女を嘲る。それはお前には届かない、と。
蹲り、毛布の中で小さくなった彼女は、自分の腹部に手を当てながら眠りについた。
目を覚ませば、あの人――エリオラは手を握っていてくれる。
流れ星がきっとお願いを叶えてくれると信じて、彼女は眠る。
――この日、衛星軌道上から放たれた二発の掃射砲が、最初の国を焼いた。
一章〈ガーネットの章〉までは毎日投稿を行います。
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