マダム②
メアリー達は銃を奪われ、縄で縛られマダムの前にひざまずかされる。
マダムはメアリーに近づき、髪を引っ張りあげ顔を上げさせる。
「メアリー、あんたには闇で懸賞金が掛かってるんだよ。
最近派手に強盗を潰したそうじゃねえか。」
メアリーはマダムを睨み上げる。
「お前……ジェイミーか??」
「ハッハッハ……よくご存知で。」
マダムはメアリーを突き飛ばす。
トニーが思わず口にする。
「ジェイミー……?」
メアリーがゆっくり身体を起こしながら答える。
「伝説のギャングの女ボスさ。何年か前に引退したって聞いたけど。」
「あらあ、そんなことまで。」
と、嬉しそうに笑うジェイミー。
笑顔のまま続ける。
「表舞台から退いただけで、今もこうやって部下を使って仕事やってんだよ。」
「さあて、どうしようかね……
まあ逃げられたら厄介だから足は撃って使えなくしとくか……」
ジェイミーが銃をメアリーに向けた時、屋敷の奥から激しい音が聞こえた。
「なんだい一体!?」
男達のいる後ろの戸が開いた音と、殴る音が聞こえるが男達が邪魔で様子がわからない。
すると、男達の間からフランが現れる。
「よお、久しぶりじゃねえか、ジェイミー。」
フランは鬼の形相である。
一瞬、空気が凍りつく。
男達が一斉にフランへ銃口を向ける。
その瞬間、ジェイミーが慌てたように叫んだ。
「やめないか!お前たち!!銃を下ろせ!!」
男達は言われた通り銃を下ろし始めた。
ジェイミーが作り笑顔でしどろもどろになりながらフランに話しかける。
「フ、フラン……。しばらく見ないから死んだと思ってたよ……」
フランはメアリーの近くまで行き目を落とす。
途端に今にも泣き出しそうな悲しい表情になる。
「殴られた……のか……??」
そしてジェイミーの方へ無言で近寄っていく。
「な、なんだい?その女がいるならやるよ!
金なら………」
フランは最後まで言わせず、ジェイミーの胸ぐらを片手で掴み勢いよく床へ叩きつけた。
フランはジェイミーに馬乗りになり、口に銃を突っ込み低い声で呟き出した。
ジェイミーは泣きながら手足をバタつかせている。
「殺す殺す殺す殺す……
頭に真っ赤な花咲かせてやるよ……」
「フラン!!」
メアリーの声が響き、引き金を引こうとした指が止まる。
フランは動けない。呼吸が荒くなる。心臓が速くなる。手がわなわなと震えてくる。
人を殺す時は冷静で呼吸さえ乱れないが、それを我慢する時は全身が熱くなる。自分を抑えるのがとても辛いのだ。
「この縄を切って!!」
メアリーが叫ぶと男の一人が慌ててメアリーに近付いていく。
フランは落ち着くため、大きく息を吐き続けている。
その時そっとフランの銃に手が沿えられる。
ぱっと顔を上げ我に戻る。
「メアリー……」
メアリーはフランの手から銃を取り上げ、腕を引っ張り立ち上がらせた。
顔を見上げ、両頬に手をあてる。
「もう帰ろう。」
フランは力なく頷いた。
メアリーがフランと共に出ていき、トニーも後を追った。
三人が出て行った後、男達がジェイミーに駆け寄る。
「大丈夫ですかお頭!」
「立てますか!?」
ジェイミーは男達に支えてもらいながら椅子に腰を下ろした。
部下の一人が口を開く。
「あの三人なら俺達のこの人数ならやれましたよ!」
すかさずジェイミーが答える。
「しっ!聞かれたらどうするんだい!!
あれは、あの男は炎の死神だよ!勝てるわけないじゃないか!!」
「炎?あいつは火でも使うんですか??」
ジェイミーは話し出した。
フランは残忍な殺し屋で、依頼があった者だけでなく周りの者まで躊躇なく殺していたこと。
あまりにも多く殺し、返り血を浴びて金の髪が真っ赤に染まり燃えているように見えていたこと。
「それで炎の死神って呼ばれるようになったのさ……
一度その現場を見たが相当酷いものだったよ……」
まだ震えと冷や汗が止まらないまま続ける。
「あんなの相手してたら命がいくらあっても足りやしない……」




