アーシュ①
三人は次の街へ向かう。
街に着き、街の名が書かれた看板を見たフランが、「あれ?この名前……」とつぶやいた。
メアリーはこの街に来たことがあるらしく、迷うことなく宿屋へ向かっている。
そして、街の中央にある宿屋で足を止めた。
指差し説明する。
「ここ、私が生まれ育った家。」
「え!?そうなのか!?」
と、トニーは驚いている。
「二人ともここでちょっと待ってて。
母さんに部屋とってもらうから!」
と、元気に宿屋へ入って行った。
トニーは驚かないフランが気になる様子。
「もしかして知ってた?」
「もちろんですよ!僕はメアリーちゃんのことなら何でも調べてますから!」
と自慢げに笑う。
十数分経った時、宿屋の中でバタバタという物音や揉めている声が聞こえてきた。
心配になったトニーが戸を開けようとすると、
中から髪飾りを付け、化粧をしたドレス姿のメアリーが飛び出して来た。
「助けて!」
と言って、トニーの胸に飛び込み、うるんだ瞳で見つめる。
「メ、メアリー……!?」
明らかに動揺するトニー。
それをフランは微動だにせず無表情で見ている。
その時、宿屋の戸が大きな音を立てて開けられた。
「ちょっと!!いい加減にして!!」
そこには、呼吸荒く怒っている、いつものメアリー。
メアリーと思われた女は、トニーの後ろへひらりと身を隠す。
メアリーは女の元へ駆け寄り、ドレスを引っ張り始める。
「これ、あたしのお気に入りドレスなんだから返して!!」
「やだ!!姉さん全然着ないじゃないの!!」
「着なくても母さんが作ってくれたやつだから嫌なの!!」
メアリーが引っ張ったので、女の肩が露わになる。
「やめて!!殿方の前で脱がさないで!!」
女がそう叫ぶので、メアリーはしぶしぶ手を離した。
「えっと……これは一体……??」
状況が飲み込めず、トニーは二人を交互に見ている。
女はメアリーの隣に並び、ドレスの裾を両手で持ち深々とお辞儀をした。
「双子の姉がお世話になっております。アーシュと申します。」
「双子〜!?」
トニーは開いた口が塞がらないといったところ。
フランは相変わらず表情を変えずに様子を見ている。
「あんたねぇ……」
メアリーが何か言いかけたがそれを遮り、
「さあさあ!中へ入ってください!」
と、アーシュがトニーの腕を引っ張り、宿屋の中へ連れて行く。
そして夜。宿屋の一階にある酒場でトニーとフランはくつろいでいた。メアリーは、アーシュと一緒に酒場の手伝いや宿屋のシーツを運んだりと忙しそうに走り回っている。
「それにしても双子とはな……」
トニーが酒の入ったグラスを傾けながら口を開く。チラとフランに目をやる。
「お前は知ってたみたいだけどな。」
「双子って言っても全然違いますからね。僕はトニーさんみたいに見間違えたりしないし。」
「いや、そっくりだろ……」
フランが面白そうに聞いてくる。
「アーシュのこと、どう思いますか?」
「どうって……」
「向こうはトニーさんのこと気になってるみたいですよ。」
アーシュに目をやると、チラチラ二人の方を気にしているようだ。
「いやぁ〜……さすがにアレには手は出せないだろ……。メアリーと被るし、あの子見てたら普通にメアリー思い出しそうだし……」
「そっか〜可哀想だな〜アーシュちゃん。」
そう言ってはいるが、面白がっているのが伝わってくる。
その時、
「今日はゆっくりしてってね〜!」
声の方を見ると、メアリーを少しふっくらとさせた感じの中年女性が笑っている。
メアリーの母である。
「うちの娘は手がかかるだろうけどよろしくね〜!」
豪快にバシバシと二人の背中を叩いて去っていく。
「メアリーもああなりそうだな……」




